2017年9月17日日曜日

「オオカミを森へ」キャサリン・ランデル

書名:オオカミを森へ
著者名:キャサリン・ランデル
翻訳者名:原田勝
出版社:小峰書店
好きな場所:ママは北側の建物よ!
所在ページ:p278
ひとこと:著者のキャサリン・ランデルさんは、1987年生まれとのこと。オックスフォードの大学院在学中ということで、お若いですね~~。イギリスで多くの賞を受賞された新星で、ウォーターストーン児童文学賞を受けられた別の作品も小峰書店から刊行予定とのことです。
 お父さんが外交官でアフリカはジンバブエ育ちということで、巻末の解説によれば、この本の舞台はロシアなものの、主人公の女の子フェオと母の仕事、飼い慣らされたペットのオオカミを森に戻す「オオカミ預かり人」は、ジンバブエに実在するペットにされたライオンを野生に戻す仕事などを参考に創作されたとのことです。
 その設定を前提に読むと、これは動物保護の物語であり、冒険物語です。帝政ロシア時代、帝都サンクトペテルブルク近くの森で、オオカミ預かり人をしているフェオと母のところに将軍がやってきます。オオカミを森に返すということがいけないというのです。母は捕らえられ、サンクトペテルブルクの刑務所に入れられます。その後おそらくシベリヤへ送られるのです。フェオはサンクトペテルブルクに母を助けに行こうと決心します。フェオの味方は、オオカミです……。
 さあ、どうなるでしょうか。
 装丁と版画風の挿絵がとってもすてきです。




 森に出る動物のイメージは日本は狐なら、ヨーロッパではオオカミだと勉強会で伺ったことがあります。帝制ロシア時代にこういう職業があったというフィクションの作り方は大胆で、とっても勉強になりました。

 

2017年9月14日木曜日

「どんぐりないよ」間部香代

書名:どんぐりないよ
著者名:間部香代
出版社:すずき出版
好きな場所:だからどんぐりがなかったんだ
所在ページ:p18
ひとこと:間部さんの『まーだだよ』は、こぶたくんがおかあさんとかくれんぼをするお話でした。今度の『どんぐりないよ』は、りすくんのおはなしですが、実はシリーズとも言えるもので、こぶたくんもでてきます。
コピーライターで童謡詩人でもある間部さんのむだのないテキストが、とてもわかりやすくてすてきです。こんな風にイメージをしっかりと整理するのは、実は難しいことだと思います。
ところで、りすくんとこぶたくんはともだちだったのですね。ということは、ここに出てくるかえるさんと、もぐらくんのお話もあるのでしょうか。なんだか楽しみです。



2017年9月10日日曜日

「ビブリオバトルへ、ようこそ!」濱野京子

書名:ビブリオバトルへ、ようこそ!
著者名:濱野京子
出版社:あかね書房
好きな場所:「やっぱり、バトルって言葉、引っかかるんだよね」
「そうかなあ。先生も勝ち負けじゃないっていってたじゃん。ゲームなんだから」
所在ページ:p25
ひとこと:濱野京子さんの『アカシア書店営業中!』は、本屋さんの児童書コーナーが減らされるということで、何とかしなければと立ちあがった小学生のお話でした。
今回の『ビブリオバトルへ、ようこそ!』にもアカシア書店が出てきますが、今度は違う小学校の生徒のお話で、学校図書館が舞台です。
 あこがれの幸哉くんと同じ図書委員になった五年生の柚希。みんなを図書館に引き付けるためにどうするかと図書委員で相談していると、先生がビブリオバトルのことを教えてくれます。さっそく図書委員でやってみることに。でも、友達の瑠衣は、やらないと言います。引用のように、ビブリオバトルが「バトル」であることにひっかかるのです。でも柚希はやってみたいと思い、本選びを始めます。
 ビブリオバトルはどうやってやるのか、読み聞かせやブックトークとどう違うのかが、順を追ってわかりやすく伝えられています。柚希と幸哉くんの関係はどうなるのかもどきどきです。

 ビブリオバトルはとってもおもしろいし、バトルというか、ちょっとした競争であるので緊張感を持って本を紹介することになり、聞く方にも後でチャンプ本を選ばなければならないという緊張感があるし、時間も限定されているので飽きずに聞くことができます。でも競争ではありながら、勝ち負けというわけでなく、チャンプ本にならなくても(ちょっとだけはくやしいけれど)、聞いた方はチャンプ本でない本もなぜか読みたくなってしまう、というところがいいですよね。広まって欲しいです。




2017年9月7日木曜日

「オオカミのお札」おおぎやなぎちか

書名:『オオカミのお札』
著者名:おおぎやなぎちか
出版社:くもん出版
好きな場所:今宵、疱瘡神と戦う
所在ページ:第一巻 P32
ひとこと:季節風の仲間、おおぎやなぎちかさんの新刊です。

定点観測という言葉がありますが、この「オオカミのお札」シリーズ三巻は、武蔵国御嶽山のある村にあるオオカミを祀るほこらに関する、江戸末期、戦時下、現代のそれぞれ三つのお話です。

第一巻『カヨが聞いた声』では、江戸末期、村に疱瘡がはやり、妹が疱瘡にかかった村の娘カヨが、妹を助けてくださいと大神(オオカミ)様にお願いする話です。でもカヨは妹の命を助けてくださいとは願いましたが、その他にまがまがしいお願いもくっつけていたのです。妹は助かりましたが……。



第二巻『正次が見た影』は、そのひ孫の世代のふたごの男の子たちの話です。時は、戦争中、おじさんが出征します。ふたごはそれぞれ自分たちもいずれ行くのか、と思いながら過ごしています。ついに大神様も出征なさったことになり……。


