2019年3月29日金曜日

「災害にあったペットを救え 獣医師チームVMAT」高橋うらら

書名:災害にあったペットを救え 獣医師チームVMAT
著者名:高橋うらら
出版社:小峰書店
好きな場所:しかしそのとき、それぞれの人は、あれもこれもと手を出すのではなく、自分の分担を決め、それに集中したほうが復興がうまく進むというのです。
所在ページ:p147
ひとこと:動物保護や、戦争に関するノンフィクションを精力的に出版されている高橋うららさんの新刊です。

 
今回は、災害にあったペットを救うという目的のために結成された獣医師さん方のチームのお話です。
 福岡県の獣医師、船津先生は、東日本大震災のときに放射能もれによって立ち入り禁止となった警戒区域に取り残された動物を、保護救出する試みに参加します。
 そして、いろいろなトラブルを目の当たりにして、災害が起きたときにどうやって動物を助けるかをしっかり決めておくこと、すぐに動ける専門家チームを作ることが大事だと感じます。
 それから、アメリカに災害時の動物救護をするVMATというチームがあることを知り、福岡でいち早く福岡VMATを立ち上げます。この試みは全国に広がっていきました。
 そして、2015年熊本地震が起きました。船津先生は先遣の調査隊として現地に行き、その結果本体福岡VMATが初出動することになります。その中で、想定外のことに対応して、臨機応変に動くことの重要性や、動物をひきとる救援センターの必要性などを悟るのでした。

 高橋うららさんが集英社みらい文庫に書かれた『おかえり! アンジー』は、東日本大震災で飼い犬と離れ離れになった家族と、警戒区域に取り残されたペットを保護した団体の話でしたが、これはある意味その続編のようなものではないかと思います。つまり、同じようなことはどの災害でも起きていて、それに対して動物の専門家である獣医師さんがたはに心を痛められていて、動かれていたことが、この本ではよくわかります。
 この本の中には船津先生だけではなくそういうたくさんの獣医さんが登場します。その方々が一様に感じておられるのが、災害時には人の命が最も優先されるのは当然ではあるけれども、ペットと被災者の心は切り離せないもので、ペットを救うということは、とりもなおさず被災者の心のためなることであるということです。
 災害に対する対応は、もちろん完璧ではないものの、人間というものはちゃんと学んでいて前に進んでいっているのが、すごいなと思います。もちろんこういう方々の現場の努力あってのことですが。よく言われますが、災害のときに必要なものは、日々刻々変わるということ、ペットのケアも、たしかに人命第一ですが、第一でなくても、決して軽視できないもので、そういうことがもっと広く知られることが大事であろうし、引用の高橋うららさんの考察のように、ペットについてもだれかが担当することが必要だということなのだなというのが納得できます。
 なかに九州の勉強会でごいっしょさせていただいていた、赤城香織さんが出ておられるのがうれしいです。
 またペットを飼っておられる方々が、万が一の災害に備えて、何を準備しておくべきか、わかりやすく書かれています。飼い主、必見です。