2019年10月16日水曜日

「ゴースト」ジェイソン・レノルズ

書名:ゴースト
著者名:ジェイソン・レノルズ
出版社:小峰書店
好きな場所:だから、ひょっとすると、おれがほんとうにこわいのは、ただひとり……自分なんじゃないかって
所在ページ:p77

ひとこと:主人公7年生(中一)の男子、ゴーストはアル中の父に発砲され、父はそのせいで刑務所に入り、母と二人で暮らしています。母は、病院勤めでできれば看護師になりたいと勉強中ですが、なかなか気持ちだけで進まず、ゴーストも母を守ってやりたいと思いつつも実際には、学校でもめごとを起こして、出席停止や保護者呼び出しで母を泣かせるばかり。そんなある日、歯の欠けたカメみたいな監督が率いる陸上チームを見ていてふと……。

 アメリカのYAを書く1983年生まれの方の作品です。写真を見る限りでは黒人の方のようで、たぶんアメリカの人が原語で読むと、そのあたり、もっとよくわかるんだろうと思うけれど、特にけんか言葉とか、会話とか、ジョークとかで。
 それでも中に「ジェームズ・ブラウンが白人だったらこんなだろうって顔」とか「黒人が白人になったらこんなだろうって顔」とか、けっこうあからさまに描写が出てくるのですが、アメリカ文学に詳しくないのでなんですが、たぶんぎりぎりの線であえて書いているところが(作者が黒人だから書ける=自分たちが言うのはいいけど、ということもあるだろうし)、赤裸々ですごく新しいんじゃないのかと思います。黒人同志でも、住んでる場所で差があって、いじめられたりするとかね。そのあたり、わたしたちが読み解くのは難しいけれど、でも、基調はまっすぐで、そして言いたいことは伝わる。つまり、スラムからの脱出です。いろいろ起こしても主人公は根が誠実で、ユーモアがあって、常に一筋の希望があるっていうところ、YAならではと思いました。