2023年12月6日水曜日

『わたしに続く道』山本悦子(金の星社)

書名:わたしに続く道
著者名:山本悦子
出版社:金の星社




好きな場所:リイマさんは、リイマさんの顔よ
所在ページ:p162
ひとこと:五年生のリイマは、父がケニア人で母が日本人。みかけはケニア寄りで、日本語話せる? なんて言われるけれど、「ことわざ検定七級」「漢字検定六級」のネイティブ日本語スピーカーだ。
 それでも学校ではいろいろある。弟二人のこともある。
 父と離婚していたリイマの母は、シンちゃんというパティシエと再婚した。
 同居したシンちゃんの母、おばあちゃんは、もともと中学校の先生だった人。毎朝、リイマの顔を見るたびにびっくりする人だ。
 それが、なぜかリイマをケニアツアーにさそう。
 いっしょに行ったリイマだが……。

 日本にいると、黒人にしか見えないリイマだけれど、ケニアに行くとそれはそれでどこか地元の人と違う。そこでおばあちゃんが言うのが引用の言葉。とっても大事だと思いました。
 だれもがあの人とこの人のミックスなんだよね、と思います。
 ケニアでおばあちゃんと自分をしっかり見つめたリイマ。
 しっかりと、自分の道を行くことでしょう。

2023年12月5日火曜日

『アオナギの巣立つ森では』にしがきようこ(小峰書店)

書名:アオナギの巣立つ森では
著者名:にしがきようこ
出版社:小峰書店




好きな場所:人類は力を持ちすぎた。ほどほどがわからなくなってしまったんだよ。
所在ページ:p135
ひとこと:小学六年生のあおばは、バードウォッチャーのじいちゃんに連れられてよく森に入る。そこで出会ったのが、同じ学年の梛。自分のことを「わし」という変わった女の子だ。梛の父母は刀匠(刀鍛冶)で、椥も同じく刀匠になりたいと思っているが、母は反対している。
 二人は、ある日分け入った山の中で、絶滅寸前のオオタカのひなを見つける。だが、ひなには危険が迫っていた……。

 ご自分もバードウォッチャーで、このお話の舞台になったような場所にお住まいのにしがきさんなので、もうそれは臨場感あふれる魅力的な描写ばかりです。
 いったいオオタカのひなはどうなるのか? そして梛の夢はどうなるのか? あおば自身はどうしたいのか、などなどいろいろな要素がからまって物語が進みます。
 引用のように、動物が増えすぎたり、減りすぎたりするのは、すべて人間のせい。どうしたらいいのかと考えるきっかけにもなります。

2023年12月1日金曜日

日本児童文学者協会ホームページで加藤純子さんに『かわらばん屋の娘』をご紹介いただきました

日本児童文学者協会ホームページの「今の児童書 私の推し」で加藤純子さんに『かわらばん屋の娘』をご紹介いただきました。

https://jibunkyo.or.jp/blog/blog-1876/

主人公吟の姿を、北斎の娘お栄に並べていただいて、うれしいです。






2023年11月30日木曜日

「女性のひろば」2023年12月号に『かわらばん屋の娘』(くもん出版)をご紹介いただきました

「女性のひろば」2023年12月号の「こども図書館」で、科学読物研究会の福田晴代さんが、『かわらばん屋の娘』(くもん出版)をご紹介くださっています。


ありがとうございます。うれしいです!

ほんとうに報道の自由の大切さを、この本を読んで、子どもさんがたに認識してもらえたらなあと思います。みなさまどうぞよろしくお願いします。

2023年11月27日月曜日

『ピアノようせいレミーとリズムのまほう』しめのゆき(ポプラ社)

書名:ピアノようせいレミーとリズムのまほう
著者名:しめのゆき
出版社:ポプラ社




好きな場所:おもいきって ソラは かいさつをでると、人を かきわけて まえに すすみました。すると、ほんとうに ピアノが あったのです。
所在ページ:p6
ひとこと:ピアノは好きだけれど、一人で練習するのは嫌いなソラ。ピアノ教室に行こうとして、うっかり電車を乗りすごしてしまいます。
 降りた駅で、引用のように、ピアノの音に魅かれて改札を出ると、ストリートピアノがありました。
 そこで、ソラは、同じぐらいの年の男の子が、深い森を光輝くペガサスがかけぬけていくみたいな曲を弾いているのを目撃します。
 さあ、ソラとピアノの関係はこれからどう変わっていくのでしょうか。

