2022年8月6日土曜日

「あの子は、わたし」ささきあり 佼成出版社

書名:あの子は、わたし
著者名:ささきあり
出版社:佼成出版社



好きな場所:エラは、目の前でお父さんやお母さんを殺された記憶にしばられて、なんの希望も持てない。絶望からにげられないでいるのに、ハンナは希望の中にいる。まぶしくて、ねたましかったのかな
所在ページ:p89
ひとこと:福岡県糸島市。そこでは、地元の有志が「いとしまハローピースアクト」という団体を作り、長年にわたり、子どもたち主体の平和劇の上演に尽力しています。これは2018年に上演された『ハンナのかばん』の際のプロジェクト立ち上げから、けいこと本番の上演の様子を、児童文学作家のささきありさんがていねいに追ったノンフィクションです。
『ハンナのかばん』は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人の弾圧を描いた同名のノンフィクション(カレン・レヴィン作)を原作とするホロコーストの話です。
 小学六年生から高校三年生までの子どもが主体なので、年齢ごとにそれぞれを束ねるリーダーがいて、さらにその中の最年長者が大リーダーとなって運営されています。
 大リーダーの奈々子、母が運営スタッフで自分も積極的にヨーロッパまでホロコーストの調査に行ったというほどの愛梨、主役のハンナにオーディションで抜擢された六年生の野々華など、それぞれが外国の昔の人々になりきろうと、引用のように努力を重ねて、劇をつくりあげていきます。
 ささきありさんは、雑誌や小学生向け新聞の記者もされておられたので、劇の内容となったハンナの時代の葛藤と、演じている子ども達の葛藤の錯綜するようすを、わかりやすく描いておられます。
 この「いとしまハローピースアクト」の劇は「いとしま8.6平和劇」として、折しも広島原爆投下の今日の日付に行われておられるとのこと。
 大変でしょうがこれからも長く続けられますように、お祈りしております。