拙作『福島の花さかじいさん』(佼成出版社)で書きましたように、福島市にある「花見山公園」は、阿部一郎さんという方が里山を人力で切り開いて、花木を植えてこられた私設の公園です。
みごとな花の山ということで、だんだんと人気が高まり、桜の季節には数十万人の人出がある名所になりました。なのに、阿部家は入場料を一銭もお取りになっていません。しかし数十万人の人が入るとなると、個人の手ではとうてい処理が及びません。そこで周辺の交通整理は協議会が、園内の清掃、整理、案内などは、ボランティアの方々が引き受けておられます。
このボランティアは「ふくしま花案内人」という方々です。その花案内人が活動開始から15周年ということで、写真集を出されました。普段から、花見山の中を知り尽くしておられる方々が撮られた写真です。花見山は花木農家である阿部家の畑なので、さまざまな種類の花があるのですが、桜の季節に行っただけでは見られないものも。それがこの写真集では網羅されています(索引参照)。花見山辞典みたいなものですね。(なおこの写真集の一般利用、販売については未定のようです)
花案内人のおひとり、井上利明さんには、拙著『福島の花さかじいさん』に写真をお借りしました。(なお手前みそですが、阿部家と花見山に関しては、新聞記事や雑誌にはよく取り上げられていますが、こんなふうに一冊の単行本に網羅的にまとまっているのは、今のところ『福島の花さかじいさん』の他にないと思います)
今年の花見山は新コロナウィルスの影響で観光客の受けいれは中止、周辺観光もご遠慮くださいという風になったようです。花見山だけでなく、今年は、各所のお花見も自粛です。健康を考えてのみなさんの苦渋の決断だと思いますが、花さかじいさんの阿部一郎さんは「花は人の心をいやしてくれる」とおっしゃっておられました。戦争に行ったとき、名もない花を見て心がいやされた、というようなお話をされていたと思います。こんな時ですが、だからこそ、私も近所に咲く名もない花を見て、阿部さんのおことばを改めて、思い出したいと思います。