第三巻『美咲が感じた光』では、ふたごの一人正次の孫、美咲の話です。美咲は岩手に住んでいましたが、パパとママが離婚したために、東京に戻ってきます。でもじいちゃんは病気になり……そのうち東日本大震災が起きて……。


近代を生きた日本の庶民の姿が描かれています。その中心になるのは、目に見えないものにたいする人間の恐れと、直系の血だけでない一族のつながりです。おおぎやなぎさんのファンタジーの核になるところなのじゃないかなと思います。『しゅるしゅるぱん』もそうでした。

三巻どこから読んでもだいじょうぶにできているということです。三巻読めば、今、現在だけでない、めんめんと営まれてきた人の暮らしを、子どもさんがたにも実感できることでしょう。

2017年8月5日土曜日

「衣川」第四回

雑誌『児童文芸』2017年8・9月号に拙作「衣川 十二歳の刺客」の四回目が掲載されております。絵は森川泉さんです。あと二回です。さよの運命をどうぞお楽しみに。



2017年7月30日日曜日

「わたしはだあれ?」の原画展

『わたしはだあれ?』(KADOKAWA)文・まつもとさとみ 絵・わたなべさとこ 構成・うしろよしあき の原画展を見てきました。
 場所は、目白駅から近い絵本の古本と木のおもちゃのお店「貝の小鳥」です。なつかしい本が壁の一面に並び、反対の面と真ん中にはドイツを中心とした木のおもちゃや、ビンテージおもちゃの並ぶ中、原画が展示されていました。
 ちょうど読み聞かせと、三人のトークショーがあったので、店の中は満員。
 この本が、まつもとさん、うしろさんが、わたなべさんの絵の展覧会をご覧になって、動物が並んで目隠しをしている1枚の絵から、思いつかれたこと、また改稿しながら動物も絵も構図も変わっていったことなど、三人がそれぞれにお話になりました。
 だーれだ、という目隠し遊びのお話ですが、子どもさんがたは、読みながら何度でも「○○だ!」と言って当て、飽きないことでしょう。
 絵もこんな風↓で、柔らかですてきです。
 
原画展の情報や場所などはこちら↓から。
 http://kainokotori.com/index.html



 

2017年7月29日土曜日

「おてつだいおばけさん まんぷくラーメン対びっくりチャンポン」季巳明代

書名:おてつだいおばけさん まんぷくラーメン対びっくりチャンポン
著者名:季巳明代
出版社:国土社
好きな場所:「チビまんてよんで、わるかったばい」
「わたしも、ポンすけってよんで、あいこだね」
まりんちゃんがそういって、ほっぺをちょっと赤くすると、ポンすけが「よか、よか」といった。
所在ページ:p57
ひとこと:
まんぷくラーメンの一人まりんちゃんのところに、おきくさん、ろくろっ首さん、のっぺらぼうさんが手伝いに来ています。
 今回は、まんぷくラーメンのななめ前にある、ながさきチャンポン屋「和華蘭」のむすこだいすけが出てきます。
 だいすけは、まりんちゃんのことをチビまんと呼ぶので、まりんちゃんもだいすけのことをポンすけと呼ぶことにしました。
 ポンすけのおとうさんとおかあさんは長崎の出身、なのでポンすけもながさきべんのような言葉を使います。
 ところがポンすけの家はしばらく店を閉めてながさきに行くことになり……。

 おてつだいおばけさんのシリーズも三作目になりました。すごいです。おばけたちもまだ居そうだし、ってことはなんだかこの後もお話が続きそうな感じ。
 私は九州出身なので、九州言葉が、とってもうれしいです。



「ぼくらがつくった学校」ささきあり

書名:ぼくらがつくった学校
著者名:ささきあり
出版社:佼成出版社
好きな場所:いま、子どもたちに必要なのは、学校や住宅、公園といった「カラダ」の居場所を取り戻すことと、「自分も役に立っている」「ここにいていいんだ」と思える「ココロ」の居場所をつくることの両方だ。
所在ページ:p70
ひとこと:岩手県大槌町といえば、あの東日本大震災で、観光船はまゆりが民宿に乗り上げたショッキングな映像が思い浮かびます。
 町は津波で壊滅的な打撃を受け、小学校四校と中学校一校が被災しました。そこで町はこれを中高一貫校として統合し、校舎の建設にとりかかるのですが。
 ここに子どもたちの意見を入れようというのです。
 その理由は引用のこども環境学会主催の「子どもが元気に育つまちづくり~東日本大震災復興プラン国際提案競技『知恵と夢』の支援」コンペで提案された、「子どもと築く復興まちづくり」案にありました。
 新しい町ができるまでに十年、二十年かかるわけで、それをになって行くのは子どもたちだから、というわけです。
 これに日本ユニセフ協会が賛同して「未来の教室を考えよう」というワークショップが五年生の授業として行われることになりました。
 このノンフィクションは、児童文学作家で毎日小学生新聞にもたくさん記事を書いておられるささきありさんが、取材されて書かれたものです。
 
 子ども主体のプロジェクトによって、子どもの心の居場所を作るという考えがあることは知りませんでした。またそれに日本ユニセフ協会が関わっていることも知りませんでした。
 子どもが考える学校というのは、往々にして夢ばかりになりがちですが、ここの子どもさんがたは、避難所としても使われることを想定して、トイレのことや水まわりのことなどにも意見を述べられたそうです。その中の生徒さんには、父と祖父母を津波で失った方もおられたわけです。復興というのは、大変なことだなと改めて思いました。