2024年7月4日木曜日

『エイ・エイ・オー! ぼくが足軽だった夏』佐々木ひとみ(新日本出版社)

書名:エイ・エイ・オー! ぼくが足軽だった夏
著者名:佐々木ひとみ
出版社:新日本出版社



好きな場所:直太は生まれて間もなく、戦で親兄弟を失った。焼き払われた村で死にかけていたところを政宗公に助けられ、伊達軍の組頭・杜野与六に預けられ、育てられた。
所在ページ:p46
ひとこと:剣道とピアノと書道を習っている五年生の直紀は、ひょんなことから足軽になることになります。転生したりタイムスリップしたわけではありません。
 直紀のおじいちゃんの家は、仙台藩の大工棟梁の家柄で、伊達政宗からもらったという藤が庭にあります。その藤は見ごろになると人がいっぱい見にくるほどの立派なものなのですが、ある日その藤の下で、伊達政宗公に会っちゃったんです。
 といっても、その政宗公は「杜乃武将隊」というおもてなし集団(観光PR隊)のメンバーで、ちびっこ足軽の代役を探していたのでした。
 杜乃武将隊は、「蘇った」という認識のもとに、それぞれの役になりきってしゃべり、動きます。なので、直太のような足軽にも、ちゃんとストーリーが設定されていたのでした。直紀は、はりきって足軽直太になりきろうとするのですが……。

 佐々木ひとみさんは、この杜乃武将隊のモデルで実際に仙台で活躍中の「伊達武将隊」に魅せられて、『兄ちゃんは戦国武将!』(くもん出版)をお書きになりましたが、その後も伊達武将隊の行動をずっと見守り、また雑誌などにも記事を書いてこられました。また『ストーリーで楽しむ伝記 伊達政宗』(岩崎書店)も書かれ、仙台藩の作法教室にまで通われるほどの心酔ぶり。ほんとその半端でない真剣さが、この本にも、余すことなく現れています。
 それからやっぱり忘れてはいけないのは、震災だということも、『ぼくんちの震災日記』(新日本出版社)の著者である佐々木さんは忘れません。直紀は失敗の中から、それをしっかり学んでいくのです。