2020年6月28日日曜日

「詩集 あさやけ ゆうやけ」山田よう

書名:詩集 あさやけ ゆうやけ
著者名:山田よう
出版社:版木舎

好きな場所: ダライ ダーライ それは海
所在ページ: p30
ひとこと:詩「赤城おろし」で日本児童文学者協会投稿作品賞を受賞された山田ようさんが、詩集を出されました。
 物語もお書きになり、季節風やふらここで拝読したことがありましたが、ご自分でもこれからしばらくは詩に傾注したいとおっしゃっておられたように、詩のほうが、より自由に、生き生きと泳いでいらっしゃるように思います。
 私は詩のことはよくわかりませんが、型にはまらない魅力があるように思います。
 理系の方ですので、理科に関する詩が、おもしろい視点です。
 それから引用のように、モンゴルに住まわれてお仕事をされていたこともあったことで、そういう異文化の詩がとっても面白いです。
 子どものころの自由な感想のまじった詩もすてきです。

 どうぞこれからも、自由なご活躍をお祈りしております。

2020年6月27日土曜日

創作TIPS いつか使えるときがあるかも

ぶっちゃけ創作に関して、人に教えるっていうの苦手です。だいいち創作って、みんなちがってみんないい、みたいな世界ですし。わたしがこうしたらいいのにって思っていても、その人は別のところでブレイクスルーして、わたしより売れるかもしれないんだし。そんなのいっぱい見てます。

今、入っている同人、季節風は、お互い書き手としては同じ立場、という意味で、すごくいごこちがいいです。中には、教えてください~~みたいなスタンスの人もいますが、「先生じゃないし」と教えない。お互い発展途上で、自分も必死で研究してるところ、っていうか悩んでいる最中なんだから、みたいな感じで、それが気持ちよくて気に入っています。

でも、こんな私もときどき、いろいろ考えます。明らかにこうしたらいいのに、どうしてしないんだろ、もったいないなって。確かに、みんなちがってみんないい、にはまちがいないんですけど、でもね。それなりに、あるんです、程度の問題。

最近、「児童文学 なんとかのコツ講座」みたいなのをあちこちから頼まれるようになって、いざ、講義案を作ろうとすると、あれ? なにか言いたいことあったんだけどな、と前に考えたことを忘れちゃうので、思い出したときに、ここに書いておくことにします。ラベル(タグ)は、「創作TIPS」 です。右の下の方、ラベル欄をクリックしてくださると、ずらっと出てくるしくみになっています。でも、見たからっていって、わたしの講座に来なくていいってわけじゃないですからね~~来てください。直に聞いてくれたほうが、真意が伝わることは、まちがいないですから。

で、その第一回。前のエントリーで、「亜野山の落ち武者」という作品が、つくしの会という九州の合評会(今は「童話塾in九州」という名称になっていますが)に出した作品を書きなおしたものだ、という話をしました。

この本です。

それで思い出したTIPSがこれです。
「いつか使えるときがあるかも」

私は最初「河童の会」という勉強会に入っていました。そこには井上明子先生という、70年代から主に小学館やポプラで少女小説をいっぱい出されていた方が、時折ゲストで来てくださっていて、いつもこうおっしゃっていたのです。
「みんな、今のうちに書いておきなさいね。だってね、急に頼まれることがあるでしょ。そのときにゼロから考えるのは大変。なにか書いておけば、それをどうにかすることができるでしょ。だからたくさん書くのよ」

みたいなお話でした。そのころの私は公募に出している真っ最中で、「頼まれることがある」なんて夢のまた夢でしたから、「そうかな~~」みたいに話半分で聞いていたのですが。

でも実際あるのです。使うってわけじゃないけれど、別の話を書いている最中に、あ、あの方向にもっていったらいいじゃない? と思いつく話が、あとから考えたら、前に書いていた話の展開だった、ということが。

