2025年12月4日木曜日

『ぼくらの教室RPG』白矢三恵(くもん出版)

書名:ぼくらの教室RPG
著者名:白矢三恵
出版社:くもん出版


好きな場所:オレはトーマに教えてやりたい。空気ぐらい読めないと、高学年になっても、きっと、トーマはずっと「ぼっち」だよって。
所在ページ:p27
ひとこと:先月文研出版から『みんなの居場所』を出されたばかりの白矢さん、またまたご出版です。
 四年生の秋人は、ふだんから「低学年じゃないんだから、だれにも合わせようとしなかったら、空気が読めないやつだって、みんなから思われるよ」という考えの持ち主でした。だから、運動神経ばつぐんで、顔もまあまあイケてるトーマが、いつもしらけた顔をしてクラスの子たちとかかわらないのを見て、引用のように思うのでしたが。
 あれ? 空気読んでるはずなのに、なんだか、妙な方向に。
 秋人はこれでいいんでしょうか?
 そんな問題を、RPGゲームにのせて、軽やかに提示されています。

2025年11月28日金曜日

『キンダーブック2 2025年12月号』(フレーベル館)掲載の「くるみわりにんぎょう」詳細

 先日ちょっと写真を上げました『キンダーブック2 2025年12月号』(フレーベル館)掲載の「くるみわりにんぎょう」の一部の掲載のご許可をありがたいことに、いただきましたので、載せます。
 やっぱり写真よりすごくすてきです。
 


 浅倉田美子さんの絵、他のページもすてきです。ぜひお手に取られてごらんください。

  浅倉さんは、なんと『クロワゼ』というバレエ雑誌にも絵を描いておられます。くるみは、バレエの有名な演目ですし、ほんとご縁があってうれしいです。

 朝倉さんのwebページと、Instagramはこちらです。こちらもぜひ併せてごらんください。


2025年11月23日日曜日

『ハリハリモルモはさわれない!』赤羽じゅんこ(国土社)

書名:ハリハリモルモはさわれない!
著者名:赤羽じゅんこ
出版社:国土社


好きな場所:なんと! やられることがあるのか? ハリハリモルモは、まれに、ハリの先から毒をだすとは聞いておった。はれてかゆくなる毒だそうじゃ。
所在ページ:p43
ひとこと:赤羽さんの幻獣シリーズ『トゲトゲトカゲをつかまえろ!』『クスクスムシシを追いはらえ!』に続く三作目です。
 今回は、ハリネズミみたいな形の幻獣、ハリハリモルモが、クラスのみんなに次々ととりつきます。ハリハリモルモにとりつかれると、自分のからにとじこもり、だれとも協力しなくなり、元気もなくなるといいます。
 アキラは、合唱指揮者として、音楽会に向けて練習しようとよびかけますが、みんなにいばっていると言われてしまいます。原因をさぐると、それはみんなにとりついたハリハリモルモだったのですが……引用のように、なかなかてごわく。
 
 ゲームのモンスターはゲームの中だけですが、こんなふうに見えないけれど、みんなにとりついている何かがいるのかも。

2025年11月15日土曜日

『お元気部屋へようこそ』安田夏菜(小学館)

書名:お元気部屋へようこそ
著者名:安田夏菜
出版社:小学館



好きな場所:もっと強うならねば。もっとかしこくならねば。もっとしっかりせねばと、おこられてばかりでのう。わしゃ、そのなっとうの糸みたいなねばねばにからめとられて、息がつまって、とうとう家出をしてしもうた。
所在ページ:p83
ひとこと:せんべい屋のかんばんむすめお咲ちゃん。計算もできて、死んだおっかさんの代わりに家のこともやって、働き者で賢い子。そのようすに感心したお寺のおしょうさんに勧められて、寺子屋に通うことに。
 しかし、ちょっと変わった寺子屋で、お元気部屋というなぞの部屋があり……。
 引用のように、ねばねばをなっとうの糸、というのは落語台本も書かれる安田さんならではの表現で、こんな風にまるで落語のようにどんどんお話はけったいな方向に進んでいきます。いったいどうなるんだろうと思ったところで、なーるほど、という納得の展開。さすがでいらっしゃいます。
 さかいめ、あいまい、って大事ですよね。
 ついつい問題を突き詰めて、ではああしたらいい、こうしたらいいとSNSを含めてみんなで解決をあせってしまいそうな現代に、とっても必要なこと。
 ねばねば言わないように、大人もぜひこれを読んでがんばらなきゃ、あれ? がんばっちゃだめだった(笑)。

