2026年10月22日木曜日

新刊『時の岸辺に』森川成美(偕成社)がネットギャリーに出ています

拙著『時の岸辺に』(偕成社)が11月25日発売です。

書影出ています。


で、これがネットギャリーに出していただけることになったようです。

こちら

ネットギャリーの会員の方、リクエストいただき、読んでいただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いします。

『ランゲルハンス島の虹』好美松(小峰書店)

書名:ランゲルハンス島の虹
著者名:好美松
出版社:小峰書店


好きな場所:「そうだけど。突然、注射しはじめたら、びっくりするよ。見た人はぎょっとする」
「ぎょっとする?」
「そう! 気もち悪いって、思うよ。わかる」
所在ページ:p154
 ひとこと:日本児童文学者協会の長編児童文学新人賞の第24回の受賞作です。第一席となり出版されました。
 小峰書店さんには、審査員の一人として感謝です。
 売れるものと、出したいもの、その間で出版社さんはいつも葛藤をかかえておられるわけですが、このような賞では、売れるかどうかわからないのに、出版するという約束を無理やりさせてしまうわけなので、それは審査員として責任を感じます。
 でも、世に出てほしいもの、子どもたちに読んでほしいもの、それは審査員を引き受けた以上、選ぶ社会的責任というものがあると、不肖私は思っているので(もちろん好みはそれぞれありますけれど)推しました。
 しかし、応募される方にこの場を借りて申し上げたいのは(たぶん検索で来られるでしょうからね)、必ずしも社会的な論点を含む必要はなく、良い作品、力のある作品であれば、必ず人はひかれる、ということです。こういう賞には、いろいろうわさがあって(私も公募時代そういうものにふりまわされて、かなりの時間をムダにしましたが)あの審査員はこういう好みだ、下読みはこういうのが好きだ、などどれも説得力があります。でも審査員をやってみて、そういうこっちゃない、とよくわかりました(あのムダにした私の時間を返して(笑))。

 さて、この本ですけれど、主人公はⅠ型糖尿病の中学生です。みかけは病気に見えませんが、日々、気を付けなければならないことがとっても多く、うっかりすると死んでしまいます。でもこの子は、思春期に入ったところで、心配したり管理したりする親がうざくてしょうがありません。
 そのうえ世間には偏見があり、血糖値を下げるお茶を勧められたり、絶対必要なインシュリンの注射を引用のように、疑わしい目で見られたりして、こそこそしなければならないのです。
 そんななか、どうやって日々の憂さを乗り越えていけばいいのか。
 頭で理解してほしいというのではなく、この子になって、ぜひ子どもさんがたに体験して欲しいと思いました。それだけ、読者がこの子になりきれるだけの筆力が、この作者にあったということでもあります。

 Ⅰ型糖尿病は、理解されにくい病気だなと、本当にこの本を読んで思いました。運動不足でもなく、甘いものの食べすぎでもなく、薬だけでなんとかなるものではなく(血糖値の管理とインスリンの注射が必須)、遺伝でもなく、そして一生続くのですね。
 昔、小学校のころクラスにすごく細い子がいて、みんなが「あの子は糖尿病なんだよ」と言っていました。別に体育もいっしょだったし、遠足にも来ていたし、困っているようなそぶりはなかったです。でも、今みたいに血液で測定できる電子機器もない時代(私は四十数年前、妊娠糖尿病になったけど、その時だって尿をとって試験紙にかけて測定してましたから)ほんと今になって、あの子はたいへんだったんだなあと思います。

 たくさんの方が読んでくださいますように!

 
 

2026年10月20日火曜日

季節風に『アントネストの羊』の書評を書いていただきました



 季節風168号に拙著『アントネストの羊』(文研出版)の書評を書いていただきました。筆者は後藤耕さんです。
 ちょっと複雑なこの話を、解き明かしていただき、ていねいに解説していただき、感謝です。

 中には、散見するレビューでは取り上げられていない論点もひろっていただいております。
 特に「映像主体の文化が大規模に広がっている私たちの世界にも共通している問題」としていただいているのは、文字がなくなる世界ということです。
 私が書きたかったことは、いくつかありますが、その一つがこれでした。
 思ったことを映像にして提示するということは、昔は訓練を積んだ映像作家にしかできないことだったのが、ハンディカムやスマートフォンの出現で、だんだん撮影も編集も敷居が下がり、今や素人でもできるようになりました。そのうえ、これからはおそらく撮影や被写体すら不要になって「こんな感じ」と言えば、そういう映像が出てくるようになる(今でもプロンプトさえよければできる)。さらには、今後は、言う(プロンプトを書く)必要すらなく、こんな感じと思えば出てくるようになることでしょう。そして、そういう世界では文字は必要なくなることでしょう。
 しかし、人の抽象的思考は、どうなるでしょうか?
 具体的なことについてしか、考えられない人類が出現する?
 抽象的思考は、文字の出現によって生まれたんではなかったんでしょうか?
 そういうことだったのですが……。
 読みこんでいただいて、大変ありがたいです。

2026年10月18日日曜日

『ぼくのだいすきなスピカ』赤羽じゅんこ(文研出版)

書名:ぼくのだいすきなスピカ
著者名:赤羽じゅんこ
出版社:文研出版


好きな場所:「スピカが だめだめ犬で つまらないよ」
 ぼくは おとうさんに、そっと うちあけた。
所在ページ:p20
ひとこと:二年生のぼくは、犬が大好き。うちで犬を飼うと聞いて、うれしい。もちろん、ちゃんと世話をするつもりです。どんな犬がくるんだろうかと待ちきれません。
 しかし、来たのは思い描いていた犬とはちがって、こわがりで部屋の隅に逃げてばかりの犬でした。名前もスピカと元から決まっていて自由につけられません。スピカは保護犬だったのです。
 引用のようにおとうさんにこぼすぼくに、おとうさんは「スピカには スピカの 気もちがある。それを わかってあげなきゃ」と言います。
 はたしてぼくとスピカの仲はどうなるんでしょうか?