公募でだめな作品でも、あとで違う形でなにかになったということは、よくあるんです。

で、あっても書いてすぐ、なにかに使おう、と思わないこと。これ大事。

その物語に固執しないことです。短編で気に入っている作品を長編にしてうまくいくか。それはその内容によります。いくら短編で成功してもマシマシにしたら、味が薄くなっちゃってたいくつなだけ、ということはよくあります。小ネタと大ネタ。質というか種類が違う場合があるのです。それから頼まれるっていっても、求められているジャンルやテイストが違うのに、いくらいいアイデアなのでとごり押ししても、なんかちがうね~~となってしまいます。この話とっても評判いいですから出版してくれませんかと言っても、短編は一冊になりませんと言われたりとか。だから、それがものになるかどうか、そこのところは客観性と判断力が求められます。

であっても。です。固執しない、という条件にしたがう限り、書いておくことは大事です。あくまで固執しないことです。その物語だけをだいじこうじにして、しつこく書き直しているうちに、他のアイデアはどこかに飛んでしまうかもしれません。身につくはずの他のジャンルのスキルも、可能性も、試されずにすんでしまいます。

でも、その物語はあくまで捨てたわけじゃない、と思えば次にいけます。(なお、一つの物語をいろいろな角度で書き直すことは、文章修行には大事だ、というのは別の次元の問題で、これも正しいのです)




2020年6月26日金曜日

「夜明け前のキョーフ」フレーベル館 に一編書かせていただきました

日本児童文学者協会ご編集の「24時間のキョーフ」シリーズ第2弾『夜明け前のキョーフ』に一編を載せていただきました。

「亜野山の落ち武者」という物語です。亜野山に刃物を持って入ってはいけない、と言われているのに無視して遠足に刃物をしのばせて行った子がどうなるのでしょうか~~うふふ。
 軽部武宏さんの落ち武者の絵、こわいよ。前にねぼけてみた幽霊に雰囲気がそっくりです、落ち武者じゃなかったけど、その幽霊を思い出して文章を書いたのですが、なんでわかったんだろ~~



以前「つくしの会」(今は「童話塾in九州」という名称になっていますが)が北九州であったときに出させていただいた短編を、後半部分書き替えたものです。

なんでこの話をつくしの会に出したかというと、そのだいぶ前につくしの会が黒川温泉であったときに、私は豊後竹田をまわって黒川に行ったのでした。そのとき、農家民泊に泊まりました。そこで夕飯の時に伺ったのは、西南戦争のとき近くの山に入って逃げた兵隊がけっこういて、それが出てこなくていつまでも怖かったというお話でした。そして、刃物を持って山に入っちゃいけないと、長いこと語りつがれていたというのです。おもしろいなと思いました。つくしの会で何か書こうと思ったとき、ちょうどそれを思い出して短編にしたのですが、西南戦争もいいけど、ちょっと子どもには難しすぎ。なので落ち武者にしました。



このシリーズは、『真夜中のキョーフ』に始まって、この『夜明け前のキョーフ』そののち、真昼(9月刊行予定)、夕暮れ時(11月刊行予定)、ねじれた時間(2021年1月刊行予定)と順次出ることになっています。たくさんの作家さん、たくさんのお話に出会えます。

小学校中学年向きですが、たくさんるびがついていて字も大きいので、こわい話が好きな子なら、低学年でも大丈夫だと思います。

どうぞよろしくお願いします。

2020年6月16日火曜日

『くもの ちゅいえこ』が簡体字版になりました

『くもの ちゅいえこ』(PHP研究所)が、簡体字版として、今年の四月、中国で出版されました。
ずいぶんまえに契約していただいたのですが、外国でのこと、どうなったのかなと思っていたところ、見本をいただいて、ああ、ちゃんと出たんだと、感激です。


えっと題名の『再织一次就好了』というのは、どうも中を見ると「またかければいいんだ」というちゅいえこのセリフをタイトルにしたのではないかと思います。

ちなみに「ちゅいえこ」は「秋惠子」になっています。惠は日本でいえば旧字だけど、これも簡体字なのね~~いろいろおもしろい。

児童文学作家、研究者の常立という方が書かれた解説が折込で入っています。すごくしっかりとこの本の内容と、ちゅいえこが何回もうまくいかなくても、網をめげずにかけたことを書かれているみたいです。読めませんが、この前、季節風のバーチャル飲み会である方に教えていただいたグーグル翻訳(スキャン不要で超便利!)を使ってみてみると、そう書いてあるような気がします。

これが中国の子どもさんに読まれるとおもうと、わくわくです。

何より、ほんとこれ佐竹先生の絵がいいんです。幼年童話なので若文字数はありますが、実際絵本って言ってもいいぐらい。ちゅいえこの表情とか、くもの子で目と足ぐらいしか表情を表せるところがないのに、しっかりと気持ちが伝わります。

中国のほうのサイトで、さし絵が出ていましたので、リンクします。

これからもちゅいえこが世界のどこかで読まれますように!

