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2026年8月7日金曜日

『旅する10分 放課後クロニクル』(高橋書店)が発売になりました。

『旅する10分 放課後クロニクル』(高橋書店)が発売になりました。


日本児童文芸家協会の編纂、山本省三先生や、宮下恵茉先生のご尽力のたまものです。

コンセプトは、「長編小説を最後まで読み切れない」「読み物から離れてしまう」といった子どもたちに、短時間で完結しながらも豊かな物語体験ができる“10分で読めるファンタジー”と“歴史”です。



【目次】
巻頭マンガ

第1話 ヒミコ・レボリューション ~謎の転校生~
ささきあり

第2話 見習い宮女、サナが走る! ~夢はるか飛鳥へ~
結城紀子

第3話 陰陽師なんかじゃありません! ~平安京からの使者~
宮下恵茉

第4話 十三段目の幽霊 ~鎌倉ミステリークラブ~
山本省三

第5話 独眼竜の背中に乗って ~戦国ファンタジー~
光丘真理

第6話 つれてけ堀 ~大江戸怪談話~
緑川聖司

第7話 結婚なんていやです! ~大正弓引娘と御曹司~
森川成美

主要な時代のエッセンスを網羅する7話です。
私は大正時代の女学生のお話を書いております。ツンデレ? かも。

どうぞよろしくお願いします。

2026年6月2日火曜日

『いいたいことがありすぎます!』工藤純子(金の星社)

書名:いいたいことがありすぎます!
著者名:工藤純子
出版社:金の星社


好きな場所:「りんりん、いいたいことをがまんしてたら、貝になるぞ!」
所在ページ:p44
ひとこと:工藤純子さんの『しんぱいなことがありすぎます!』は、忘れ物が心配でなんでもかんでも学校に持っていく心配性のももちゃんと、忘れ物なんか平気で荷物の少ない楽天的なかずまくんの二人のお話でした。
 今回は、言いたいことをなんでもいうひろきくんと、なんにも言えないりんちゃんの二人のお話です。
 いやあ、とってもかわいい。
 そして最後、おかあさんがいい。
 りんちゃんの成長ももちろんですが、大人もね、いいたいことを言えない世の中っていいの? みたいな作者の気持ちも、きっとどこかに入っているのかも。
 ほんとみんな貝になっちゃうよ!
 

2026年4月12日日曜日

拙著『やさしく読めるビジュアル伝記 徳川家康』(Gakken)見本来ました

拙著『やさしく読めるビジュアル伝記 徳川家康』(Gakken)見本来ました。


山田一喜さんの素敵な絵で、家康の気持ちをしっかり表していただいています。本文を本当に読み込んで書いてくださったことがわかります。ありがとうございました。

編集部のほうで、富士と鷹、おめでたい表紙になった、という話になったというので、そっかと思い当たったのですが、一富士、二鷹、三なすびという初夢に縁起のよい、この三つは、どれも家康の好物だったんですね!
どっかに茄子のことも書いておけばよかった(笑)。

でも、その他にこの方が好きだったのは、鉄砲を撃つことだったらしく、それはこの時代、あたかも今のドローンのような最新兵器だったのですが、大将が手にするものではないとされていたのに、大好きでよくやっていたそうで。それは書きました。

おめでたく、たくさんの方に届きますように。

戦のない世をつくった武将、という副題がついています。

なお、この時代の武将たちは、自国のことしか考えていなかったという人もおられますが、ある意味そうだとしても、また別の意味で、こんなに身内や部下が亡くなる世の中は、いつか終わらせたいと考えていたのだと私は思います。安全保障という言葉はありませんでしたでしょうが、きっとなにかそういう制度は必要だと思っていたに違いないと思います。この方の生涯をていねいに追うと、やっぱりそういうふうに考えたんだなと思わざるを得ませんでした。

2026年3月30日月曜日

『るるぶ 毎日5分でまなびの種まき 日本のれきしおはなし30』松尾恒一監修(JTB パブリッシング)

