2021年6月7日月曜日

「イカル荘へようこそ」にしがきようこ

書名:イカル荘へようこそ
著者名:にしがきようこ
出版社:PHP研究所
好きな場所:そうよ。親でもなんでも、人がやってくれないからって、ふてくされて、ヒナ鳥みたいに口をあんぐりと開いて待っていないで、自分でやればいのよ。それって自分のためになることよ。人のためにもなるしね。




所在ページ:p48
ひとこと:中学二年生の真子は、九月最初の土曜日、家をとびだします。数時間も走って、たどりついたのは、画廊でした。そこで倒れてしまいます。助けてくれて、家に呼んでくれたのは、夏鈴さんという画廊の若い女性オーナーでした。
 そしていろいろあって、夏鈴さんの家にしばらく滞在することになります。
 その家は、鳥のイカルみたいな色をした「イカル荘」というすてきな家でした。インドネシアからの留学生、国ではお嬢様のデフィンという高校生がホームステイしています。
 デフィンは、国ではなにもやったことがなかったのに、ここでは料理をしていました。それを夏鈴さんは、できるっていうのは強いことだと言います。
 そんなイカル荘にしばらくいるうち、真子は……。

 真子が家を出てきたのは、特別な不幸や事件があったわけではなかったのですが、家庭に全く問題がなかったわけでもない、だけどだれがどうすればよかったというわけでもないところが、ほんとうに現代にありがちなことだと思いました。だからといって、真子がイカル荘に滞在することがなにか直接に家族に作用したわけでもなく、だれが何を言ったわけでもないのですが、でも確実に家族が変わっていきます。それはイカル荘の人たちの生きざまのおかげでもあり、野生の鳥たちのおかげでもあり。とってもさわやかな物語です。
 にしがきさんは、ご自分でもバードウォッチングをされる方なので、その野生の鳥を見に行くシーンが圧巻です。