書名:いのちのカプセルにのって
著者名:岡田なおこ
出版社:汐文社
好きな場所:今はこんな物があって、いい時代だわね。『歩き方がヘンだ』とわたしをバカにした人らも、みーんな、これ押してるもんねー
所在ページ:p106
ひとこと:マモルは子犬です。母さん犬のマミーのおなかにいるときから、児童館に通う子どもたちの声を聞いていました。中でも気になっていたのは、あかりのことです。あかりは、なぜかわかばちゃんと呼ばれていました。あかりは動物は苦手といってしりごみしているようです。
そのうちマモルは他のきょうだいといっしょに生まれ、わけあってあかりの犬になります。実はあかりは、生まれたときにママのおなかから出るのに時間がかかったために、体がみんなのように動かなかったのです。それでわかば学級に通っています。わかばちゃんと呼ばれることがあるのはそういうわけですが、あかりはわかばちゃんと呼ばれるのが嫌いなようです。パパやママは外に出て近所の子とあそびなさいというのですが、あかりは元気な子とはなかよくなれないと思っていて、児童館に行くのは紙芝居の日だけなのでした。マモルはそんなあかりを守ってあげようと思うのです……。
あとがきにも書かれていますが、作者の岡田なおこさんは、全身にまひのある方です。でも、ご自宅の近所にある児童館に通いはじめて二十年、今では児童館に通うお子さんがたは、みなさん岡田さんをみかけると必ずあいさつされるそうです。
そんな児童館との交流の中で、岡田さんが作られた私家版絵本『ボクはあかりの“マモル”だよ』については、先日このブログでもご紹介しました。
https://saffibarinkay.blogspot.com/2019/02/blog-post_11.html
この本はその私家版絵本をベースに、物語をふくらませたものです。引用のように、シルバーカーを押しているおばあさんとの出会いなども描かれています。このおばあさんは、実はあかりと同じようなハンディがあり、昔、そういう子は学校に行く必要はないと思われていたことなどを話してくれます。
読者は、当事者である作者の岡田さんを通じて、こういう歴史があったことや、あかりの元気な子に対する気持ちや、犬のマモルを飼うことによって、外へ出てみようと考える気持ちの変化などを追体験することができると思います。
たくさんの方に読んでいただきたい本です。