2025年11月14日金曜日

『おれたちはギロンする』安田夏菜(静山社)

書名:おれたちはギロンする
著者名:安田夏菜
出版社:静山社


好きな場所:議論をするのは、共に生きるためだってこと。相手を論破するためじゃないってこと
所在ページ: p93
ひとこと:あんまり特技もなく明るいザコキャラと自分のことを言っている陽太。親をまたいで叱られ、親子げんかになって家をとびだし、自転車で遠くまで。行きついたのは神社の境内でやっているフリーマーケットでした。そこで会ったのは、やたら議論をふっかけてくる女の子、芽衣。何のために議論をするんでしょうか?
 論題が安田さんらしくておもしろく
 1 寝ころんでいる親をまたぐのは、是か非か
 2 知らないおばあさんに、バス代を貸すのは是か非か
 3 子どもでも髪を染めてよいのか
 4 夢は持つべきか、持たざるべきか
 5 キャラを使い分けるのはアリか、ナシか
さあ、あなたはどう考える?

2025年11月11日火曜日

「キンダーブック2」2025年12月号(フレーベル館)で再話「くるみわりにんぎょう」の文章を担当しました

「キンダーブック2」2025年12月号(フレーベル館)で再話「くるみわりにんぎょう」の文章を担当しました。

絵は浅倉田美子さんです。原作E・T・Aホフマンのあやしさと、美しさを余すことなく表現してくださいました。

くるみ割り人形は、バレエの演目としてチャイコフスキーの音楽で有名で、小学校の音楽でも習います。12月に演じられることの多いものです。
これを機に、原作のあらすじを子どもさんがたに知ってほしいなって思います。
(本当はもちょっと複雑ですが、年中さん向けに簡単になっています)
ちょっと知ればバレエを見ても、音楽を聴いても、ああ、あれだって思えますし。子どもさんがたの世界が広がると思います。




E・T・Aホフマンはオペラ『ホフマン物語』の作者でもあります。なお作曲はいわゆる運動会の曲『天国と地獄』序曲の作曲者オッフェンバックです。

2025年11月9日日曜日

『ひとりでよめる こわこわ! おばけ話 かおがはずれるともだち』松井ラフ(岩崎書店)

書名:ひとりでよめる こわこわ! おばけ話 かおがはずれるともだち
著者名:松井ラフ
出版社:岩崎書店


好きな場所:だが、かおを見られたら、おどろかれてわるものにされる。
所在ページ:p30
ひとこと:岩崎書店さんの低学年向け怪談シリーズは、小学校に入って自分で本を読むようになった子どもたちが自力で読める、こわいけれどそんなにこわくない怪談を、国松俊英先生のご編集で、気鋭の作家さん方が選ばれ、書かれています。
新しい「ひとりでよめる こわこわ! おばけ話」シリーズの第一弾は『かおがはずれるともだち』。作者は松井ラフさん。松井さんはリアリズムもお書きになりますが、『青いあいつがやってきた』などのファンタジーもお上手。前のこのシリーズでも『カ目ラこぞう』という本を書かれたり、他にも怪談や不思議なお話をたくさん書かれています。
 このシリーズは一冊に二話掲載されていて、一話は昔から知られているおばけを現代にアレンジしたもの、もう一話は作者オリジナルだということです。

 引用は一話目表題作「かおがはずれるともだち」です。リクは、同じクラスのユウヤが道でころんだ拍子に、顔が外れたところを見てしまいます。外れた顔の下はのっぺらぼう。リクは、このことをみんなに話しますが、みんなはてんで信用しません。なんとかユウヤが顔を外したところをみんなに見てもらおうと、いろいろやっているうちに……。
 二話目は「おわすれですよ」。ミコは、学校によく忘れ物をしますが、ある日忘れたものが机の上にあり、横に赤いお札のような紙が……。

 どれもこわいけれどそんなにこわくなく、そして松井さんの筆で、なるほどとおもうような、あとあじの良いお話になっています。
 怪談は怖いな、というようなお子さんにも勧められる、すてきなお話二題です。