2015年3月7日土曜日

「きずなを結ぶ震災学習列車」堀米薫

書名: きずなを結ぶ震災学習列車
著者名: 堀米薫
出版社: 佼成出版社
好きな場所: 現在運行している北リアス線の久慈駅から田野畑駅のあいだで、震災学習列車を走らせてはどうでしょうか。列車の中では、防災教育に役立ててもらえるように、社員がガイドをします。全国から被災地に来ていただいて、実際のようすを見てもらうんです。
所在ページ: p75
ひとこと:岩手県の海沿いを走る三陸鉄道は、東日本大震災により、壊滅的な被害をうけました。しかし、これを復旧させるべきかどうか、あやぶまれていました。もともと赤字の路線です。しかし被災地の復興のシンボルとなること、防潮堤としても役に立つことなどから、国の費用負担が決まり、復旧することになります。
 そこへ、引用のようなアイデアが生まれます。被災を見世物にするのか、という考えもあるなか、費用負担の恩返しとしても、また今後の防災のためにも、震災学習列車を走らせることになりました。

 被災地を見るというのは、葛藤です。なにもできずにいるのに、不幸をながめていいのかという気がします。
 私も以前関西に住んでいて、阪神淡路大震災のときはもう引っ越したあとでしたが、テレビだけではなにかどうしても気が済まない気がして、元住んでいたところを一年後だったか二年後だったか、見に行きました。あの家もこの家も更地になってしまって、とショックでしたが、こういうことになっているのかと納得するような気もしたのです。ふしぎなことだと思います。
 東日本のときも、親切な友人がわざわざ車であちこちに連れて行ってくれました。この作者の堀米さんにも連れていっていただきました。そのあと、ずいぶんたってから、被災地をめぐるタクシーの旅にもさそっていただきました。
 人というのは、こうやって本能のようにいろいろなことを知らせたがり、知りたがるものなんだと思います。
 鉄道はそのためのとても有効な手段だし、この本にも研修旅行に行った学生さんの書いたものの写真がありますが、この方たちが大きくなったときに、何かの役に立つにちがいありません。

 堀米さんは、農業を中心にたくさんの著作のある方ですが、震災を伝えることにも精力的でいらっしゃって、『思い出をレスキューせよ!』『命のバトン』に続き、今回もすばらしいご本を出されました。頭が下がります。