2025年12月23日火曜日

『河童の子守唄』田沢五月(国土社)

書名:河童の子守唄
著者名:田沢五月
出版社:国土社




 好きな場所:それに遠野は昔から、すごく自由だ。オシラサマは娘と馬のカップルだもん。娘と河童のカップルだっておかしくない
 所在ページ:p159
ひとこと:『海よ光れ! 3・11被災者を励ました学校新聞』(国土社)が第70回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書だった田沢五月さんの新刊です。
 遠野の古ぼけた木造の旅館「河童屋」の玄関ロビーの真中に置かれているやせこけた河童の木彫り。背丈は90センチほどで、ひょろっとしています。これは実は木彫りではありますけれど、れっきとした妖怪、河童のカッチャンなのです。
 カッチャンは木彫りから出たり入ったりしますが、出ても普通は人間には見えません。
 でも妖怪同士のコミュニティがあり、そこでは、みんな妖怪は住んでいる家の屋号で呼ばれています。なのでカッチャンは河童屋と呼ばれています。
 妖怪だらけの遠野の町に、奇妙な事件が起きます。どうも「古道具屋」の天狗がかかわっているらしく……そしてそこへ、学者一家がやってきますが……。
 さあ、どうなるんでしょう。そしてカッチャンはやる気のない河童屋の息子一馬を見限って新しい運命に従うべきなんでしょうか……。

 生き生きとした妖怪たちの会話が、すばらしいです。私が遠野に行ったのは、四十年以上前でしたでしょうか。それから今は変わっているのかもしれませんが、きっと妖怪は、この本にあるように人にうっかり見られないように用心しつつも、変わらずいるんだと思います。