2023年5月24日水曜日

拙著『てつほうの鳴る浜』にちなんだ書をいただきました。

武蔵野大学教授廣瀬裕之(舟雲)先生が、拙著『てつほうの鳴る浜』(小学館)にちなんだ書を書いてくださいました。てつほうのはぜる様子を、イメージしてくださったそうです。


「運を楽しめばどんな運命も自分のものになる」という添え書きもいただいています。

これは額にして家宝にせねば。光栄です。

廣瀬先生は、武蔵野大学の周辺の石碑を調べ、拓本を取って歩かれ、その様子を記した『刻された書と石の記憶 封印された武蔵野のおもかげ』という本を武蔵野大学出版会から出されていらっしゃいます。


昔は自由だったかもしれませんが、現代においては、拓本を取るにも、申請書類を書いたり、許可をもらったりと大変なようすがよくわかります。

武蔵野大学周辺には、中島飛行機の工場跡や、玉川上水があり、国木田独歩、松本訓導や、小金井桜に関する石碑があるそうです。

この本を片手に、私も周辺を歩いてみたいという気持ちになりました。



2023年4月25日火曜日

『ファミリーマップ』おおぎやなぎちか(文研出版)

書名:ファミリーマップ
著者名:おおぎやなぎちか
出版社:文研出版

好きな場所:家族ってなんだろう
所在ページ:p80
ひとこと:中学一年の陸は、母が亡くなって、父と二人暮らし。でも家政婦さんのように来てくれる人がいて、その人に育ててもらったようなものだった。しかしその人は、体は男性だが、もともとは陸の父のことを好きだった人だった。そんな暮らしに陸は不満はなかったのだが……。

 おおぎやなぎちかさんの新刊です。もう昨年から何冊出されているのでしょうか。幼年から今回のようなYAまで、幅広くご活躍中です。今回は、ステップファミリーや、LGBTなども題材にされています。ますますのご健筆を!

後藤亮子展 

画家の後藤亮子さんの展覧会のお知らせをいただきました。コロナの間は、ネット上での展覧会だったので、ひさしぶりにリアルで開催されるようです。

私も伺うつもりです。





2023年4月18日火曜日

『光るマウスが未来をかえる』井嶋敦子さんの書評

季節風154号に、同人の児童文学作家、井嶋敦子さんが、拙著『光るマウスが未来をかえる』(講談社)について、書評を書いてくださいました。


井嶋さんは小児科のお医者さんでもあり、ふだんから子どもさん方に、わかりやすく病気や治療法を説明しておられる方。小児肥満の研究にも力を入れておられます。

その方にこういう風に書いていただけるとは! すごくうれしいです。

特に「倫理的な問題はあるけれど、人類生存のために遺伝子工学は加速度的に発展していき、子どもたちにとってもいずれ必須の学問になって行くのだろう」というところは、まさに! と思いました。

井嶋さん、ありがとうございました!

2023年4月2日日曜日

『沙羅の風』松弥龍(国土社)

書名:沙羅の風
著者名:松弥龍
出版社:国土社




好きな場所:自分のことを玲子さんはあまり話してくれないけれど、旅をしているあいだなら、いろいろと聞けるかもしれない。
所在ページ:p75
ひとこと:十一歳の沙羅は、春休みおかあさんといっしょにおかあさんの故郷にお墓参りに行きます。なぜか自分のことを玲子さんと呼ばせているおかあさん。今まで故郷の話も、実家の話もしたことはありませんでした。なぜ? そしてどうしてお墓参りをする気になったのでしょうか。沙羅は旅を通じて、おかあさんを、そして自分を知るようになります。

『ぼくとお兄ちゃんのビックリ大作戦』で第四回森三郎童話賞最優秀賞を取られた松弥龍さんが、商業出版一冊目となる本を出されました。おめでとうございます! 松さんには河童の会という勉強会でも、また季節風でもお世話になりました。季節風では、長いこと同人誌評をお願いしていました。勉強家で、努力家の松さん、ますますのご健筆をお祈りしております。

2023年4月1日土曜日

『シタマチ・レイクサイドロード』濱野京子(ポプラ社)