書名:るるぶ 毎日5分でまなびの種まき 日本のれきしおはなし30
著者名:松尾恒一監修
出版社:JTB パブリッシング


好きな場所:あるよ、にんじゃの おろちまるは てきの おしろに しのびこみました。
所在ページ:P145
ひとこと:前にご紹介した『都道府県のおはなし47』と同じるるぶの「毎日5分でまなびの種まき」シリーズです。
 今回は日本のれきしのお話。
 歴史の解説ではなく、その時代を舞台としたおはなしが30篇、そしてそれぞれの時代の解説がやさしくなされています。
 よみきかせなら3さいから、一人読みは低学年からの読みやすいお話ばかりです。

 引用は季巳明代さんの「おろちまる でかしたぞ」。武士や忍者が活躍した戦国から安土桃山ごろのお話です。
 おろちまるは忍者。敵の城に忍び込みます。お城の秘密が敵に流れているといううわさがあるので、その情報を探らなければなりません。さあ、おろちまるはどうやってしのびこみ、何を持ってくるのでしょうか?
 幼稚園保育園向けの月刊絵本で、忍者のお話の連載もしておられた季巳さん。
 さすがのわかりやすさで、難しい時代物をふんいきたっぷりに、そしておもしろく描いておられます。
 春休み、夏休みの観光で、史跡をめぐったりするご家族もおられるでしょう。そのお供にぴったりと思います。

2026年3月27日金曜日

『アクション! ふしぎな係活動!! ACTION2 もやもやざわつく係もある』サークル・拓編(岩崎書店)

書名:アクション! ふしぎな係活動!! ACTION2 もやもやざわつく係もある
著者名:サークル・拓編
出版社:岩崎書店


好きな場所:その子のちがう顔を見つけたら、苦手だっていう気持ちがへるかもなあ
所在ページ:p123
ひとこと:「サークル拓」による三巻シリーズの「アクション! 係活動!!」第2巻「もやもやざわつく係もある」です。
 引用は、野原にじうおさんの「カメラ係 美優のえくぼ」です。
 ほたるのおばあちゃんは、家の一階でほたる写真館をやっています。二学期の係決めのとき、美優にカメラ係に推薦されてしまいます。
 ほたるは美優が苦手。ダンスをやっていて、女子グループのリーダーで、クールできつい性格。カメラ係にされたうえに、運動会の振り付けを撮影するよう、言いつけられます。
 びしびし指図されますが、それがきつい。
 めげているほたるに、おばあちゃんが引用のようなことを言うのです。
 詩人でもある野原さんが、ほたるが美優をカメラを持って追いかけるシーンが圧巻です。
 そしてほたるは美優に、なぜカメラ係に推薦したか、その理由を探してみて、と言われるのです。

 この巻でもいろいろユニークな係活動が。
「体育係」「窓係」「苦情聞きます係」「レク係」「予言係」「カメラ係」「ボードゲーム係」。
 これを読んだ子たちは、うちのクラスにもこんな係ほしいなって思うことでしょう。

2026年3月20日金曜日

『うみになる』野原にじうお(四季の森社)

書名:うみになる
著者名:野原にじうお
出版社:四季の森社


好きな場所: どろにしずんでいこうとすると/おまえはうまれたじゃないか/うまれたおまえがこえをあげないでだれがおれたちのこえをかたるのだ/こえがした
所在ページ: P142
ひとこと:日本児童文芸家協会の新人登竜門だった(今はありませんが)「つばさ賞」の第18回で、詩・童謡部門で優秀賞・文部科学大臣賞を受賞された野原にじうおさんの初詩集です。
 野原さんは散文もこなされ、先日出たばかりのサークル・拓編集「アクション! 係活動!!」シリーズ(岩崎書店)にも掲載されていらっしゃいます。
 生きづらさを肩代わりすることはできないけれど、自分の他にもこんな子が、こんな人間がいるということを知ってほしい、という思いで、出された詩集だということで、引用は「あとがきのかわりに」という副題のついた「しにたいとばかりおもうこは つがるでくびをきられたねこにあう」という詩です。
 うんうん、わかるわかるという方がたくさんおられるのではないでしょうか。
 ぜひそういうところに届いてほしいなと思います。
 ますますのご健筆を!

