2017年4月25日火曜日

「くじらじゃくし」安田夏菜


書名:くじらじゃくし
著者名:安田夏菜
出版社:講談社
好きな場所:「あんた、さっきわいのこと、ただのおたまじゃくしと言いましたやろ。」
「ああ、言うたで。わては、めずらしい生き物をさがしてるんや。どこにでもいる、めずらしくもないおたまじゃくしなんかに、用はないわい。」
「今、めちゃくちゃムッとしましたわ。あんたかて、どこにでもいる、めずらしくもない、ただの丁稚どんとちがいますのんか?」
所在ページ:p34
ひとこと:落語の脚本もお書きになり、花都向日葵という高座名で舞台に上がられることもある安田夏菜さんが、本領発揮して落語風の創作童話を書かれました。2016年に毎日新聞大阪本社版に連載された物語です。
 安田さんの『ケロニャンヌ』も、『レイさんといた夏』も、落語のエッセンスを伴ったユーモアたっぷりの語り口のお話ですし『あしたも、さんかく』は落語家の世界のお話ですが、今回は、もう上方落語の舞台そのもので、「イトはん(お嬢さん)」「だんなさん(店の主人)」「丁稚どん(小僧さん)」が出てきます。お題も「くじらじゃくし」とわかるようなわからないような、なにかおかしなことが始まりそうなわくわくした言葉。
 引用のようにおたまじゃくし、がヒントなのですが。
 こうなるかなと思えば二転三転。おかしなお医者さんも出てきて。
 でも最後はやっぱり児童文学、大きくなるということはどういうことか、ペットを飼うことはどういうことか、考えさせてくれます。
 さすが安田さん、おみごと。
 おあとがよろしいようで。
 

2017年4月23日日曜日

映画「MARCH」

ある方にお薦めいただいて、映画「MARCH」を見てきました。
http://seedsplus.main.jp/
中村和彦さんという監督さんの作られた短編ドキュメンタリー映画です。
今年2月にロンドンで行われた国際映画祭「International Filmmaker Festival of  World Chinema LONDON」 で、最優秀外国語ドキュメンタリー賞
(Best Foreign Language Documentary Award)を受賞されたそうです。

福島第一原発から25.3キロのところにある南相馬市立原町第一小学校のマーチングバンドのお話です。
原町第一小学校のマーチングバンドは伝統があって優秀で、震災前は全国大会の常連校でした。しかし放射能もれ事故のために、各家庭が避難を余儀なくされて、メンバーはばらばらになってしまいます。しかし子どもたちは練習がしたいと言いはり、それが親を動かして、許可を得て楽器を元の学校から持ちだし、遠く離れた会津などの場所で集まっては練習をするようになります。しかし生徒数は減り小学生だけではチームが組めなくなります。それでも中学三年生までが参加できるバンドに編成を変え、活動を続けていました。
それを知った愛媛FCのサポーターが、2014年、南相馬の応援として、このマーチングバンド「Seeds+」を試合に招待します。ひょっとして仮設住宅に住む人たちも見ているかもしれないとスタジアムで懸命に演奏するマーチングバンドに、愛媛FCのサポーターも相手チームのサポーターも一様に「南相馬」コールを送るのでした。

美談としての扱いではなくて、南相馬の当時と現在の状況や、子どもさんがた親御さんがた、先生の気持ちが正直に語られています。

この映画は自主上映で、現在自主上映をしてくださるところを探されているそうです。


2017年4月13日木曜日

ノベライズを担当しました『小説小学生のヒミツ おさななじみ』の見本ができてきました。年末年始、呻吟したやつです(笑)。小説はシリーズ六冊目、七月発売のあと一冊で完結です。どうぞよろしくお願いします。


2017年4月4日火曜日

衣川第二回

雑誌『児童文芸』2017年4・5月号に拙作「衣川 十二歳の刺客」の二回目が掲載されております。絵は森川泉さんです。
機会があればどうぞ読んでください。


2017年3月30日木曜日

朗読放送

拙作ノンフィクション『福島の花さかじいさん 阿部一郎~開墾した山を花見山公園に~』(佼成出版社)が、福島ラジオで朗読されます。初回放送は201745日(水)午前940分~54分です。




どうぞよろしくお願いします。

2017年3月25日土曜日

「大林くんへの手紙」せいのあつこ

書名:大林くんへの手紙
著者名:せいのあつこ
出版社:PHP研究所
好きな場所:文香ちゃんが座ってなかったら、荷物置き場にされてたかもしれないよ。ここ
所在ページ:p125
ひとこと:『ガラスの壁のむこうがわ』(国土社)でデビューを飾られたせいのあつこさんの二冊目の本です。
 小学六年の文香のクラスの大林くんという子が、突然学校に来なくなります。それで、クラス全員で手紙を書いて届けることになりますが、文香はいったん書いた手紙をひっこめて、ただ一行「いつかちゃんとした手紙を書きます。」とだけ書いて、ポストに入れます。それから文香は、何て書いたらいいのだろうかと考え始めるのですが。
 文香のしたことは、手紙でもメールでもなくて、大林くんの椅子に座り続けることでした。

 学校で書くお手紙は、しばしばもらう相手のためではなく、書く方の都合であったりするのですが、文香はそれに疑問を持つのです。しかし文香のすることは大林くんのためになることでもないのですが。ただそれをしたことで、一瞬文香にとっては、大林くんとつながった瞬間ができたのでした。

 季節風に連載されたお話をまとめられたものです。いわゆる児童文学の枠を超えて大人の文学にも通じるようなお話です。しかし、せいのさんは児童文学にこだわります。ご自分が子どもだったころのように、自分にぴったりくる物語を探している子がきっといるにちがいないと思うからです。このお話もきっとそんな子どもさんに届くことでしょう。そしてそうでない子どもさんがたも、日常あたりまえのことがあたりまえでないと思える瞬間に出会うかもしれません。それが文学の力と思います。

 ご上梓おめでとうございました。

2017年3月20日月曜日

「ニュートリノの謎を解いた梶田隆章物語」山本省三

書名: ニュートリノの謎を解いた梶田隆章物語
著者名:山本省三
出版社:PHP研究所
好きな場所:わたしは科学者なので運は信じません。ただし、優れた研究者は、訪れたチャンスを逃しません。常に備えがあるのです。小柴先生はその最たる方なのだと思います。
所在ページ:P93
ひとこと:2015年のノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章さんの伝記です。
物理学……難しいという頭がありますので、なんだか偉い方というだけでわけがわからないという気持ちがあると思います(私もです。高校時代物理は赤点すれすれでした。)。
しかしこの本は、そんな私でも読めます。なぜならば著者が「はじめに」で述べているように、「あまりに難しい部分は省き、なるべくわかりやすく説明することに努めました。ですから、ニュートリノに関しても、科学的にくわしく解説するより、そのようなものかとわかってもらえる範囲で書きました。」ということで、この本には物理学の難しいことは書いてありません。ニュートリノの各種や、その変化については、画家でもある著者の手によるわかりやすいイラストがついています。

それにしても引用のように、優れた研究者に対する梶田さんの見解には、どの世界もいっしょなんだなあと普遍的な人生哲学を感じます。確かに運の良いひとはうらやましいですが、それは実は運ではない。日々の備えなのですね。