2022年9月14日水曜日

『津田梅子 女子教育のとびらを開く』高橋うらら

書名:津田梅子 女子教育のとびらを開く
著者名:高橋うらら
出版社:講談社



好きな場所:そして翌年、教師になる資格、教員免許に関する決まりができました。
 高等女学校を卒業した女子は、文部大臣の許可を受けた上の学校で、さらに三年間勉強すると、文部大臣が認める科目の教員の資格が与えられることになったのです。
 しかし、女子高等師範学校に英語科はなかったので、英語に関してはこの「三年間学ぶ学校」が、まだありません。
(自分が開くべきなのは、まさにこの学校だ!)
所在ページ:p149

ひとこと:2024年新紙幣の顔ということで、注目されている津田梅子。
 女子留学生第一号の五人のうち、一番若かった人ということ、それから津田塾大学をつくった人、ということは知っていても、なぜ女子教育にそんなに固執したのか、というところが、いまいちわからないというむきもあるかもしれません。
 でも、高橋うららさんのこの本は、ていねいにわかりやすく、津田梅子の生涯と時代背景を説明しながら、なぜ、梅子が官学の教師であるだけで満足せず、私塾による女子教育にこだわったのかも、ちゃんと解き明かしています。
 ほんと女子は、制度がないわけではなかったのですが、引用のように、中途半端だったんですよね、ずっと。その半端ぶりは、当事者でなければなかなか実感できなかったと思います。
(余談ですが、私なんて昭和も後半に共学の大学に行ったのに、トイレは各館に一か所だけ、女子は休み時間にそこに大集合していましたからね。運動部の施設では、女子更衣室が元トイレだった狭い個室だけ。男子は更衣室がなくておおっぴらに外で着替えてましたから、うまく見計らって出ないと、えらいめに(笑)。一から十までそんなでしたよ。)
 そういう半端ぶりがわかっていないと「制度があった」「男子だけの学校に入れてもらった人(かなり例外的なケース)もいた」と言われたら、じゃあ女子も男子と同等だったのかと、誤解されかねません。
 ぜんぜんそんなじゃなかったところが、津田梅子の大変だったところ、がんばりぬいたところなんだ、と思います。
 それが、この本ではほんとうによくわかります。
 高橋うららさんの引用のような、ていねいな説明のおかげです。
 子どもだけでなく、大人も理解が深まると思います。
 お札になるこの時に、なんといってもわかりやすいこの本を、図書館で、学校で、ご家庭でぜひ!