2023年4月1日土曜日

『シタマチ・レイクサイドロード』濱野京子(ポプラ社)

書名:シタマチ・レイクサイド・ロード
著者名:濱野京子
出版社:ポプラ社




好きな場所:あと、たまたまとなりあわせた知らない人が、どんな人かなって想像してみたりするでしょ。たぶん、事実とちがってる。それも、物語だよね。
所在ページ:p105
ひとこと:『トーキョー・クロスロード』で坪田譲二文学賞を受賞された濱野さんが、また高校生を主人公に恋のお話を書かれました。今度の舞台は、上野・根津・千駄木。イメージとしては不忍池の周囲ぐるっとって感じです。池高こと都立池端高校には文芸部がありますが、部員が少なく存亡の危機に。員数合わせのために、小学校の同級だった子に誘われて、部室で好きな本を読んでいればいい、と言われて入った湯浅希和子は、みんなに小説を書けと言われますが、書いていません。それがちょっとコンプレックス。あと、彼がいるように言わますけれども、それは実は彼ではなく、もともと妹の彼だった人で、しかも妹とは別れています。その妹の元カレが、一年下の学年に入ってきますが……。

 この場所は私もなつかしい所です。しんどい思い出もあり……部活で坂の下の池之端門まで往復走らされたとか、どうしても成績表が見られなくて、受け取らずに友達と根津神社に行ったとかね。でも、明治大正の雰囲気の残っているとてもいい場所です。
 そこで生まれる現代の高校生のあれこれ。
 とってもすてきなお話です。それだけでなく、引用のように、どうやったら物語が書けるかというような示唆にも富んでいます。余談ですが、濱野さんのご著書には『ペンネームは夏目リュウ!  ―キミも物語が書ける』(くもん出版)という童話の書き方に関する本もあるんですよ。