2026年3月18日水曜日

『アクション! ふしぎな係活動!! ACTION3 ときにはときめく係もある』サークル拓編(岩崎書店)

書名:アクション! ふしぎな係活動!! ACTION3 ときにはときめく係もある
著者名:サークル拓
出版社:岩崎書店


好きな場所:「ともやさんからの折り紙が届いたよ」
「わー。ともや、やってくれたんだね」
所在ページ:p14
ひとこと:東京八王子で活動する児童文学同人「サークル拓」。『あける』という同人誌を出しておられます。その拓が、総がかりで、三巻シリーズの「アクション! 係活動!!」という本を岩崎書店さんから出されました。だれかだけが特に選ばれてというのでなく、全員が、というのがふだんからとっても仲の良い拓らしくて、すてきで、しかも作品が粒ぞろいうというのが、ほんとすごいことです。
 これはその第三巻「ときにはときめく係もある」。引用は、櫻井ひろこさんの「ふしぎなけいじ板 かざり係」です。
 三年生になったゆあ。担任の先生は、クラスが楽しくなる係を考えて、クラス全員になにかの係になってもらおう、と言います。ゆあは友だちといっしょに掲示板を好きなように飾る「かざり係」になりましたが、あと一人は、登校してこないともやでした……。
 実際に学童クラブの職員として、日々子どもさんがたに接している櫻井さんならではの生き生きとした子どもたちが描かれていてすてきです。

 他にもいろいろユニークな係活動が。
 この巻では「かざり係」のほか「パワーストーン係」「メタセコイヤ係」「千星くんのお世話係」「図書係」「保健係」「カメ吉係」がとりあげられています。
 メタセコイア係? さあ、いったいどんな活動をする係なんでしょうか、興味をそそられます。
 他の二巻にもたくさんの係が。
 これを読んだ子たちは、うちのクラスにもこんな係ほしいなって思うことでしょう。
 

2026年3月16日月曜日

『しょうがっこうの、いやなところ』山本悦子(あかね書房)

書名:しょうがっこうの、いやなところ
著者名:山本悦子
出版社:あかね書房


好きな場所:「うちのいもうと、うららちゃんって いうの。ものすごく かわいいよ」
「うち、ねこ、かってる」
 みさきちゃんの こたえは、なんか、ちょっと ちがう。
所在ページ:p9
ひとこと:山本悦子さんの『しょうがっこうが、きらいです』に続くしょうがっこうシリーズ第二弾。学校っていいところだよ、みたいな本はいっぱいあるけれど、きらいなところ、いやなところを並べる本はないかも。
 でも、最後は、やっぱり学校に行きたくなっちゃう。そんな本です。

 一年生のかりんはおねえちゃんになったばかり。妹をかわいがっていてミニママと呼ばれているけれど、学校にいる間、妹がおかあさんをひとりじめしているのが、気になって早く帰りたい。
 で、小学校のいやなところを頭の中でならべたてています。
 引用は、その1 おはなしする子がいない。
 かりんは、おはなししなくちゃって思って、みさきちゃんに話しかけてみますが、みさきちゃんはぜんぜん別の話を持ってきます。他の子もそう。これじゃおはなしできない。あーあ、いやだなってかりんは思うのです。
 これ、笑っちゃいます。
 いや、ほんと小さい子って、そのとき自分の頭にあることしか言わない。相手が大人なら、そうなのって合わせますが、学校では子どもどうしだから、どうしているのかなっていつも思っていました。
 さすが山本さん。まあ、子どものことを、よく知っておられます。なのに小さい子って、それでなぜか会話が成り立っていることも知っておられます。そこがかわいい。
 でも、本人は十分ちゃんとしてるつもりなんですよね。自分もそうだったし、意外に人がしゃべったこともよく覚えていて、友人の家のこと、きょうだいは何人で、家族にはだれがいて、なんてこと、今こんな年になってさえ、覚えています。
 そんなこともしっかりわかる。

