2016年2月3日水曜日

「ことづて屋 停電の夜に」濱野京子 ポプラ文庫ピュアフル

書名:ことづて屋 停電の夜に
著者名:濱野京子
出版社:ポプラ文庫ピュアフル
好きな場所:たとえ、おれたちが、元通りになれなくてもさ、今しばらく、由佳のそばにいてやろう、いや、いさせてくれって。せめて灯りのない夜には。あん時、おれがおまえに言いたかったこと。これから言うよ。
所在ページ:p230
ひとこと:『ことづて屋』の第二巻目です。
「お言伝を預かっています」と、見ず知らずの人を訪ねてゆく山門津多恵は、「彼氏いない歴は生年と同じ。明晰な頭脳も芸術的才能も、運動能力も持たない。美貌にも見放された、自他ともに認める不器用なとりえなし。極度の方向音痴でもある。就活に失敗し、短大を卒業してから今に至るまで、したないフリーター暮らし」という地味な女性です。
 ですが、相棒になった美容師の恵介にメイクを施されるとすごい美人になります。いいなあ、私もそんなメイクをしてもらってみたい。
 その津多恵が、今回も、死者からの伝言を持って、いろいろな人を訪ねてゆきます。
 五歳の子どもであることも、書店の店員さんであることも。伝言を託す死者の人生と死に方もさまざまです。
 引用は、副題にもある「停電の夜に」です。なぜおれは由佳のところに行けないで死んだのでしょうか。それには、あっとおどろくような理由がありました。

 なぜどうして、という謎解きと、恵介と津多恵のコンビがすてきです。
 Beという読書会の合宿で、昨年夏に生原稿を読ませていただいたのですが、こんなに早くご本になるとは、やっぱり『トーキョー・クロスロード』の濱野さんの筆のすばらしさと、おもしろさだなあと思いました。