著者名:黒川裕子
出版社:講談社
好きな場所:そいつは、かばうように女の子の前に立ちはだかって、ぼくをはげしくにらみつけてくる。黄みがかった茶色の、まるでスワロフスキーの手芸ビーズみたいに、ぴかりと光っている目だ。
所在ページ:p15
ひとこと:六年生男子、ハルの弱みは、ニット編みが好きなことです。それはだれにも言わずに隠しています。
そこへ、転校生がやってきます。引用のようなみかけの外国人です。パキスタン出身のイスラム教徒です。給食も食べないで弁当だし、礼拝の時間が決まっていてそのときは足まで洗わなければなりません。遠足で行く先がお寺とわかると帰ってしまいます。ハルはなぜかその子、アブダラくんの係に任命されて、いろいろ苦労しますが、アブダラくんからはありがとうの一言ももらえません。
不満なハルの抵抗ののち、いろいろあって、なぜ彼が日本にやってきたのか、アブダラという名前は本当の名前ではないのになぜそう呼んでくれと言っていたのか、そして本当に言いたかったことはなんなのか、がわかってきます。それと同時になぜか、ハルも、隠したかったニット趣味を披歴する気持ちになるのです。
ありそうな異文化トラブルと、双方の言い分が十分に書かれていて、現在の学校の困惑が伝わってくるとともに、なんとかしたい人たちの気持ちも見えて、大事な物語だと思いました。