2019年3月28日木曜日

「くもにアイロン」おおぎやなぎちか こどものとも2019年5月号

書名:くもにアイロン
著者名:おおぎやなぎちか
出版社:福音館書店 『こどものとも』2019年5月号
好きな場所:カイダさんが「こら、それは のばすものじゃないだろう」と あわてているうちに、アイロンは まどから そとへ
所在ページ:p8
ひとこと:とっても楽しいお話。クリニーニング屋さんのカイダさんのところのアイロンは、カイダさんの手からするりと抜けだし、自分でアイロンをはじめます。最初はこりゃいいと喜んでみていたカイダさんですが、アイロンは、椅子もテーブルもみんなぺらりとのばしてしまい、窓の外へ。
 さあ、どうなるでしょう。



 この後の展開が、ナンセンスです。カイダさんは特にあわてたり止めようとしたりすることもなく静観。
 もしカイダさんがアイロンを止めようと奔走したら、これはファンタジーになってしまいます。またアイロンはなぜ出て行ったのか、これはのばしてこれはのばさないのか、それはなぜなのか、などと考えてはいけないのです。ここが大事な分岐点。合評などでは意見を言うのが難しいところなんです……などと考えながら、読ませていただきました。

 アニメーターとしてもたくさんの受賞歴をお持ちの山村浩二さんの絵がとっても内容とマッチしていて、ただただこれがアイロンでのばされたらどうなるんだろう、次はなにをのばすんだろうという好奇心で、楽しめます。
 俳人でもあるおおぎやなぎさんの真骨頂だと思いました。
 わあ、これも、これも、のばされちゃった、と声をたてて笑いながら読んでいる子どもさんがたの顔が目に見えるようです。ぜひハードカバーにもなってほしいなと思いました。
 

 ところで、これが毎月400円ぐらいで購読できるのですから、保育絵本というシステムはすごいです。私は保育絵本についてはよく知らなかったのですが、先日雑誌『児童文芸』の特集の編集を担当して、なるほどと勉強させていただいたことがたくさんありました。その保育絵本特集号は『児童文芸』2019年6・7月号で6月1日発売です。とってもいい記事をたくさん書いていただきました。書き手のみなさまお楽しみに。