2019年10月3日木曜日

ヒロという町

『マレスケの虹』(小峰書店)が、全国読書感想画中央コンクールの指定図書になったということで、登場する町のようすなど知りたい方がおられるかもしれません(え、いない?)。とはいえ、私が調べた限りのことをお知らせしましょう。

 マレスケの住んでいた場所は、ハワイ島のヒロという大きな町の近くのワイカフリというところです。ワイカフリは架空の町ですが、当時このようなシュガー・プランテーションは、ハワイ島の中にたくさんありました。
 サトウキビ畑(シュガケン・フィールド)と、製糖工場(シュガーミル)と、社宅(キャンプ)が三点セットになった町です。
 サトウキビ畑と製糖工場の間は、架線のトロッコで結ばれる場合も、水を流した樋(フルーム)で結ばれる場合もあったようです。刈ったサトウキビを運ぶためです。製糖工場が海岸にあれば、さらにこれに加えて船着き場(ランディング)があって、そのサトウキビを加工して、製品を船積み出荷。
 海岸ぞいにはプランテーションを結ぶ汽車が通っていたのですが(マレスケでは、この汽車が登場しますが、その後)1946年の津波で壊滅して廃止されたということでした。
 今は、ハワイ島は観光が主なので、コナ地区が栄えていますが、当時はヒロ側のほうが栄えていました。なぜならば、コナのほうは海が浅くて、大きな汽船は着岸できずにはしけを必要としたからです(マレスケの参考文献に挙げた本では、昔、このはしけに牛などを乗せて人より先に上陸させるシーンが出てきます)。
 それに比べるとヒロには大きくて深いヒロ湾があり、大きな船も着岸OKだったので栄えていました。(ただし今は、ヒロは雨が多いので、観光には雨の少ないコナが好まれ立場は逆転しています)

 この「ヒロ」という場所は、ハワイ島に住む人には、ちょっと魅力のある場所だったらしく、「ヒロ・マーチ」というのがあります。古いけれど、元気のいい行進曲、こんな曲です。(たぶんマレスケも、第一次世界大戦前後にここにいた私の祖父たちも聞いたはずのバージョンと思われます)演奏しているあずまやは、たぶん昔、桟橋のあったあたりかと。

 

 ウクレレのスタンダードナンバーにもなっているようです。
 ところで、今、リージョナル・ルーツ部門で二度もグラミー賞を取ったカラニ・ペアという歌手の方がヒロ・マーチをカバー、こんな現代的サウンドのミュージック・ビデオを作っておられました。公式です。

 
 
 この背景にあるのが、ヒロの町です。最初空撮で見える島が椰子島という場所で、次に見える公園のようなところは、もともと日系人街などあった場所、津波でやられてから公園になったそうです。ヒロ湾の奥がヒロのオールドタウンで昔、汽車の駅があったところ。橋の一つは、汽車が通っていたところで、列車が通ると歌うようだというので、シンギングブリッジと言われていたやつだと思います。
 町の上のほうは煙っていて山に見えませんが、まっすぐマウナケアに通じています。マウナケアは富士山より高いですがあんなふうにはそびえておらず、盾状でずっとだらだらと上がっています。曇って見えないことも多いと思います。
 いずれにしてもホノルルなどのオアフ島の観光地の景色とはちょっと違うのがおわかりかと思います。言葉にすれば、「しっとり」という感じでしょうか。
 このだらだら坂には昔は、一面、さとうきび畑がありました。
 
 そんなことで、私の調べた限りの、ヒロの今昔でした。