2013年7月24日水曜日

「おれのミューズ!」にしがきようこ

書名:『おれのミューズ!』
著者名: にしがきようこ
出版社: 小学館
好きな場所: 山から流れてくる霧にけむる松林。おれはその中に立っていた。山に近づきたくても、できずに立ちつくすおれ。そんなにあがいてもあの山には登れないだろうという予感。
所在ページ:p186
ひとこと::『ピアチェーレ 風の歌声』で日本児童文学者協会長編児童文学新人賞と、椋鳩十児童文学賞を受賞されたにしがきようこさんの第二作目です。
 ピアチェーレは、声楽に魅入られた女の子の話でしたが、今度は絵に魅入られた中学二年生の男の子が主人公です。高校の選び方に悩んでいます。一人っ子なので見本がいない。父と母は意見が違うが、どちらも特にこれと強制しているわけではないので、結局自分で選ばなければなりません。そこへ、ミーミというおさななじみが現れます。しばらく病気で入院していて、同い年なのに1年です。普通の生活をしているようですが、いろいろ制限があるようで……。

 芸術を描くのは難しいと思うのですが、『ピアチェーレ』で歌を描写されたのと同様、にしがきさんはその絵がどういうものなのか、またそれに対したおれがどう思ったかを詳細かつ鮮やかに描写されて、おれの決意を明らかにされてゆきます。描く側からするとなかなかできないことだと思います。ミーミの苦しさとおれの苦しさ、重なってなにかの道が見えてくる、そういう物語だと思います。