2020年10月14日水曜日

「わたしのおうち チャレンジドと支援スタッフの物語」伊藤暢彦

書名:わたしのおうち チャレンジドと支援スタッフの物語
著者名:伊藤暢彦
出版社:新日本出版社
好きな場所:事件から少し時間が経った頃、テレビでは“活躍する障がい者”をとりあげる番組がちらほら見られるようになりました。ハンディキャップを乗り越えてこんなに頑張っている、障がいがあってもこんな才能がある、イキイキと輝いている。
 たしかにすごいし、勇気づけられる人もいると思います。でもわたしにはなにか違って感じました。
 だって、障がい者は活躍しなければ生きる価値がないのでしょうか? 輝いて、才能がなければ不要なのでしょうか?



所在ページ:p216
ひとこと:『二日月』(そうえん社)で、障がい者の妹をもつおねえちゃんの気持ちを描いたいとうみくさんのこれは本当のお話、みくさんのお父様の書かれた三姉妹の一番下の祥さんのお話です。八年前、障がい者支援施設に入所されてからの日々をつづられたものです。
 びっくりしたのは、入所を希望されてから入所の打診があるまで20年もかかったとのこと。ほとんど二歳児と同じケアを自宅で必要とする方の施設入所なのに、やっと入所できるのは親がもうそれができなくなるような年齢、七十歳を超えてからになるのだということです。そしてそれでもわが子を手放したくない、入所は心配という親心と、もう一方で四十年以上にわたる家族のケアが事実上もう限界という現実の折り合いをつけられての入所だったということが、大変よくわかります。
 いとうみくさんも巻末に一文を書かれていて、そこには姉として娘としてずっとそのようすを見守ってきた(きっと想像するに、本来なら両親を頼りにしたい場面があっても、ずっとがまんして長年自分のことは自分で片付けてきたにちがいないおねえちゃんの)立場からの気持ちが書かれています。引用はその一部です。健常者であろうと障がい者であろうと、人はあたえられた命を全うするのが、生きる意味なのではないか、と問いかけています。

 仲間の妹さん、たぶんお目にかかったら「いつもおねえさんにお世話になっております」とあいさつするべき方です。で、読んだ感想の第一はやっぱみくさんと性格似てるみたいだよ~~って思いました。人なつこいところとか、思いやりのあるところとか、きっぱりしているところとか。こうやって日常を、正直に、客観的に、かつリアルにつづっておられるお父様も、さすがみくさんのお父様でいらっしゃいます。でもおかげさまで「施設」とくくられる壁の内側で、どういう生活が営まれているかをみんなが知ることができると思います。『二日月』と並んで、すばらしいご本だと思います。