2021年11月29日月曜日

「びわ色のドッジボール」もりなつこ

書名:びわ色のドッジボール
著者名:もりなつこ
出版社:文研出版
好きな場所:p67
所在ページ:あゆみ以外、誰も話しかけてこない。ぼくからも話しかけない。自分から誰かに話しかけたら負けになる気がしてきた。ぼくは悪くないはずなのに、負けを認めることになる。佑希たちに無視されているんじゃない。ぼくが無視しているんだ。



ひとこと:五年生の翼は、負け嫌いでことにドッジボールに関しては、負けたくありません。給食が終るとすぐにコートに一番のりで到着し、自分のクラスを勝たせるために采配します。結果、自分ばかりがボールを取ることになり、佑希と対立してしまいます。いろいろあってもうドッジをしないと宣言。さらに引用のようにこじれて、学校に行きたくなくなってしまいます……。
 翼が学校を休んで滞在したのは、鹿児島市から桜島をはさんで対岸にある垂水。そこには母さんの実家があって、ひいおじいさん、ひいおばあさん、おじいさん、おばあさん、おじさん、おばさん、そしていとこたちの四世代が、びわを栽培していました。

 鹿児島に在住で、長いこと児童クラブに勤めておられた作者のもりなつこさんが、暖かい目で、子どもたちを描いておられます。あとがきによれば、十一年ぶりの新刊とのこと。でもその間、ずっと地元の児童文学同人「あしべ」で、鹿児島の土地や昔のこと、鹿児島出身の人々のことを書いてこられていました。地元の文学賞も受賞されておられます。
 今回のお話も、鹿児島の風景と人々がとてもいい味で、主人公のみならず、読者もいやしてくれます。
 ますますのご健筆を!