2020年6月12日金曜日

「ラストでわかるだれの手紙」に一編書かせていただきました!

たからしげる先生編集の『ラストでわかるだれの手紙』に一編書かせていただきました。
見本来ました。


すごい豪華メンバーです。なにせこの目次、見てください。売れっ子さんばかり。
その中で、すごく緊張しました。

ぼくって赤い服が似合うんだ――たからしげる
しいちゃんへ――宮下恵茉
永遠にそばにいる――吉野万里子
わかれ道――森川成美
たったひとりの希望の君へ プレイA――みずのまい
たったひとりの希望の君へ プレイB――みずのまい
りなへ――宮下恵茉
シー・ラヴズ・ユー――芝田勝茂
だれも知らない小さな祈り――村山早紀
座敷わらしを知っていますか(往・復)――石井睦美
おしえてほしい(往・復)――令丈ヒロ子 
★番外編 手紙にまつわるお話★
踊る配達人――松原秀行
風がはこんだ手紙――天沼春樹


これは創作日記なので、少し創作的なことを。
アンソロジーの原稿を書くときは、いろいろ考えます。
その本の全体のテイストはどうなるのか、みなさんどんなのを書いてこられるのか。
その中で、離れすぎずにいなければなりません。かといってあったかなかったかわからないような無難さでは、作者に選んでいただいたかいがありません。ああいうお話があったね、と思い出してもらうぐらいでなければ。
それに短編ですから、一編終わるといったん読者の気持ちが途切れます。あきずに次を読んでもらうためには、おもしろくなくてはなりません。寄席の席みたいなものです。あきてお客さんが帰っ(本を手放され)てしまっては他の方にご迷惑がかかります。

そんなわけで、とにかく緊張。まじ緊張。

うまくいったかな~~
どうかな~~どきどき。

アンソロジーは同じお題で、それぞれの方が料理するものなので、とっても勉強になります。今回みたいに、ベテランの売れっ子さんの中に混ぜていただくのは、むちゃくちゃ勉強でありがたいことです。

いろいろな人(?)から来た手紙と、その手紙にまつわる物語。
差出人は最後までわからないしかけです。

素材もいろいろ、料理のしかたもいろいろ、読み応えのあるアンソロジーです。
どうぞご注文、リクエストよろしくお願いします。

2020年6月6日土曜日

「赤毛証明」光丘真理

書名:赤毛証明
著者名:光丘真理
出版社:くもん出版


好きな場所:「仕方ない、めぐは、スペシャルな友だちだからね」
うん。そうだ、あたしにとっても、そうだ。
「特別、スペシャル!」
ふたりで、だきあって、さけびながら、とびはねていた。
所在ページ:p136
ひとこと:光丘真理さんの新刊です。フィクションで、ずっと書きたかったものだそうです。でも、現役の中学生を取材されて、生徒手帳を貸してもらって研究されたそうです。車いすバスケをする男の子が出てきますが、光丘さんには『勇気ある一歩で世界が変わる! 』(新日本出版社)というノンフィクションのご著作もあり、その時にも車いすバスケのことを取材されているはずですから、本当に今の子どもたちの現状に即してよりそって書かれたものに違いありません。
 カバーを取ると生徒手帳の表紙になっているのもおしゃれ。
 そして、なによりこの『赤毛証明』というタイトルが、インパクトあります。
 赤毛が染めたものではなく、地毛であることを証明してもらうと生徒手帳にバン、と押される印。それを毎朝見せなければ登校できないのは、おかしいと思う主人公。普通ってなんだろうと考えます。
 でも決してどうしようもない迷路に入り込む話ではありません。落ち込んでも光丘さんらしい前向きな結論が待っています。引用のように、さわやかな青春の友情のお話としても読めるものです。
 帯には現役の中学生の「ふつうとはなにかを考えた」という感想が並んでいます。たくさん考えて、未来の日本を担ってほしいなと思います。

