著者名:佐藤まどか
出版社:小学館
好きな場所:イタリアの年の歴史的中心街や美観を誇る地方は、景観規制がきびしく、改装はおろか看板すら市の許可がないとできない。自分が所有する建物や土地だとしても、外壁を好きな色でぬったり、窓枠や雨戸を変えたりすることは許されないのだ。改装や新築には、管轄の市役所から、きびしい景観規制のチェックが入る。
閉めにくくなっている木製の雨戸(日よけ)をアルミサッシに変えたくて、改装費は払うからと母が大家に相談したら、規則を長々と説明されたことがある。
所在ページ:p58
ひとこと:イタリア在住で、プロダクトデザイナーでもある佐藤まどかさんの新作です。
日本でいえば中学2年生の圭人は、日本人でイタリアに移住した両親といっしょにローマに住んでいましたが、父が交通事故で亡くなったのをきっかけに、母と二人で日本に帰ります。
ある日、スプレーで壁にインパクトのあるうまい落書きをしている人を見ますが、その人に自転車を盗られてしまいます。自転車は取り戻したのですが、相手は小柄で声は甲高い。子どもかなと思いますが、どんな人なのかわかりません。ところが、中学に行ってみると、公立で制服があるのに制服を着てこない、素行不良で有名な歩という子がいました。男子なんだか女子なんだかわからないその子が、実は……。
歩と圭人の家族関係や、閉塞感、ひりひり感、それを打開していくようすも魅力ですが、引用のように、建築やアートに関する基礎知識や議論が満載。建築家やアーティストになりたい中学生、高校生は必読です。
差しはさまれる丹治陽子さんのすばらしいスケッチも、みどころがあります。
出版社さんのサイトからの次の文がすべてを物語っているかも。
「イタリアの建築物やアートが少年目線でたくさん語られるところも、読みどころとなっている。天才ではない普通の少年が、何を感じ、何を見つけていくのか・・・。
イタリア在住の作者ならではの読みごたえのある物語です。」