2018年12月23日日曜日

「うみべの文庫」堀米薫

書名:うみべの文庫 ~絵本がつなぐ物語~
著者名:堀米薫
出版社:文研出版
好きな場所:でも、やみくもにいろんな絵本が来ても困りますよね。ウィッシュリスト(欲しいものリスト)を作って、その中から選んだ絵本が届くようにしてはどうでしょう。
所在ページ:p48

ひとこと:宮城県在住で、農家を営んでおられる堀米薫さん。『チョコレートと青い空』(そうえん社)、「あぐり☆サイエンスクラブ」シリーズ、『林業少年』(新日本出版)などの農業をテーマとしたお作品、『仙台真田氏物語』(くもん出版)など地元東北をテーマとしたお作品を中心に精力的にご出版を続けられていますが、堀米さんの追いかけられているもう一つのテーマに、東日本大震災があると思います。『思い出をレスキューせよ』(くもん出版)や、『きずなを結ぶ震災列車』(佼成出版社)もそうではないでしょうか。

 この本は「家庭文庫」活動のお話ですが、蔵書を東日本大震災による津波で流されてしまった家庭文庫主催者のお話という点で、震災のお話でもあるのではと感じました。

 宮城県塩竃市に住んでいた長谷川ゆきさんは、読み聞かせの会に入ったことをきっかけに家庭文庫を開くことを決心し、約八百冊を集めてまさにオープンに向けて準備していたところを、東日本大震災による津波で、ちょうど車に置いてあった二冊をのぞき、すべて失ってしまいます。
 しかし避難所や仮設住宅で読み聞かせを続けるうちに、再び文庫を開く決心をします。
 そこに日下美奈子さんという絵本作家と出あい、日下さんの協力によって、引用のようにウィッシュリストを利用して、全国から絵本の寄付を受けることにしたのです。二千冊もの絵本が集まり、長谷川さんはついに、自宅で「うみべの文庫」を開きます。

 それにしても絵本に対する愛と文庫を開きたいという熱意があってこそ、日下さんをはじめたくさんの人が動いたのではと思います。二千冊をリストアップするのも、送られた本を受けとるのも、管理するのも、個人にとっては大変なことです。
 長谷川さんは今年の六月に病気で亡くなったそうですが、亡くなる前にこの本の本文と写真などもちゃんと目を通されたとのこと。これも作者堀米さんの震災を伝えようというご努力あってのことと思いました。