2021年11月21日日曜日

「ひまりのすてき時間割」井嶋敦子

書名:ひまりのすてき時間割
著者名:井嶋敦子
出版社:童心社



好きな場所:そうなんだ、これよこれ。やりたいことがあるとつっ走るんだよな、私。よくわからない力がむくむくっとわいて、全力でつっ走る。よばれてもぜんぜん気づかない。そこに流れるのは私だけの黄金の時間。ひたすら私はつっ走る。とうぜん、ごはんを食べるのもトイレに行くのもわすれる。だれかにたたきおこしてもらわないと現実にもどれない。地しんが来たらにげおくれて死ぬね、私。それでみんなに「ひまりは変だ」って言われる。こんな私の「変さ」の理由がついにわかったんだ。
所在ページ:p16
ひとこと:六年生の橋本ひまりは、引用のようにちょっと変な女の子です。その理由がわかりました。ADHD(注意欠如・多動症)だったのです。整理整頓をすることや、忘れものをしないようにすることや、人の話に割り込まずに聞くことなどができないのも、そのせいでした。
 小児科の和子先生は、ひまりに薬を処方します。
 それと並行して、ひまりは自分でも、朝起きてから寝るまでの自分の時間割のノートを書きます。それが「ひまりのすてき時間割」。
 天真爛漫なひまりちゃんと、生きにくい部分を、時間割を書くことや、俯瞰(文中にちゃんと説明ありますが、広い視野でものごとを見ること)することでなんとかしていこうとする、その工夫がとってもすてきです。
 
 季節風同人で、秋田の小児科医をされている井嶋敦子さんの単行本デビューです。おめでとうございます!!
 とはいっても井嶋さんはアレルギーに関するかみしばい『たべられないよ アレルギー』(童心社)を既に出しておられて、このかみしばいは、全国の学校や保育園幼稚園、学童などでアレルギー持ちのお子さんに対する周囲の理解を深めるために活用されています。
 この本もきっと、ADHDや、ASD(自閉スペクトラム症)への理解のために、いろいろなところで読まれることでしょう。なにより同じような特性を持つと自覚されている(あとがきより)作者井嶋さんが、とってもやさしくてすてきなお医者さんで、地域医療のためにフル回転で役立っておられるという事実そのものが、何よりの証拠として、そういう特性を持つと診断されたり、自覚されたお子さんがたの将来の希望と目標になることと思います。