2021年4月27日火曜日

原結子作品集『コナミのいる島』

書名:コナミのいる島
著者名:原結子
出版社:オリオン出版



好きな場所:ナミにも東京に憧れる気持ちはある。けれどそれは、東京の大学に行きたいとか、東京で暮らしたいというのとは少し違う。ただ、きれいな服を着て、おしゃれな街を歩いてみたい、という十一歳の女の子の憧れにすぎない。
所在ページ:p12
ひとこと:日本児童文学者協会北海道支部の主催する第7回「児童文学草原賞」で佳作(草原賞なし、事実上1席)をとられた原結子さんの「コナミのいる島」
を掲載した原さんの短編集です。
 草原賞の発表後、ぜひ読みたいというたくさんの声に応じて、オリオン出版さんや、原さんの所属される同人「サークル・拓」のみなさんが、それでは作っちゃえ、ということで作られたみたいです。
 私もいただきました。
 すごく読みたかったので、うれしいです。

 コナミは与那国島の馬。赤ちゃんをお腹に宿しています。ナミは十一歳、本当は将来、島で馬を育てる仕事をしたいと思っている子です。でも東京に行かせたがっているおかあさんに言い出せないでいます。ナミはコナミのことが心配です。ちゃんと赤ちゃんを産んでほしい。でも……。

 百年前の島の壮絶な慣習、おかあさんに宿ったナミのきょうだいのこと、おじいのこと、島バナナ、機織り。ナミはそんな島の中で育ち、大きくなったのです。はたしてコナミはちゃんと仔馬を産めるのでしょうか。そしてナミの気持ちは……。

 さすが賞を取られたお作品です。原さんはほんと短編に定評のある方で、この本に所収の他のお作品もみんな香りがあって、いいです。「東京タワー」は第四回「日本児童文学」投稿作品賞を受賞されたものだと思います。
 表紙の草色も、裏表紙の馬もほんとすてき。いい作品集です。ご上梓おめでとうございます!!