2024年11月2日土曜日

『パステルショートストーリー グレイ いつも会う人』新井けいこ(国土社)

書名:パステルショートストーリー グレイ いつも会う人
著者名:新井けいこ
出版社:国土社


好きな場所:確かめたところで、得るものはない。この先もまだまだ長く、塾に通わなければならないのだ。
所在ページ:p24
ひとこと:休み時間で完結するパステルショートストーリーのシリーズは、作家が色をテーマに一冊ずつ担当して、短編をつづるという企画です。私もパープル『キミョウな人(?)たち』という巻を上梓させていただいています。
 新井けいこさんのこの巻は「グレイ」。
  人間なのか 妖怪なのか
  事故だったのか わざとだったのか
  本当の姿はーーーー
 という巻頭言のように、いったい偶然なのか、何かの力が働いたのかわからないような「グレイ」ゾーンのお話です。

 このパステルショートストーリーは、今後も継続される予定がおありということで、とっても楽しみです。次はどんな色かな?

2024年10月13日日曜日

『るびぃ17 No.1』

書名:るびぃ17 No.1



好きな場所:
  吾の中のずるさよ蜥蜴の丸い目よ (ふくね)
所在ページ:p15
ひとこと:児童文学関係だと、お名前をだれでも知っていらっしゃるような作家さん、編集者さんが集まってやっていらっしゃる句会の第一句集です。
 引用のふくねさんは、赤羽じゅんこさんです。
 他にもすてきな句がたくさんありますが、出していいのかどうなのかわかりませんのでひかえておきます。
 いやあ、すごい方々です。
 コロナの中、オンラインシステムで句会を続けてこられたそうです。
 みなさまお忙しい中、すごいですね。
 ますますのご盛会をお祈り申し上げます。

『おおなわ跳びません』赤羽じゅんこ(静山社)

書名:おおなわ跳びません
著者名:赤羽じゅんこ
出版社:静山社


好きな場所:一生懸命やることが大事だとか、勝ち負けよりも、どれだけがんばったかがたいせつだ、とか。
 だったら、勝ったクラスに表彰状とかトロフィーとかをわたさなきゃいいのに。
所在ページ:p12
ひとこと:クラス対抗おおなわ大会が行われるので、クラスでは熱心に練習している。ところが、双葉は日常動作は普通にできるものの、足にちょっとしたハンディがあって、なかなかうまく跳べない。跳べないでひっかかっても止まることはないルールになっているが、時間内にちゃんと飛んで抜けられた人数で競うので、さっと抜けられない人がいると、記録が伸びない。
 双葉は、今まではハンディがあってもチャレンジするような子だったが、このおおなわ大会に際しては、跳びません、見学しますといいだした。
 いい成績でなくてもいいから、いっしょに跳ぼうと言い出した子がいて、双葉は跳びますと意見をひるがえしたが、次の日から学校に来なくなった。
 さて、どうする。

 本当にこれは、考えてもなかなか解決方法の浮かばない問題です。
 私もむちゃくちゃ体育ができなかったので、こういうときほんと私を除いて大会をやってください、と本気で思いました。補欠になったときは、むしろうれしかったです。がんばろう練習しようよといわれたときは、おねがいやめてと思いました。
 でも、心底、出ないでいいと思っていたかというと、そこは子どもですから、本当にそうだったのかというと、本音は違ったかもしれません。でも少なくとも、人に気を遣ってもらいたくなかった。そっちが勝っていた。
 
 赤羽さんは、この問題をクラスのいろいろな子の視点から、書き上げています。双葉のみならず、いっしょに跳ぼうと言った子、本当は自分も跳びたくない子、家の用事のほうが大事だからおおなわ大会なんて休めと親に言われている子、双葉に休めと言った子……。
 子どもたちは自分たちで、解決方法を考えていくことになります。
 そして大会の日……。

 むずかしいテーマで途中投げ出したくなったこともあるとおっしゃる赤羽さん。さすがの筆力で、今に必要な本当の多様性、思いやりをえがきだしていらっしゃいます。
 

2024年10月6日日曜日

『たい焼き総選挙』新井けいこ(あかね書房)

書名:たい焼き総選挙
著者名:新井けいこ
出版社:あかね書房


好きな場所:ぎょうざたい焼きは、ぼくが食べたかったものだ。みんなはなにを食べたいんだろう。みんなに聞いて、人気のあるものを売ればいいんじゃないか。
所在ページ:p99
ひとこと:四年生の拓都は、塾に通っている。帰りに、いつもたい焼きを買って食べながら帰るのが楽しみだ。そのたい焼きやさん、松丸堂のアユミさんが、ぎっくりごしで店が休みになった。アユミさんは、同じクラスの菜央のおばあちゃんだ。
 なんとかならないのか、と考えた拓都たちは、人件費、原価、利益、なんていう言葉にいきあたる。
 そのなかで、「チーム松丸堂」を結成し、アユミさんの手助けになることはないかと考えた結果……。
 『空の手』(偕成社)など、ご著作をコンスタントに出されている新井けいこさんの新刊です。経済学、経営学、マーケティングなどという言葉を知らなくても、お店はどうやって成り立っているのか、よくわかる物語になっています。いろいろな味のたいやき、食べてみたいですね。

2024年10月1日火曜日

『いのちのつぼみ』志津谷元子(偕成社)