 渦中の子どもさんがただけでなく、自分の子が小学校でないがしろにされていないか心配になっていらっしゃる保護者の方も、読んでみてほっこりされる本だと思います。
 
 
 

2026年2月11日水曜日

『万丸食堂、奇跡のソフトクリーム』山本悦子(理論社)

書名:万丸食堂、奇跡のソフトクリーム
著者名:山本悦子
出版社:理論社


好きな場所:(中三かあ。大きくなったなあ)
としみじみ思う。
(あのときは、小さな犬っころみたいだったのに)
所在ページ:p90
ひとこと:万丸ビルの六階食堂の名物は、グリングリンに十段もかさねられたソフトクリームだ。みんな、おはしで食べる。
 このソフトクリームは奇跡のソフトクリームと言われている。
 なぜか。十段かさねるのが難しいからか?
 どうもそうじゃなくて。不思議なことが起きるらしい。

 山本悦子さんの連作短編です。『日本児童文学』に連載されていましたが、それを加筆されたということです。

 私は連載中から、引用のお話「預かった娘」が好きでした。今読んでもやっぱりいいな。小さな犬っころみたいだった亜子が、大きくなって中三に。父が一人でソフトクリームを食べていると向かいの席に座ったのは……。
 心がぎゅっとなるお話。それに一歩引いてみると、こういうことってあるよねって思います。いえ、ファンタジーの話ではなくて心の話ですが。まわりの者が、頭の中で、こういう子だと思えばその子はそうなっていく。そう思わなかったら、意外とそうならない。そんなことも考えました。

 万丸食堂は、実在する食堂だそうで(ソフトクリームもおはしも本当)一時閉めていたのが、地元の要望で再開されたのも本当らしいです。これを読んだら、一度行って、ソフトクリームをおはしでたべてみたいですよね。

 

2026年1月6日火曜日

『あずきのあらし』しめのゆき(岩崎書店)

書名:あずきのあらし
著者名:しめのゆき
出版社:岩崎書店




好きな場所:こうかんはともだちのしるしなんだよ
所在ページ:p32
ひとこと:岩崎書店の「ひとりでよめるこわこわおばけ話」シリーズ。このシリーズは、一人で本が読めるようになった子のための怪談なので、短いお話が2編と読みやすく、そしてこわいけれどそんなにこわくないようにできています。
 これはその6巻目『あずきのあらし』で、作者は「ティアラちゃん」や「マジカル☆ピアノレッスン ピアノようせいレミー」シリーズでバレエやピアノのような芸術に挑戦する子を描いて人気のしめのゆきさん。
 第一話は表題作で、伝統的な妖怪「あずきあらい」が出てきます。なかよしのタクくんが引っ越すことになり、カイトは、お別れパーティで近所の小川で遊んだのですが、タクくんと引用のように「ともだちのしるし」として交換した大事なミニカーをなくしてしまいます。あったと思って、持って帰ったのですが、その夜……。
 第二話は現代的なお話で、「ペットバッジ」という育成ゲームで遊んでいたナナは、バッジをつけたまま公園に行きますが……。
 しめのさんは、ひとりでよめる怪談シリーズの「こわいがいっぱいおばけのはなし」でも『くびびじんコンテスト』も出されておられて、このシリーズの御常連。芸術だけではなく、お化けのお話のほうもお好きとか。
 たくさんの方に読まれますように!
 