書名:シタマチ・レイクサイド・ロード
著者名:濱野京子
出版社:ポプラ社




好きな場所:あと、たまたまとなりあわせた知らない人が、どんな人かなって想像してみたりするでしょ。たぶん、事実とちがってる。それも、物語だよね。
所在ページ:p105
ひとこと:『トーキョー・クロスロード』で坪田譲二文学賞を受賞された濱野さんが、また高校生を主人公に恋のお話を書かれました。今度の舞台は、上野・根津・千駄木。イメージとしては不忍池の周囲ぐるっとって感じです。池高こと都立池端高校には文芸部がありますが、部員が少なく存亡の危機に。員数合わせのために、小学校の同級だった子に誘われて、部室で好きな本を読んでいればいい、と言われて入った湯浅希和子は、みんなに小説を書けと言われますが、書いていません。それがちょっとコンプレックス。あと、彼がいるように言わますけれども、それは実は彼ではなく、もともと妹の彼だった人で、しかも妹とは別れています。その妹の元カレが、一年下の学年に入ってきますが……。

 この場所は私もなつかしい所です。しんどい思い出もあり……部活で坂の下の池之端門まで往復走らされたとか、どうしても成績表が見られなくて、受け取らずに友達と根津神社に行ったとかね。でも、明治大正の雰囲気の残っているとてもいい場所です。
 そこで生まれる現代の高校生のあれこれ。
 とってもすてきなお話です。それだけでなく、引用のように、どうやったら物語が書けるかというような示唆にも富んでいます。余談ですが、濱野さんのご著書には『ペンネームは夏目リュウ!  ―キミも物語が書ける』(くもん出版)という童話の書き方に関する本もあるんですよ。
 

2023年3月29日水曜日

『恐怖文庫』日本児童文芸家協会編(新星出版社)

書名:恐怖文庫
著者名:日本児童文芸家協会編
出版社:新星出版社




好きな場所:そもそも、始業式の日に転校してきたぼくに、初日から「タカビー白ブタ」なんてあだ名をつけるやつらなんて、こっちから願い下げだ。
所在ページ:p72
ひとこと:日本児童文芸家協会の編集になるこわい話です。協会の会員である作家さんたちが、それも人気作家さんが、ここぞとばかりに恐ろしいお話を書いています。いや~~怖いのなんのって。

雨の日の妹(山下みゆき)
ダムにしずむ村(横田明子)
百物語の夜(緑川聖司)
本にはさまれた約束(松井ラフ)
キミへの警告(七ツ樹七香)
にんじん(藍沢羽衣)
悪魔はほほえむ(江森葉子)
悲鳴橋(もえぎ桃)
ずっとつけててね(近江屋一朗)

の9編です。

引用は松井ラフさんの「本にはさまれた約束」からです。
転校初日にちょっとした失敗をして友だちがいない主人公高島コウタは、昼休み、図書室に向かいます。本が好きなわけでもなかったのですが、ここなら一人でいてもカッコ悪くないからです。そこへ……。

いやあ、怖いです。カバーを外すともっと怖いという話を聞いたのですが、怖いので外せていません(うそです。こわいものみたさで見ちゃいました。まさか見たら何かが起きるとか……ないでしょうね……ぶるぶる)


2023年3月26日日曜日

『金色の羽でとべ』高田由紀子(小学館)

書名:金色の羽でとべ
著者名:高田由紀子
出版社:小学館




好きな場所:でも、とりもどせない過去や、人にいいたくないほどくやしかったことって、意外と未来につながるんだなあって、最近、感じてるんです
所在ページ:p220
ひとこと:新潟の佐渡島にある二葉小学校に通う空良は、同じ小学校出身のプロバレーボール選手の北見選手の出るイベントを見にいきます。まるで羽が生えたみたいなジャンプからのスパイク。北見選手は、ファンから『金色の羽を持っている』と言われていることを知ります。
 背は低いけれど、北見選手にあこがれて入ったジュニアバレークラブ「佐渡ゴールドウィングス」で、六年生が引退し、最高学年の五年生となったとき、大和という子が新しく入ってきます。対岸の都会、新潟市でバレーボールをやっていたという大和は背も高く、空気を裂くようなスパイクを炸裂させる子でした。
 本当はアタッカーになりたかった空良。どうなるんでしょうか。

 作者の高田さんは佐渡島のご出身です。この物語にも描かれていますが、他のチームとの練習試合をするにも、泊りがけで行かなければならないハンディが、島にはあります。その中で、子どもたちが、県大会を目指して頑張る様子が、よく描かれています。そう、私も地方の出身なので、展覧会を見に行くにも、模擬試験に行くにも大人に連れて行ってもらわなければなりませんでした(県庁所在地だったにもかかわらず)。その不自由さ、島ならばなおのことでしょう。その中でも、上をめざしてがんばる空良くんたちが、すがすがしいです。