2023年11月10日金曜日

『アナタノキモチ』安田夏菜(文研出版)

書名:アナタノキモチ
著者名:安田夏菜
出版社:文研出版
好きな場所:ハルくんは、人の気持ちがわからない。
こんなときですら、わからない。
悲しい。情けない。腹立たしくってたまらない。




所在ページ:p122
ひとこと:老夫婦とその娘夫婦という二世帯住宅に住んでいる武東家に、とんでもないことが巻きおこります。しばらく行方知れずだったもう老夫婦のもう一人の娘が、捨て子をしたのです。でも連絡先が書いてあったことから、その子は二世帯住宅に引き取られます。でもその子はとっても個性のある子でした。自閉スペクトラム症という発達障害だったのです。
 物語は主に、老夫婦の夫のほうおじいちゃんと、娘世帯の子、おじいちゃんには孫ひよりの交互の目線で語られます。
 保育士だった経験から何とかしようと動くおばあちゃんと、同じく何とかしようとは思うものの、ことごとくかけちがってしまうおじいちゃん。受け入れたいおかあさんと、でも本音はどうかというといろいろきしみのある孫たち。
 こうありたいと、こうあるべきという気持ちと、そうは言っておられないという気持ちの正直な葛藤がここにはつづられています。
 でも、どうなるんだろうこの家族と思いながら、一気に読まされます。
 特におじいちゃんが人間臭くていいです。
 さすが安田さんだと思いました。
 ぜひぜひ、気持ちがわからない人との生活の苦しさ、自分はそれでは人の気持ちはわかっているのかと自分に問う人の正直さ、そしてそれでも生きていく人々のたくましさを読み取ってください。
 そこからすべては始まるような気がしました。