2025年12月23日火曜日

『河童の子守唄』田沢五月(国土社)

書名:河童の子守唄
著者名:田沢五月
出版社:国土社




 好きな場所:それに遠野は昔から、すごく自由だ。オシラサマは娘と馬のカップルだもん。娘と河童のカップルだっておかしくない
 所在ページ:p159
ひとこと:『海よ光れ! 3・11被災者を励ました学校新聞』(国土社)が第70回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書だった田沢五月さんの新刊です。
 遠野の古ぼけた木造の旅館「河童屋」の玄関ロビーの真中に置かれているやせこけた河童の木彫り。背丈は90センチほどで、ひょろっとしています。これは実は木彫りではありますけれど、れっきとした妖怪、河童のカッチャンなのです。
 カッチャンは木彫りから出たり入ったりしますが、出ても普通は人間には見えません。
 でも妖怪同士のコミュニティがあり、そこでは、みんな妖怪は住んでいる家の屋号で呼ばれています。なのでカッチャンは河童屋と呼ばれています。
 妖怪だらけの遠野の町に、奇妙な事件が起きます。どうも「古道具屋」の天狗がかかわっているらしく……そしてそこへ、学者一家がやってきますが……。
 さあ、どうなるんでしょう。そしてカッチャンはやる気のない河童屋の息子一馬を見限って新しい運命に従うべきなんでしょうか……。

 生き生きとした妖怪たちの会話が、すばらしいです。私が遠野に行ったのは、四十年以上前でしたでしょうか。それから今は変わっているのかもしれませんが、きっと妖怪は、この本にあるように人にうっかり見られないように用心しつつも、変わらずいるんだと思います。

2025年12月4日木曜日

『ぼくらの教室RPG』白矢三恵(くもん出版)

書名:ぼくらの教室RPG
著者名:白矢三恵
出版社:くもん出版


好きな場所:オレはトーマに教えてやりたい。空気ぐらい読めないと、高学年になっても、きっと、トーマはずっと「ぼっち」だよって。
所在ページ:p27
ひとこと:先月文研出版から『みんなの居場所』を出されたばかりの白矢さん、またまたご出版です。
 四年生の秋人は、ふだんから「低学年じゃないんだから、だれにも合わせようとしなかったら、空気が読めないやつだって、みんなから思われるよ」という考えの持ち主でした。だから、運動神経ばつぐんで、顔もまあまあイケてるトーマが、いつもしらけた顔をしてクラスの子たちとかかわらないのを見て、引用のように思うのでしたが。
 あれ? 空気読んでるはずなのに、なんだか、妙な方向に。
 秋人はこれでいいんでしょうか?
 そんな問題を、RPGゲームにのせて、軽やかに提示されています。

2025年11月23日日曜日

『ハリハリモルモはさわれない!』赤羽じゅんこ(国土社)

書名:ハリハリモルモはさわれない!
著者名:赤羽じゅんこ
出版社:国土社


好きな場所:なんと! やられることがあるのか? ハリハリモルモは、まれに、ハリの先から毒をだすとは聞いておった。はれてかゆくなる毒だそうじゃ。
所在ページ:p43
ひとこと:赤羽さんの幻獣シリーズ『トゲトゲトカゲをつかまえろ!』『クスクスムシシを追いはらえ!』に続く三作目です。
 今回は、ハリネズミみたいな形の幻獣、ハリハリモルモが、クラスのみんなに次々ととりつきます。ハリハリモルモにとりつかれると、自分のからにとじこもり、だれとも協力しなくなり、元気もなくなるといいます。
 アキラは、合唱指揮者として、音楽会に向けて練習しようとよびかけますが、みんなにいばっていると言われてしまいます。原因をさぐると、それはみんなにとりついたハリハリモルモだったのですが……引用のように、なかなかてごわく。
 
 ゲームのモンスターはゲームの中だけですが、こんなふうに見えないけれど、みんなにとりついている何かがいるのかも。

2025年11月15日土曜日

『お元気部屋へようこそ』安田夏菜(小学館)