 赤羽さんの幼年童話、たくさんあると思っていましたが、意外なことにひさびさだそうです。でもさすがの赤羽さん、低学年の子どもさんによりそって、犬を初めて飼う子の気持ちを余すことなく描かれています。つじむらあゆこさんの絵もかわいい。
 赤ちゃんから飼いたいという方は多いかもしれませんが、本当に必要とされるのは保護犬の飼育。でもいろいろハードルはあります。猫ですが、昔、実家でひきとった子は、元の家で先住猫とうまくいかなかった子で、うちに来てもソファーの下に隠れたまましばらく出てきませんでした。そんな子でもなれればうちの子。それはまちがいないことです。
 これを機会に、保護犬を飼ってみようというご家庭がますますたくさんになりますように!

2026年10月2日金曜日

『めのみえないマントヒヒ イブナは、きょうもげんきです!』楠章子(童心社)

書名:めのみえないマントヒヒ イブナは、きょうもげんきです!
著者名:楠章子
出版社:童心社


好きな場所:チャメは イブナを ずっと だいています。
 イブナの ほうも、はなれようとせず せなかに しがみついています。ふつうは すこし おかあさんのからだから はなれたりするものです。
所在ページ:P13
ひとこと:愛媛県のとべ動物園では、たくさんの動物を飼っていますが、その中にマントヒヒの群れもいます。中では赤ん坊も生まれます。
 アラビア語で「むすめ」という意味のイブナと名付けられたマントヒヒの赤ちゃんがいました。おかあさんのチャメにくっついて大きくなっていきますが、引用のように、どうもようすがおかしい。獣医さんに診てもらうと、目がほとんど見えていないことがわかりました。
 さあ、どうする。
 飼育員さんたちは考えます。
 人工飼育という手もあるが、そうすると母から離さなければなりません。群れからはなれ一生ひとりで生きていくことになってしまうかもしれません。イブナの幸せを考えて、そのまま見守ることにしますが、はたして目の見えないイブナは、群れの中でどう暮らしていくのでしょうか?

 『ばあばはだいじょうぶ』『おばあちゃんのあかね色』『お母さんはだいじょうぶ』など、認知症を理解し、共に生きていくことを、テーマの一つとして追及されている楠章子さん。
 このイブナのことを知って、ぜひ書きたいと取材され、本にされました。
 飼育員さんたちは、注意深く見守りながらも、なるべく群れに任せようとします。
 人間であれば、いじめたりなかまはずれにしたり、ということも場合によってはあるわけですが、学校もテレビも本もなく、どうするべきかをだれかに教わるわけでもなさそうなマントヒヒたちは、いったいイブナをどう扱っていくのでしょうか。
 
 

2026年8月7日金曜日

『旅する10分 放課後クロニクル』(高橋書店)が発売になりました。

『旅する10分 放課後クロニクル』(高橋書店)が発売になりました。


日本児童文芸家協会の編纂、山本省三先生や、宮下恵茉先生のご尽力のたまものです。

コンセプトは、「長編小説を最後まで読み切れない」「読み物から離れてしまう」といった子どもたちに、短時間で完結しながらも豊かな物語体験ができる“10分で読めるファンタジー”と“歴史”です。



【目次】
巻頭マンガ

第1話 ヒミコ・レボリューション ~謎の転校生~
ささきあり

第2話 見習い宮女、サナが走る! ~夢はるか飛鳥へ~
結城紀子

第3話 陰陽師なんかじゃありません! ~平安京からの使者~
宮下恵茉

第4話 十三段目の幽霊 ~鎌倉ミステリークラブ~
山本省三

第5話 独眼竜の背中に乗って ~戦国ファンタジー~
光丘真理

第6話 つれてけ堀 ~大江戸怪談話~
緑川聖司

第7話 結婚なんていやです! ~大正弓引娘と御曹司~
森川成美

主要な時代のエッセンスを網羅する7話です。
私は大正時代の女学生のお話を書いております。ツンデレ? かも。

どうぞよろしくお願いします。

2026年7月18日土曜日

『日本児童文学 2026年7・8月号』で『ユリの便箋』を評していただきました

『日本児童文学 2026年7・8月号』で『ユリの便箋』を評していただきました。

高学年以上向けの部です。「秘密」の物語として取り上げてくださいました。



ありがたいです。

2026年6月2日火曜日

『いいたいことがありすぎます!』工藤純子(金の星社)

書名:いいたいことがありすぎます!
著者名:工藤純子
出版社:金の星社


好きな場所:「りんりん、いいたいことをがまんしてたら、貝になるぞ!」
所在ページ:p44
ひとこと:工藤純子さんの『しんぱいなことがありすぎます!』は、忘れ物が心配でなんでもかんでも学校に持っていく心配性のももちゃんと、忘れ物なんか平気で荷物の少ない楽天的なかずまくんの二人のお話でした。
 今回は、言いたいことをなんでもいうひろきくんと、なんにも言えないりんちゃんの二人のお話です。
 いやあ、とってもかわいい。
 そして最後、おかあさんがいい。
 りんちゃんの成長ももちろんですが、大人もね、いいたいことを言えない世の中っていいの? みたいな作者の気持ちも、きっとどこかに入っているのかも。
 ほんとみんな貝になっちゃうよ!