2014年6月7日土曜日

「おさかなポスト」が教えてくれること たけたにちほみ

書名: おさかなポストが教えてくれること
著者名: たけたにちほみ
出版社: 佼成出版社
好きな場所: だから、キンギョ一匹といえども、川にすててほしくありません。
所在ページ: P41
ひとこと:たけたにちほみさんの新刊ノンフクションです。たけたにさんは、長くインドネシアに住んでおられた方で、プロフィールを拝見すると、日本児童文芸家協会理事のほかになんと「日本ワヤン協会会員」という肩書も。ワヤンというのは、インドネシアのペープサートのような影絵劇です。たけたにさんはインドネシアの民話にもお詳しくて、いつか雑誌『児童文芸』で民話の特集をしたときにはおねがいしてインドネシアの民話を書いていただいたことがあります。
 そんなインターナショナルな視点が、たけたにさんをこのおさかなポストに注目させたのでしょうか。

 おさかなポストというのは、神奈川県川崎市の稲田公園にある、いろいろな事情で飼えなくなってしまった魚を預かるためのいけすです。もともとは稚魚をふやして多摩川に返すために川崎市が多摩川漁協に依頼してつくったものですが、ほとんど使われなくなっていました。それに注目した山崎充哲さんという個人の方が、多摩川に増える一方の外来種の預かり場所「おさかなポスト」として活用しようと活動を始められたのです。電気代やエサ代にも私費を投じられただけでなく、根気よく魚を多摩川に捨てないでほしいというキャンペーンを続けておられます。この本はそんな山崎さんの活動を追ったものです。

 なぜ、捨ててはならないのか。それは外来種を増やすことは生態系を壊すことになるからです。しかし、外来種だってこの本にあるように「好きで日本に来たわけじゃない」のです。放すぐらいならば処分するぐらいの覚悟をもって飼うべき、そして処分がいやならばちゃんともらい手をさがすべき、とみんなに教える、それがこのおさかなポストの意義なのでした。

 わたしも子どもが幼稚園でもらってきたどじょう(それはPTAの方がどじょうすくいのために築地で仕入れてきた食用のものでしたが)を飼っていましたが、しばらく留守をすることになってしかたなく神田川に流したことがありました。おそらく養殖ものだったのだから、食べるのが正解だったのでしょうが、それはできず、子どもの前で殺せず、そうしたということを思い出します。外来種でなくても、場所を移動させれば生態系に影響を与えるという点では同じですものね、反省です。