2025年3月16日日曜日

『こんな部活あります──サンショウウオの歌が聞こえてくるよ──生物部』森川成美(新日本出版)



新刊です。よろしくお願いします。

『こんな部活あります──サンショウウオの歌が聞こえてくるよ──生物部』新日本出版社

理科が好きな子、お医者さんになりたい子、生き物が好きな子、そしてなぜか幽霊部員ならぬゾンビ部員の子。なんだかオタクっぽい4人がばたばたするお話です。

中学校って部活あるんだよね、どんなかなとワクワクしている小学生に向けてのシリーズ。部活ってなんだろうなと考えている中学生にももちろん。生き物ってなんだろうな、生命ってなんだろうなと考えている人にも、人づきあいってなんだろうなと考えている人にも、もちろん。

ソフトカバーで持ちやすく、カバー下にもおまけの別のイラストが入っています。時系列的にはカバー下が一番最初かな。いや、あれが先かな?

中学生のとき私も生物部でした。サンショウウオを飼っていたのも、カエルが逃げ出したのも本当の話です。もちろん、メンバーは違いますが。



2025年2月27日木曜日

『薫ing』岡田なおこ(岩崎書店)

書名:薫ing
著者名:岡田なおこ
出版社:岩崎書店


好きな場所:「たっしゃでな。いじっぱり」
「バイバイ、クソジジー」
 薫と老人の距離ができた。
「おい」
 しがみつくように老人が声をあげた。
「こんな体して、ふつうに生きるのは大儀だな」
 薫はひらりとふり返り、
「だけど、あきらめない」
所在ページ:p130
ひとこと:ここに載せるのは、新刊がほとんどなのですが、これは1991年の刊です。
 でも、作者の岡田なおこさんが亡くなったと伺って、この本を読みなおしました。
 読み直して、ほんとすごいなって、改めて思いました。
 障がい者の方が書かれた障がい者の物語だということではなくて、この本が岡田さんそのものだということがすごいなって。
 最初に読んだときは、ああ当事者の方が書くって大事だな、ぐらいにしか思っていなかったかも。もちろん、そうか、当事者だとこういう気持ちになるんだ、それがよくわかってすごいとも思いました。
 でも今は、いろいろ勉強中の方の原稿とかを読まざるを得ないようになって、いつも思うのは、知ってたからって書けない、当事者だからって書けない、ということです。たとえばご自分の人生をだれかに伝えたいということで書かれる方がいて、たしかにその内容はすばらしいし、こんな事実知らなかったし、ぜひこれを広く人に読んでもらいたいとは切に思いますが、ちゃんと本になる原稿かというと……。
 私小説、と人はくくりますが、私小説にも、客観性というのが大事で、たださらけ出せばいいのではなくて、自分をどこかから見ている自分がいて、はじめて成立するんだなと実感する今日この頃です。
 
 岡田さんに初めてお目にかかったのは、日本児童文学者協会の懇親会のときでした。車いすでおいでになっていて、私のことを見て、いろいろ話しかけてくださったのですが、申し訳ないけれどぜんぜんわかりませんでした。まるで外国語のようで。お友達が介助されていて、その方もたぶん作家さんだったのではと記憶しておりますが、「通訳」してくださいました。なんだかそれが申し訳なくて、こちらがわからないのが悪いのにと、すごく緊張した覚えがあります。でも私のとまどいをものともせず、どんどん話しかけてきてくださって、私の作品の感想を言ったりしてくださったのでした。
 その姿が岡田なおこさんそのものだとわかるのは、ブログやフェイスブック、ときどきいただくメッセージかメールで、決していい子ではなくて、文句も言うけど、どこかにユーモアがあって笑ってる。大変なときこそおもしろいことを見つけなきゃね、みたいな生きざまを見てからです。
 ああ、そうか、これは障がい者が書いたんじゃなくて、岡田なおこさんが書いたんだな、と今ならわかります。その人そのもの。しかし、客観的。なかなかできるものじゃないと思います。
 RIP。

2025年2月19日水曜日

『東北偉人物語』みちのく童話会編(国土社)

書名:東北偉人物語
著者名:みちのく童話会
出版社:国土社


好きな場所:土門は、第二次世界大戦の前から文化人の肖像写真を撮り始め、いつしか人物写真集を出版したいと願っていました。そして、それは修正などしないその人そのもの「絶対非演出の絶対スナップ」でなければならないと決めていました。
所在ページ:p57
ひとこと:みちのく童話会編の「東北6つの物語」シリーズが完結したそうです。
6巻目は東北出身の偉人の物語。引用は井嶋敦子さんの手になる山形県出身の写真家、土門拳さんを取り上げた「鬼と呼ばれた写真家・土門拳」です。

東北の魅力を、東北以外の子どもたちに発信することをねらいとしたこのシリーズ。執筆者も東北の方ばかりです。
6巻のラインナップは次のとおりです。たくさんの方に読まれますように。





2025年2月11日火曜日

『人とのつながりこんなときは もし、親友をねたんでしまったら』日本児童文学者協会編(偕成社)




 日本児童文学者協会編のアンソロジーに、短編を掲載していただきました。
 もうすぐ発売です。学校図書館、公共図書館の司書のみなさまどうぞよろしくお願いします。
「人とのつながりこんなときは」というシリーズで、私が入れていただいたのは『もし、親友をねたんでしまったら』という巻です。
 下のように五人が書いており、表題作は、山本悦子さんのお作品です。