 これからどんどん続く「マジカル☆ピアノレッスン」シリーズ。
 はじまりは引用のようなストリートピアノでの出会いです。
 作者のしめのゆきさんは、元バレエ雑誌の編集者さんでいらして、ティアラちゃんシリーズという人気シリーズを書いておられました。
 バレエ雑誌って私も時々拝見しますが、ほんと女の子の夢がつまってきらきらです。
 それに比べるとピアノは、ちょっち地味かも……でもそれは思い込み。しめのさんにかかるとほんとすてきな世界が広がって、これを読んだ子たちがピアノがんばろう! と思ってくれるにちがいないと、一音楽ファンとしては期待してしまいます。
 ここに出てくる曲ブルグミュラーの「アラベスク」。有名な曲ですが、ブルグミュラー以外にもアラベスクを作曲してる人はいるんだよ、みたいなコラムもあり、ピアノ習ってる子も、今から習う子にも、とっても役に立つシリーズの誕生です。
 ピアノいいよね。
 一人の練習はレミちゃんみたいにつまらないかもしれないけれど、探せば仲間もたくさんいるし、弾けるようになればうれしいこと待ってるよ!
 

 

2023年11月26日日曜日

『ノクツドウライオウ』佐藤まどか(あすなろ書房)


書名:ノクツドウライオウ
著者名:佐藤まどか
出版社:あすなろ書房



好きな場所:まさか、穣くんことお兄ちゃんがその翌月に逃げるなんてことは、さすがの政さんも想像できなかっただろうな。
所在ページ:p14
ひとこと:明治時代から続くオーダーメイドシューズの店往来堂の四代目店主の孫娘、夏希は、シューズデザイナーを夢見ています。夏希の作りたいシューズは、店主のマエストロ(おじいさんだけれど店ではこう呼ぶ)が作っているものとは種類が違うのですが。
 ある日、店を継ぐはずのお兄ちゃんが、引用のように出奔してしまいます。
 さあ、夏希はどういう将来を思い描けばいいんでしょうか。
 
「ノクツドウライオウ」という呪文のような書名。佐藤まどかさんらしい、断崖絶壁を歩くようなギリギリ人生の設定。モノづくりの詳細。デザインの美しさが光る描写。魅力がいっぱいの本です。

 先日神保町のブックハウスカフェで開かれた佐藤まどかさんの講演会(野上曉さんとの対談)に伺って、その魅力の源泉がわかったような気がしました。まどかさんは「永遠の思春期」なのだそうです。YAの読者とまさに同じ目線の物語。なるほどと思いました。

 写真はまどかさんのサインと落款(イタリア製)です。


2023年11月10日金曜日

『アナタノキモチ』安田夏菜(文研出版)

書名:アナタノキモチ
著者名:安田夏菜
出版社:文研出版
好きな場所:ハルくんは、人の気持ちがわからない。
こんなときですら、わからない。
悲しい。情けない。腹立たしくってたまらない。




所在ページ:p122
ひとこと:老夫婦とその娘夫婦という二世帯住宅に住んでいる武東家に、とんでもないことが巻きおこります。しばらく行方知れずだったもう老夫婦のもう一人の娘が、捨て子をしたのです。でも連絡先が書いてあったことから、その子は二世帯住宅に引き取られます。でもその子はとっても個性のある子でした。自閉スペクトラム症という発達障害だったのです。
 物語は主に、老夫婦の夫のほうおじいちゃんと、娘世帯の子、おじいちゃんには孫ひよりの交互の目線で語られます。
 保育士だった経験から何とかしようと動くおばあちゃんと、同じく何とかしようとは思うものの、ことごとくかけちがってしまうおじいちゃん。受け入れたいおかあさんと、でも本音はどうかというといろいろきしみのある孫たち。
 こうありたいと、こうあるべきという気持ちと、そうは言っておられないという気持ちの正直な葛藤がここにはつづられています。
 でも、どうなるんだろうこの家族と思いながら、一気に読まされます。
 特におじいちゃんが人間臭くていいです。
 さすが安田さんだと思いました。
 ぜひぜひ、気持ちがわからない人との生活の苦しさ、自分はそれでは人の気持ちはわかっているのかと自分に問う人の正直さ、そしてそれでも生きていく人々のたくましさを読み取ってください。
 そこからすべては始まるような気がしました。