 

夏休みの本

2020年、短くなった夏休みですが、いろいろ本の推薦が出ています。拙著も二つのイベントですいせんしていただきました。

第32回下野新聞 小学生読書感想文コンクール
『ポーン・ロボット』偕成社



第16回大阪こども本の帯創作コンクール
『さよ 十二歳の刺客』くもん出版


この仕事の構造を知らなかったときは、本は本屋さんにずっとあるものと思っていましたが、そんなことはなく、あるのは新刊の一か月ぐらい。あとは主に学校や図書館でカタログ注文していただく。ネットがあるからいいじゃないかと思われるかもしれませんが、それもなにか別のところで評判にでもならなければ、なかなか検索して注文いただくという流れにはなりません。

印刷することは昔と比べて簡単になりました。でもやっぱり編集者さんがいなければ、読み手を意識した本にはなりませんし、営業の方がまわって売ってくださらなければ、どんなに苦労して書いても、倉庫に積まれて裁断されるだけです。

そんな中、こういうふうなイベントは大変ありがたいです。
本は一人ではできませんし売れません。
みなさんのお力の結集、たくさんの方に読まれますように!

2020年5月19日火曜日

「ソロモン諸島でビブリオバトル」益井博史

書名:ソロモン諸島でビブリオバトル
著者名:益井博史
出版社:子どもの未来社
好きな場所:ホールには親がたくさん見に来てね。シニアの部とジュニアの部のために、トロフィーを二個買ったんだ
所在ページ:p107



ひとこと:私ども『なみきビブリオバトル・ストーリー』(さ・え・ら書房)の著者四人(赤羽じゅんこ、おおぎやなぎちか、森川成美、松本聰美)と、『ビブリオバトルへようこそ』(あかね書房)の著者濱野京子さんは、2019年にBibliobattle of the Year 2018の優秀賞をいただきました。
 その三年前、Bibliobattle of the Year 2016の大賞を受賞されたのは「益井博史さんとソロモン諸島のみなさん」だったのです。
 益井博史さんは、2015年のJICA青年海外協力隊の隊員として、ソロモン諸島に派遣され「小・中学生の読書習慣の向上」を目的に活動されることになりました。これはそのときの記録であり、この活動そのものが2016年の大賞となったのです。

 実は私の最初のノンフィクションの仕事はJICA青年海外協力隊の隊員だった方をインタビューしてその方のそれまでの人生を原稿用紙7枚(!)にまとめるというものでした。その方のなさってこられたことは、すごく大変な仕事だということがうかがわれました。気候とか、交通状況とか、食べ物とか、二十キロやせたとか、いろいろね。でも大変だけど楽しかったということをおっしゃっておられて、苦労はたいしたことないのだと。でも、たいしたことないと書いてしまえば、本にはなりませんので、手をかえ品をかえ、どこがどう大変だったのか、根掘り葉掘り伺ったけど、それでも原稿にすると編集段階で苦労がわからないと赤が入り、書き直すこと7回。とにかく異文化でのいろいろなすれちがいをこちらも理解し読者にわかってもらうというのは、難しいことなのです。だからといって、眉間にしわを寄せて大変だ大変だ、と書くのはそれはそれでまた、事実に反するような気がする。隊員の方々は、大変ではあるけれど生き生きとしたなにかを持ってとりくんでおられるのです。

 この本での著者の益井さんの配属先は、ソロモン諸島のサンタイザベル島でした。ソロモン諸島というとイメージがわきませんがガダルカナル島のある諸島といえば、ああ、と思うのは私だけではないと思います。
 この本を読むと、読書習慣の向上といっても難しいことがわかります。まず母語の現地語がばらばらで、共通語はピジン語で、学校の教育は英語で、図書室もない学校が多くて、あっても絵本、ということ。
 益井さんは、その中で果敢にも「ビブリオバトル」を広めてみようと画策されるのです。
 いったい自分のやっていることが現地の方に浸透しているのかどうなのか……よくわからない中で、引用のようなことを言ってくれる校長先生に会い……こういうのが仕事のやりがいとなってやっていらっしゃるのだろうな、と思います。
 読書とは、読書推進とは、ビブリオバトルとは、言語とは、といろいろ考えるのにとても良い本だと思います。