もし、親友をねたんでしまったら 山本悦子
もし、友だちに合わせるのに疲れたら 白藤か子
もし、父親が出ていったら 四月猫あらし
もし、むかつく人が近くにいたら 森川成美
もし、「じゃない方」と言われてしまったら 田部智子

 私は「むかつく人」を最初に書こうと思ったのではなくて(笑)「もし、……たら」というお題だったので、「もし、貸した本を返してくれなかったら」という話を書いたんですが、あまりにド直球だと考えられたらしく(笑)、タイトルを変えてこのようになりました。なるほど、たしかに読み直してみると、むかつく人の話でした。それでこの巻に載ったのかと納得です。

 同じシリーズの他の本は、こんな感じです。




 なかなか実践的なシリーズですよね。ほんとだれでも、小学校高学年から中学生までの間に、こういうことで悩みますもの。大人も実はそうなんですが、あからさまに言わないだけなんですよね。
 その年の人たちに手に取っていただければ、サプリのように、きっと何か考える助けになるのではと思います。

 たくさんの方に届きますように!


 

 

2025年1月11日土曜日

『パステルショートストーリー Silver 暴走するAI』赤羽じゅんこ(国土社)

書名:パステルショートストーリー Silver 暴走するAI
著者名:赤羽じゅんこ
出版社:国土社


好きな場所:p56
所在ページ:だってカメラがほんとうのことを写していた時代は、終わってしまったのだから……。
ひとこと:国土社の「休み時間にサクッと読み切れる」「休み時間で完結」のパステルショートストーリーシリーズの11冊目です。このシリーズは、短編のアンソロジーを一人の作家が1冊書くというもので、それぞれに色がフィーチャーされています。
 今回はSilver。銀色です。
 赤羽さんは、以前Pinkで『ちょっとねがっただけ』も書かれていて、シリーズ2冊目です。
 今回は、知能もあるが心もあるというAIを、ある謎の研究所が製造しているという設定で、6話のSF的な不思議なお話が書かれています。
 実際、AIには心が生じるのか、それともAIの言ったりしたりすることに心があると読み取るのは人間の心のほうなのか、という問題は、一見シンギュラリティ―の問題のように思われていますが、実は別のことです。でも、不思議さという点では同じかもしれません。
 引用の、カメラがほんとうのことを写していた時代は終わった、というのも今まさにAIによるディープラーニング画像生成で問題になっていることでしょう。
 今の小学生、中学生はそういう時代に向けて大人になっていくんですね。
 このシリーズは中学生にも人気らしく、もっともっと続いていくといいなと思います。

2024年12月17日火曜日

『ミルキーウェイ 竹雀農業高校牛部』堀米薫(新日本出版社)

書名:ミルキーウェイ 竹雀農業高校牛部
著者名:堀米薫
出版社:新日本出版社


好きな場所:人は、未来を想像できる能力が高い。けれども牛や多くの動物は、今という瞬間を全力で生きている生き物なんだ。
所在ページ:p92
ひとこと:夢生は母と二人暮らし。ハムスターを飼ったことをきっかけに、竹雀農業高校に進学する。動物がいると聞いたのもあるが、あと一つは母に心配をかけないようにしたいと思ったからだ。
 高校に入るなり、牛といっしょに歩いている女子学生を見る。その人は、自分は「牛部」だといい、授業前と放課後に実習用の牛の世話をする部活なんだという。
 さそわれた夢生は、牛部に入ることにする。
 しかしきれいごとだけではなく、いろいろやらなければならないこともあり、畜産という職業の厳しさも知ることになる。

 宮城で農業と林業をしながら、作家活動をされている堀米薫さんの最新作です。堀米さんのおうちはたくさんの肉牛を飼っておられます。でもこのお話は、乳牛の話。同じ牛ですが、やはり違いがあるはずで、きっと堀米さんは綿密な取材をして書かれたのだと思います。何より牛のあたたかさ、かわいさが余すことなく描かれています。
 絵は堀米さんの『林業少年』にも挿絵を書かれたスカイエマさん。たしか林業少年のときもそうでしたが、カバーを外すと、表紙にはまた違う絵があって、目を引きます。スカイエマさんファンにはたまらないことでしょう。
 新日本出版さんは「こんな部活あります」シリーズを刊行中でいらっしゃいますがそれは中学生のお話です。これは高校生の部活のお話ですが、きっと小学生も中学生も読めることと思います。たくさんの方に読まれますように。

2024年12月10日火曜日

『ふるさとはウクライナ』望月芳子(ナイデル)

書名:ふるさとはウクライナ
著者名:望月芳子
出版社:ナイデル



好きな場所:ところが10歳で初めて訪れた日本では、お客さんの反応が全然違ったのです。
所在ページ:p14
ひとこと:ウクライナ出身のカテリーナさんは、チェルノブイリで被災し避難を余儀なくされます。避難してきた子たちの音楽団に入団し、世界の国々で公演をしました。引用のように日本にも来て、日本で演奏活動をしたいと思います。音楽専門学校に進学し、バンドゥーラという琵琶のような弦楽器の奏者となります。そして日本にやってきて、働きながら、演奏活動を続けました。
 しかし、ウクライナで戦争がはじまり、家族や友人が大変な目にあっているところ、演奏などできないと思っていたカテリーナさん。ウクライナに住む友人に励まされて日本での演奏を始めます。

 編集者でもありフリーライターでもあり、雑誌『児童文芸』で編集もされている望月さんは、この本をお書きになるにあたって、カテリーナさんに直に取材されて書かれたということです。この本は、第10回児童ペン賞ノンフィクション賞を受賞されました。