書名:お元気部屋へようこそ
著者名:安田夏菜
出版社:小学館



好きな場所:もっと強うならねば。もっとかしこくならねば。もっとしっかりせねばと、おこられてばかりでのう。わしゃ、そのなっとうの糸みたいなねばねばにからめとられて、息がつまって、とうとう家出をしてしもうた。
所在ページ:p83
ひとこと:せんべい屋のかんばんむすめお咲ちゃん。計算もできて、死んだおっかさんの代わりに家のこともやって、働き者で賢い子。そのようすに感心したお寺のおしょうさんに勧められて、寺子屋に通うことに。
 しかし、ちょっと変わった寺子屋で、お元気部屋というなぞの部屋があり……。
 引用のように、ねばねばをなっとうの糸、というのは落語台本も書かれる安田さんならではの表現で、こんな風にまるで落語のようにどんどんお話はけったいな方向に進んでいきます。いったいどうなるんだろうと思ったところで、なーるほど、という納得の展開。さすがでいらっしゃいます。
 さかいめ、あいまい、って大事ですよね。
 ついつい問題を突き詰めて、ではああしたらいい、こうしたらいいとSNSを含めてみんなで解決をあせってしまいそうな現代に、とっても必要なこと。
 ねばねば言わないように、大人もぜひこれを読んでがんばらなきゃ、あれ? がんばっちゃだめだった(笑)。

2025年11月14日金曜日

『おれたちはギロンする』安田夏菜(静山社)

書名:おれたちはギロンする
著者名:安田夏菜
出版社:静山社


好きな場所:議論をするのは、共に生きるためだってこと。相手を論破するためじゃないってこと
所在ページ: p93
ひとこと:あんまり特技もなく明るいザコキャラと自分のことを言っている陽太。親をまたいで叱られ、親子げんかになって家をとびだし、自転車で遠くまで。行きついたのは神社の境内でやっているフリーマーケットでした。そこで会ったのは、やたら議論をふっかけてくる女の子、芽衣。何のために議論をするんでしょうか?
 論題が安田さんらしくておもしろく
 1 寝ころんでいる親をまたぐのは、是か非か
 2 知らないおばあさんに、バス代を貸すのは是か非か
 3 子どもでも髪を染めてよいのか
 4 夢は持つべきか、持たざるべきか
 5 キャラを使い分けるのはアリか、ナシか
さあ、あなたはどう考える?

2025年11月9日日曜日

『ひとりでよめる こわこわ! おばけ話 かおがはずれるともだち』松井ラフ(岩崎書店)

書名:ひとりでよめる こわこわ! おばけ話 かおがはずれるともだち
著者名:松井ラフ
出版社:岩崎書店


好きな場所:だが、かおを見られたら、おどろかれてわるものにされる。
所在ページ:p30
ひとこと:岩崎書店さんの低学年向け怪談シリーズは、小学校に入って自分で本を読むようになった子どもたちが自力で読める、こわいけれどそんなにこわくない怪談を、国松俊英先生のご編集で、気鋭の作家さん方が選ばれ、書かれています。
新しい「ひとりでよめる こわこわ! おばけ話」シリーズの第一弾は『かおがはずれるともだち』。作者は松井ラフさん。松井さんはリアリズムもお書きになりますが、『青いあいつがやってきた』などのファンタジーもお上手。前のこのシリーズでも『カ目ラこぞう』という本を書かれたり、他にも怪談や不思議なお話をたくさん書かれています。
 このシリーズは一冊に二話掲載されていて、一話は昔から知られているおばけを現代にアレンジしたもの、もう一話は作者オリジナルだということです。

