2022年10月13日木曜日

『マスク越しのおはよう』山本悦子

書名:マスク越しのおはよう
著者名:山本悦子
出版社:講談社




好きな場所:コロナは、人類にとって最大のピンチだ。
いいことなんて何もない。みんな、そう思ってる。
けど、小柳みたいに、コロナをチャンスにしたやつだっている。
所在ページ:p100
ひとこと:コロナがはやりだしたころの中学1年生。もう既に小学四年生のころからマスクでずっと登校していた千里子。マスク登校と言われて、ヒョウ柄のマスクをしていかなければならなかった芹那。フェイスシールドにこだわる切実なわけがあった麦。別人になれとおじいちゃんからしつこくメッセのくる沙織。思いがけず七匹目の子ヤギになった美咲。みんなそれぞれの中学時代を生きていました。

 コロナはまだまだ収まっていないと思っている一方で、いちばんひどくて、いちばん混乱していて、一番不安だった時のことは忘れつつあります。私も大正時代の資料を調べていて、本当はあのころスペイン風邪で大変だったはずなのに、それを書いている人はほぼいなかったということが不思議でした。その反面で、私は戦後の昭和の中頃生まれですが、冬になって咳をすると、(スペイン風邪のことは祖母から聞いたこともありませんでしたが)祖母に学校に行くときマスクをつけろとしつこく言われました。家に帰ると手洗いうがいという慣習も、きっとそのころに始まったのが、起源も忘れられていたのに残っていたんですね。
 この本を読むと、あのころの不安だった気持ちが、一気によみがえります。
 こうだったなあと。
 さすがの山本悦子さんの筆です。

 そして、そのとき中学生はどうしていたんだろうと、思います。
 ほんと大変だったね。
 おばちゃん涙出てくるよ。
 一方で、引用のようなこともきっとあったはず。もちろん、今だから言えることではありますが、まさにピンチはチャンス。もちろん不幸なこと、苦労なこと、大変なこと、不公平なことたくさんありましたが、コロナは悪いことばかりじゃなかったに違いないと、だからこそ人類は、集団としては、疾病や災害、戦乱を生き延びてきているのだろうと、思うのです。