2019年10月11日金曜日

「南河国物語 暴走少女、国をすくう?の巻」

書名: 南河国物語 暴走少女、国をすくう?の巻
著者名: 濱野京子
出版社: 静山社
好きな場所: その意気込みは、意気込むほどに空回りするばかりで、現れる虎はますます小さく、頼りなく、みゃーと鳴くばかりでした。
所在ページ: p260
ひとこと:濱野京子さんの中華ファンタジーです。これの生原稿を読ませていただいたのは、九年ぐらい前でしたでしょうか。わたしはまだ一冊も本を出したことのないひよっこだったのに「濱野さんのお作品の中で一番好きです」などとのたまって、大先輩の濱野さんに、え? みたいな顔をされたのですが、いやいや、ご本になってうれしい!
 
 千載におよぶはるかな昔、黄砂舞う大陸のお話です。
 飾り職人賢良は、裕福な商人の娘と駆け落ちし、娘紅玉をもうけるのですが、妻とはひきはなされて、父娘二人となり、都に出てきます。しかし賢良は、実は南河国の雷将軍と瓜二つだったのです。それで……。
 頭のいい紅玉は、アラビアンナイトのシェーラザードのようにうそ? いえ話術を駆使して、いろいろな人をおちょくり、いえ操り、小気味よく物語が進みます。
 そこへ引用のような不思議な術を操る師弟と、南河国の太子(プリンス)と対峙している蒙呂の公主(プリンセス)も加わって、いえまきこまれて……。

 いや、おもしろいです。中国の物語にこういう話あるよなと思うけど、本当は中国の物語だとすごーく長くて人も多くて読みにくいのに、これはわかりやすく、それでいてエッセンスをそこなわず、章の切りようも、どうなるんでしょう、どうなるんでしょう、で終わっていて、ああ、これが物語ってものだな~~と感慨深く読ませていただきました。
 女性がみんな生き生きしています。そこが現代のお話にすることの意味かもしれません。
 いいなと思うけれど、いざ書くとなるとすごく難しい、これは、中国文学に通じておられる濱野さんだからなせるわざだなと思いました。