2015年5月15日金曜日

「ひかりあつめて」杉本深由起

書名: ひかりあつめて
著者名: 杉本深由起
出版社: 小学館
好きな場所: 閉まった窓ガラスに/体当たりをくりかえしているが/精魂つき果てる前に
ほんの少しだけ/よそ見する余裕があれば――
大きく開いている片側の窓/空は そこまで来ているよ
所在ページ: p88
ひとこと:幼年もの『やまだまや』シリーズの物語もお書きになる杉本さんは、三越左千夫少年詩賞もとられた詩人でいらっしゃいます。

 やまだまやちゃんは、天真爛漫で思ったとおり言ったりしたりする女の子ですが、今回の連詩の主人公は、「両親の離婚で、とつぜんの転校をよぎなくされ、父親の不在、教師の無関心という全く頼るものがいない状況の中で、いじめを受けているクラスメートをたすけたばっかりに、今度は自分がいじめられることになった少女」(あとがきより)です。

 とっても悲しいそういう状況の子になりきる作者は大変だと思いますけれど、この物語連詩はそれだけにとどまりません。季節風の後藤さんは「子どもにあきらめることを教えるな」とおっしゃったのだとか、そのとおり、この状況の中で、この主人公の女の子は、小さなひかりをあつめて、自分の支えにしてゆきます。引用の詩は「アシナガバチ」というものですが、アシナガバチが体当たりする窓を見つめながら、そうだ、私にも窓が開いているかも、とふと思う少女の気持ちを表しています。それは、少女にかける作者の気持ちでもあるのです。

 どうかこの詩が、本当に困っている少年少女に届き、心のとびらを開けますようにと願っております。