2012年3月12日月曜日

映画「生きてるものはいないのか」

石井岳龍監督の映画「生きてるものはいないのか」を、人に勧めていただいて行ってきました。石井監督は、イタリアの第8回サルソ映画祭グランプリ等、国内のみならず海外でも高い評価を受けている方とのこと。

また主役の染谷将太さんは、「ヒミズ」でマルチェロ・マストロヤンニ賞をもらった期待の新人。

さらに、この映画の原作は不条理劇で、岸田国士賞をとった戯曲だそうです。
戯曲のレビューはこちら。
http://www.amazon.co.jp/%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%81%A6%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%8B-%E5%89%8D%E7%94%B0-%E5%8F%B8%E9%83%8E/dp/4560094012

私演劇は大好き。田舎で育って、昔、十八歳で東京に出てきて、一番先にしたかったこと、それは生の劇をみることでした。それが影響したか(祟ったかともいう)、娘は二人とも高校のときは演劇部。私も、Pとして、衣装だの小道具だのの調達に駆り出されましたが、実はとってもうれしかったりしました。

不条理劇というのは、学生のころ1970年代、大学のフランス語の授業などではじめてお目にかかったわけですが、それは古典のベケットでした。しかし、実は今でもよくわかりません。でも、年を経て、ギリシア悲劇だのイタリア喜劇だのの講演を見にいってみれば、不条理の元がわかるような気もしてきました。それは哲学ではないのかと。

この映画では、梗概のとおり、淡々と人が死んでゆきます。ちょうど今の時期、地震などリアルの死を思い、どうかとも思われる方もあるやに思いますが、そうではないと私は思います。これはギリシア悲劇や、シェイクスピアのハムレットのように、個々の感情や事象を超えた哲学的な死、哲学的な物語なのです。人はいつか死ぬ。必ず死ぬ。死なない者はいない。それがいつか、それは果たして問題なのだろうか。大事なことは、生きている時を生き抜くことではないのか。

それにしても、物語を描く場合には、一人一人の人間の個性というのは大事なのですね。それがとっても立っていたように思え、いい勉強させていただきました。

などとレビューを書く任でもないのですが。枯れ木も山のにぎわいということで。

公式HPはこちらです。
http://ikiteru.jp/top.html