著者名:森埜こみち
出版社:ぺりかん社
好きな場所:スタッフから、その人は聞こえないということを聞いていたので、講師は手に持っていたレジメをメガホンの形にして、その人の耳にあて、大きな声で話しかけたのです。
所在ページ:p37
ひとこと:『蝶の羽ばたき、その先へ』(小峰書店)で、突発性難聴になった子を主人公にお話をお書きになった森埜こみちさんのノンフィクションです。
ぺりかん社の「なるにはBooks」という職業ガイドブックのシリーズの別巻で、デフアスリート(聴覚障害のあるアスリート)へのインタビューを中心に、聴覚障害のない「聴者」にもわかるような解説を加えたわかりやすい本です。
私は、手話に日本語の語順のものと、手話としてもっと直感的にわかりやすい語順のものの二つがあって、その他に口の形を読み取る方法があるのは知っていました。
でも、私が聞いていたのは、ろう学校では、昔は手話を教えていたけれど、手話禁止になって、人の口を読み取るやりかたをしているということだったのですが、この本を読むと、今はまた違って、むしろ積極的に手話を使っているみたいですね。ろう教育にも、歴史があるのだと知りました。
引用のように、大きな声で話しかけたらそれでいいかというと、そうでない場合があるというのも知りませんでした。
それから、デフアスリートのオリンピック「デフリンピック」というのがあって、1924年から開催されてきて、来年は日本で行われるということも知りませんでした。
なんとなく、ろう者は聞こえないだけで、身体能力はいっしょなんだから、聴者といっしょの大会でもいいんだろう、ぐらいの感じでとらえていました。
でもこの本を読むと、そうではなく、聞こえないことによる困難さがいろいろあって、それを配慮した大会運営の方法が必要なのだということも知りました。
今まで活躍してきたデフアスリート、活躍中のデフアスリートへのインタビューが満載で、その人生を知って、応援したい気持ちになります。
こうものが書けるのも、森埜こみちさんが、障害者教育のことをご存じで、またご自身も手話の勉強をしておられたからこそだと思います。
いつも、中途半端に何かをやって、かえって傷つけては、とちゅうちょしていましたが、デフアスリートを巻末にあるような方法で応援してみたいと思いました。