 引用は一話目表題作「かおがはずれるともだち」です。リクは、同じクラスのユウヤが道でころんだ拍子に、顔が外れたところを見てしまいます。外れた顔の下はのっぺらぼう。リクは、このことをみんなに話しますが、みんなはてんで信用しません。なんとかユウヤが顔を外したところをみんなに見てもらおうと、いろいろやっているうちに……。
 二話目は「おわすれですよ」。ミコは、学校によく忘れ物をしますが、ある日忘れたものが机の上にあり、横に赤いお札のような紙が……。

 どれもこわいけれどそんなにこわくなく、そして松井さんの筆で、なるほどとおもうような、あとあじの良いお話になっています。
 怪談は怖いな、というようなお子さんにも勧められる、すてきなお話二題です。

2025年10月29日水曜日

『みんなの居場所』白矢三恵(文研出版)

書名:みんなの居場所
著者名:白矢三恵
出版社:文研出版


好きな場所:するとオニばあは、「ああ!」と大きく手をたたいた。「あのときのお兄ちゃん?」と、父ちゃんの手を取って、両手でスリスリこすって言う。
所在ページ:p140
ひとこと:親が離婚して父ちゃんと二人暮らしの玲央、母が亡くなりフィリピン人の新しいおかあさんと父さんといっしょにフィリピンから引っ越してきた陸、親が離婚しておばあちゃんとお母さんと妹と暮らすまひる。
 この三人の視点から描かれるのは、ひだまり食堂という子ども食堂。店主のオニばあは、もともとここでおじいさんといっしょに食堂をやっていたが、今は店を子ども食堂にしている。
 オニばあは、顔も広い。オニばあのオニはおにぎりのオニ。オニばあにおにぎりをもらった人がたくさんいるという。
 そのわけは……。
 引用のように、「あのときのお兄ちゃん」がお父さんになる時代になりました。
 あのときから三十年。
 作者は関西の方。
 あのときおにぎりを配ったように、あのとき支えあったように、子ども食堂でみんながささえあえたらいいな、という作者の気持ちがこめられているように思いました。
 
 
 

『絶滅寸前の渡り鳥 シジュウカラガンを呼びもどせ!』野泉マヤ(新日本出版社)

書名:絶滅寸前の渡り鳥 シジュウカラガンを呼びもどせ!
著者名:野泉マヤ
出版社:新日本出版社


好きな場所:「よし。バートネクを探そう!」
三人は手分けして、会場内を探した。顔もわからず、手がかりもいっさいない。そこで「バートネクさんを知りませんか? 今、どこにいますか?」と、聞きまわった。
 そうしてついに彼を探し当てた。
所在ページ:p49
ひとこと:ガンという鳥、特にそのうちのシジュウカラガンという絶滅に瀕していた鳥の保護にまい進する人々の物語です。シジュウカラガンは、1930年代の毛皮ブームのために、北方の島々でキツネの繁殖が行われたために、キツネに狩られていなくなってしまったのです。
 最初は眼科医の横田さんという方が、宮城県の伊豆沼で三羽を見ます。絶滅をくいとめなければという横田さんの熱意を受けて呉地さんという方が、呉地さんが引用のように紹介状もなく顔も知らず、湿地保全のシンポジウムの会場で探し回った結果アメリカの役人、バートネクさんが、バートネクさんの示した協力の条件を満たすために、仙台市の八木山動物公園が、動物公園が飼育を教わるためにガン類の保護において「ファザー・グース」と呼ばれるフォレスト・リーさんが、シジュウカラガンが渡る先である当時のソビエト連邦での生態を確認するために、ロシア人の鳥類学者ニコライ・ゲラシモフさんが……と次々にこのプロジェクトに巻き込まれ、参加されていく様子は、感動的です。
 だれもが、国や組織を超えて、シジュウカラガンを増やさなければ、絶滅から救わなければという気持ちで、ややこしい書類仕事をこなし、役所と折衝をし、資金を集め、協力先を探し、ねぐらの環境を整え、と動かれたのです。
 そしてその結果、シジュウカラガンは増え、ロシアとの渡りを始めます。
 こんなこと知らなかったです。
 雁行という言葉は知っていましたが、ガンと鴨の違いもよくわからなかったし、本来渡るべき鳥が渡らないで定住してしまうことは、本来の姿ではないのでその場所のほかの生物に悪影響を与えるということも知らなかったです。
 数を増やすだけでなく、渡りも復活させた、この方々の取り組みと、それを丁寧に取材して書かれた野泉さんのご努力に脱帽です。
 たくさんの方に読まれますように!
 

