書名:エヴリデイ
著者名:デイヴィッド・レヴィサン
翻訳者名:三辺律子
出版社:小峰書店
好きな場所:宗教や性別や人種や出身地がどうであろうと、九八パーセントはみんな同じだ、ということに気づけないのだ。たしかに、男女のちがいは生物学的なものだけど、パーセンテージで見れば、ちがうところのほうが圧倒的に少ない。人種は社会構造としてのちがいにすぎず、遺伝的なものではない。そして宗教は、キリスト教の神を信じていようが、ユダヤ教のヤハウェだろうが、イスラム教のアラーだろうが、ほかの存在だろうが、おそらくは同じものを求めているのだ。なのに、なぜか、人間はたった二パーセントのちがいに重きを置きたがり、世界のほとんどの紛争は、そのせいで起きている。
所在ページ:p102
ひとこと:16歳のAは、毎日ちがう宿主のところで目を覚まします。ちがう年齢ということはないし、だいたいが近くに住んでいるのですが、宿主は男の子のこともあり、女の子のこともあり、人種も境遇もそれぞれで、Aは一日その子の主体として、暮らします。赤ちゃんのときからそうだったので、Aは慣れているし、しょうがないと思っているのですが。
しかし、ある女の子に会い、その気持ちは一変します。その子は、その日Aの宿主だったあまり共感できない男の子ジャスティンの彼女リアノンで、Aはジャスティンだったらぜったいしないようなデートをします。
それからもAは毎日ちがう宿主の主体になるのですが、リアノンが忘れられません。そしてついにリアノンに……。
とにかくものすごい設定です。そしておもしろい。恋愛とAの正体をあばこうとする者に追い詰められるサスペンスが交差し、どうなるのかなあと思いながら、ついつい読み進んでしまいます。
主人公Aが毎日変わる宿主として生きることで、いろいろな境遇、生きざまの同世代の子が描かれます。相手が同じだとしても、好きという気持ちと、体のふれあい、見かけとの関係も微妙に変わってくるということが理解できます。そしてせんじつめれば引用のような人種、性別、宗教だけではなく、男女の愛も同性の愛もそう変わらないということも。
ほんとアメリカのYAはすごいなと思いました。私たちもがんばらなきゃね。