2022年10月3日月曜日

『千に染める古の色』久保田香里

書名:千に染める古の色
著者名:久保田香里
出版社:アリス館




好きな場所:蘇芳でございますよ。紅花や茜とはまたちがう、すこし青みを帯びた深い赤に染まるのでございます。
所在ページ:p69
ひとこと:千古は、藤原実資の娘で、小野宮という邸宅に住んでいる。あるとき、布染に興味を持つ。色にはどういうものがあるのか、源氏物語ではどういう重ねをしているのか、そしてなにより、どうやって染めているのか。
 実は千古も知らなかったが、邸宅の中に工房があって、そこで職人が屋敷で使う布を染めていたのだった。千古はそれを見たいと思いはじめる。
 
 作者、久保田香里さんの色に対する知識はすごいと思って拝読しました。またなにより目次に挙げられた重ねの色。文字には見ていましたが、こういう色なのかと認識を新たにしました。美しい目次です。装丁も色がよく、てざわりもよく、ほんとうにきれいな本です。古典を学ぶようになった中学生も、かぐや姫などのお話を読んで昔の生活に興味を持つようになった小学生も、このお話で、色というものについて認識を新たにするのではないかと思います。

 ところで、蘇芳。余談ですが私、蘇芳染めの絹のスーツ持っています。母が工芸が仕事で、たまには布染めもやっていて、家で染めたのを、二十歳ぐらいのときに仕立ててもらったんですが、着る機会がなくて。自分の出版記念会のときに、こんなピンクはもう最後だろうなと着ていきました。着物ならまだ娘とかにやれてよかったんですがね。洋服は。でも、草木染はあせずにだんだん濃くなると言われていましたが、それは本当でしたね。そんなこと思い出しました。蘇芳はむちゃくちゃいい色です。ぜひ一度、どこかで実物をごらんになってみてください。