2025年10月5日日曜日

『図書だよりとひみつのノート』赤羽じゅんこ(さ・え・ら書房)

書名:図書だよりとひみつのノート
著者名:赤羽じゅんこ
出版社:さ・え・ら書房



好きな場所:せーので、ふたりで指さした。ふたりとも三番目の書体のものをさした。
「これは、ごめんなさいって気持ちが伝わる。反省してるように見える」
「うん、一番目の文字は、丸っこくておもしろいけど、あやまってる感が少ない」
所在ページ:p78
ひとこと:赤羽じゅんこさんの新刊です。おなじさ・え・ら書房さんから出た前の『ひと箱本屋とひみつの友だち』は、本を通じて身体的な障がいのある子と友情がはぐくまれたお話でしたが、今回も「本」と「障がい」がテーマです。
 でも今回の障がいは、身体でも知能の問題でもなく、文字が判別しづらいという外からは見えにくい大変微妙なもので、家族もそれを障がいと認めるのがいいのかわるいのか、悩むようなものです。
 でも、引用のように文字のデザインという観点から、この物語はそれにアプローチしていて、子どもたちが無理なく多様性を理解する助けになることと思います。
 カバー下の絵もすてきです。
 どうかたくさんの方が読まれますように。
 私も老眼なので、UD文字は助かります。
 

2025年8月15日金曜日

『みちのく妖怪ツアー プレイミュージアム編』佐々木ひとみ・野泉マヤ・堀米薫(新日本出版社)

書名:みちのく妖怪ツアー プレイミュージアム編
著者名:佐々木ひとみ・野泉マヤ・堀米薫
出版社:新日本出版社


好きな場所:山形では、寒い冬の間にお餅を干して乾燥させ、凍み餅を作る。凍み餅を油で揚げてから、甘じょっぱいたれにひたして食べると、さくさくして最高においしいんだ。
所在ページ:p51
ひとこと:「みちのく妖怪ツアー」シリーズは、8年前に宮城県在住の作家さん佐々木ひとみさん、野泉マヤさん、堀米薫さんが企画して立ち上げられたものです。各県の妖怪と食べ物、名物、風俗、慣習などを織り込んだこわいお話で、1年に一冊ずつ刊行され、この「プレイミュージアム編」が8巻目という。シリーズものがなかなか出ない今、8巻も続くというのはすごいことで、読者さんから支持されている証拠ですね。

 毎回設定が違いますが、今回は各県の催事場などで開かれる「プレイミュージアム」という体験型の展示に行った子たちが、妖怪に会うという設定です。
 引用は、堀米薫さんの「サトリ」というお話です。
 六年生の真奈は、山形のおばあちゃんの家に遊びにいき、プレイミュージアムに連れていってもらいます。真奈は実は学校で浮いていて、理由は人の気持ちをさもわかっているみたいにしゃべるからです。プレイミュージアムで会った女の子、サトミと仲良くなって、ミュージアムをまわり、さそわれて特別会場に行ってみると……。
 サトリは人の心の中を読んでしゃべる妖怪ですよね。サトリ、サトミ、なんかありそう。

「みちのく妖怪ツアー」の魅力の一つは食べ物。引用の凍み餅は、お餅のフリーズドライというところですが、寒いところの名物です。油で揚げて甘じょっぱいたれにひたして食べる、いやー一度食べてみたいです。
 今度どこかで買って帰ろうかな。