書名:いのちのつぼみ
著者名:志津谷元子
出版社:偕成社



好きな場所:二十歳のわたしは、答えをみつけたでしょうか。
もし答えがみつからなくても、一歳のわたしが生きたいと願ったこの世で、与えられた自分の時間を大切に生きていてほしいと思います。
所在ページ:p183
ひとこと:はるかは小学校を卒業したばかり。小さい時に会ったきりのいとこの芽久美さんが上京してきます。大学に入ったのです。初めての東京で心細いからと、近くのアパートに住むようになります。アパートを訪れたりしているうちに、だんだん芽久美さんの人柄がわかってきます。またなぜ東京の大学に入りたかったかも。
そこへ、ある知らせが……。

小川未明賞文学賞大賞受賞者で『吹き抜けの青い空』の作者志津谷元子さんの新刊です。
いのちってなんだろう、というのは親子や家族を対象に考えることが多いと思いますが、志津谷さんはそうではなくて、他人が命をつないでいくことについて、生かされているということについて、深く考えられてこの本を書かれたのではないのかと思いました。
生と死を考えはじめた中学生に、ぜひ読んでいただきたいと思います。

2024年9月2日月曜日

『復活! まぼろしの小瀬菜大根』野泉マヤ(文研出版)

書名:復活! まぼろしの小瀬菜大根
著者名:野泉マヤ
出版社:文研出版
好きな場所:伝統野菜のタネは、ふだんは販売されていないので、そのタネを持っている人を見つけて手にいれるしかありません。






所在ページ:P57
ひとこと:スーパーなどで買える野菜は品種が限られています。一定の品質のものを、一定の数量出荷できなければ、商売にならないからです。
でもその裏で、市場に出回らずに消えていく野菜もあるはずだなあと思っていたところに、この本です。

六年生の城崎鈴は、仙台に住んでいるのですが、宮城県北東部の小瀨という町にやってきました。ここは母の故郷で、おじさん夫婦が住んでいるのです。母は同級生と会いにでかけてしまい、おじ夫婦もでかけて、ひとりだけ古い家に残されます。ひまなのででかけたところで、白い花の花畑に入り込みます。その花畑こそ、まぼろしの小瀬菜大根の畑だったのです。

戦後に開発された大量生産に向いたF1種と、伝統野菜は違うということ。また伝統野菜は種をもっている人がいなくなったり、栽培方法を知っている人がいなくなったりすると絶えてしまうことなど、知りませんでした。

作者の野泉マヤさんは、小瀬菜大根の継承活動に尽力されている方。
種の保存、遺伝子の多様性、伝統の存続という意味でも、こういう活動は本当に大事だと思います。
小瀬菜大根が絶えずに、これからも栽培されますように!

2024年8月25日日曜日

L'Algérie - Serge Lama


反戦の詩などを見ると、いつもこのシャンソンを私は思い出します。
先日のオリンピックでセーヌ川を通るときアルジェリア代表が、花を投げたということからも、アルジェリアの独立と、出兵はアルジェリアにとってもフランスにとっても重大なできごとだということもわかっています。

しかしこの詩(歌詞)はそこには言及していません。

正確かどうかわかりませんが、私の読んだところによれば

フランスの若い男の子が、ある日船に乗せられてアルジェリアに行ったんだ。
初めて国外に出たんだ。
その船はまあ言ってみれば、牢屋のようなものだった。
そして望まない戦争ごっこをさせられた。
でもアルジェリアは美しい国だった。
イタリアのような洗濯物が路地にひるがえっていた。
恋人はうそばっかりの手紙を書いてきた(あなたのことを思っていると言いながら、実は浮気してるだろうというような)
ひまなときはみんなでタバコをまわした。
でも帰還が決まって船に乗り、アルジェリアが遠くなっていくとき、なぜか郷愁を覚えた。
アルジェリアは美しい国だった。

みたいな。(誤訳あったらすんません)

これでも十分反戦じゃん、という。
描くならそういう物語を書きたいなって思います。
(意味わからんが)
でもそうじゃなく直裁に書かなければ受け入れられないというのなら、どうしたらいいのかわからないですね。


2024年8月2日金曜日

『都道府県のおはなし47』粕谷昌良監修(JTBパブリッシング)

書名:都道府県のおはなし47
著者名:粕谷昌良監修
出版社:JTBパブリッシング


好きな場所:はははは。ふじさんのように”3776(みななろう)”だな。またあそびにきてくれよ。
所在ページ:p148
ひとこと:47都道府県の特徴のわかるオリジナルの短いお話が、「マップでまなぼう」というコラムといっしょに、並んでいます。旅のお供に最適、と思ったら、出版社はJTBさんでした!

引用は、季巳明代さんの「ふじさんのしずおかじまん(静岡県)」です。季巳さんは「ふじさんのやまなしじまん(山梨県)」も書かれていて、なるほど、富士山はどちらからも見える県のシンボルだなということが、よくわかります。
季巳明代さんは他にも「にほんではじめてのてつどうがみたい(神奈川県)」「負けるな! しゃもじくん(広島県)「ながさきけんいちのカステラ(長崎県)」も書かれています。

47都道府県、行ったことのある県だけ読んでも面白いし、社会科で出てくるたびに読み直してもおもしろい。具体的なイメージがあると、ただの「〇〇県」という文字とは違って、人間の生活が浮き上がってきます。ほんと一家に一冊、テレビの前、車の中や、トラベルカートに忍ばせて、お子さんと確認すると話が弾むことでしょう。