著者名:野泉マヤ
出版社:新日本出版社
好きな場所:「よし。バートネクを探そう!」
三人は手分けして、会場内を探した。顔もわからず、手がかりもいっさいない。そこで「バートネクさんを知りませんか? 今、どこにいますか?」と、聞きまわった。
そうしてついに彼を探し当てた。
所在ページ:p49
ひとこと:ガンという鳥、特にそのうちのシジュウカラガンという絶滅に瀕していた鳥の保護にまい進する人々の物語です。シジュウカラガンは、1930年代の毛皮ブームのために、北方の島々でキツネの繁殖が行われたために、キツネに狩られていなくなってしまったのです。
最初は眼科医の横田さんという方が、宮城県の伊豆沼で三羽を見ます。絶滅をくいとめなければという横田さんの熱意を受けて呉地さんという方が、呉地さんが引用のように紹介状もなく顔も知らず、湿地保全のシンポジウムの会場で探し回った結果アメリカの役人、バートネクさんが、バートネクさんの示した協力の条件を満たすために、仙台市の八木山動物公園が、動物公園が飼育を教わるためにガン類の保護において「ファザー・グース」と呼ばれるフォレスト・リーさんが、シジュウカラガンが渡る先である当時のソビエト連邦での生態を確認するために、ロシア人の鳥類学者ニコライ・ゲラシモフさんが……と次々にこのプロジェクトに巻き込まれ、参加されていく様子は、感動的です。
だれもが、国や組織を超えて、シジュウカラガンを増やさなければ、絶滅から救わなければという気持ちで、ややこしい書類仕事をこなし、役所と折衝をし、資金を集め、協力先を探し、ねぐらの環境を整え、と動かれたのです。
そしてその結果、シジュウカラガンは増え、ロシアとの渡りを始めます。
こんなこと知らなかったです。
雁行という言葉は知っていましたが、ガンと鴨の違いもよくわからなかったし、本来渡るべき鳥が渡らないで定住してしまうことは、本来の姿ではないのでその場所のほかの生物に悪影響を与えるということも知らなかったです。
数を増やすだけでなく、渡りも復活させた、この方々の取り組みと、それを丁寧に取材して書かれた野泉さんのご努力に脱帽です。
たくさんの方に読まれますように!
