2020年5月19日火曜日

「ソロモン諸島でビブリオバトル」益井博史

書名:ソロモン諸島でビブリオバトル
著者名:益井博史
出版社:子どもの未来社
好きな場所:ホールには親がたくさん見に来てね。シニアの部とジュニアの部のために、トロフィーを二個買ったんだ
所在ページ:p107



ひとこと:私ども『なみきビブリオバトル・ストーリー』(さ・え・ら書房)の著者四人(赤羽じゅんこ、おおぎやなぎちか、森川成美、松本聰美)と、『ビブリオバトルへようこそ』(あかね書房)の著者濱野京子さんは、2019年にBibliobattle of the Year 2018の優秀賞をいただきました。
 その三年前、Bibliobattle of the Year 2016の大賞を受賞されたのは「益井博史さんとソロモン諸島のみなさん」だったのです。
 益井博史さんは、2015年のJICA青年海外協力隊の隊員として、ソロモン諸島に派遣され「小・中学生の読書習慣の向上」を目的に活動されることになりました。これはそのときの記録であり、この活動そのものが2016年の大賞となったのです。

 実は私の最初のノンフィクションの仕事はJICA青年海外協力隊の隊員だった方をインタビューしてその方のそれまでの人生を原稿用紙7枚(!)にまとめるというものでした。その方のなさってこられたことは、すごく大変な仕事だということがうかがわれました。気候とか、交通状況とか、食べ物とか、二十キロやせたとか、いろいろね。でも大変だけど楽しかったということをおっしゃっておられて、苦労はたいしたことないのだと。でも、たいしたことないと書いてしまえば、本にはなりませんので、手をかえ品をかえ、どこがどう大変だったのか、根掘り葉掘り伺ったけど、それでも原稿にすると編集段階で苦労がわからないと赤が入り、書き直すこと7回。とにかく異文化でのいろいろなすれちがいをこちらも理解し読者にわかってもらうというのは、難しいことなのです。だからといって、眉間にしわを寄せて大変だ大変だ、と書くのはそれはそれでまた、事実に反するような気がする。隊員の方々は、大変ではあるけれど生き生きとしたなにかを持ってとりくんでおられるのです。

 この本での著者の益井さんの配属先は、ソロモン諸島のサンタイザベル島でした。ソロモン諸島というとイメージがわきませんがガダルカナル島のある諸島といえば、ああ、と思うのは私だけではないと思います。
 この本を読むと、読書習慣の向上といっても難しいことがわかります。まず母語の現地語がばらばらで、共通語はピジン語で、学校の教育は英語で、図書室もない学校が多くて、あっても絵本、ということ。
 益井さんは、その中で果敢にも「ビブリオバトル」を広めてみようと画策されるのです。
 いったい自分のやっていることが現地の方に浸透しているのかどうなのか……よくわからない中で、引用のようなことを言ってくれる校長先生に会い……こういうのが仕事のやりがいとなってやっていらっしゃるのだろうな、と思います。
 読書とは、読書推進とは、ビブリオバトルとは、言語とは、といろいろ考えるのにとても良い本だと思います。