2014年3月11日火曜日

せんそうってなんだったの?12 父ののこした絵日記

書名: せんそうってなんだったの? 12 戦争の中で見た人間の姿 父ののこした絵日記
著者名: ささきあり
出版社:学研教育出版
好きな場所:よく無事だったな。今や、てきはアメリカぐんだけではない。食りょうがなくなった日本ぐんのへいしたちが、食りょうをうばうために、味方をころしているのだ。
所在ページ:p19
ひとこと:「語りつぎお話絵本」シリーズ、「せんそうってなんだったの?」の第二期、12巻組です。その12巻、「父ののこした絵日記」を、ささきありさんが書かれています。

 小松輝行さんのお父さん、真一さんは、戦時中、さとうきびから燃料を作るためにフィリピンのネグロス島の工場に行きます。そこでアメリカ軍の侵攻を受け、ジャングルの中をさまよったのち、終戦となって投降し、アメリカ軍の捕虜になります。収容所で暮らした1年半、得意な絵で戦時中のようすや、収容所のようすをタイプ用紙に書きつづり、釈放後日本に持ち帰ります。そしてそれを銀行の貸金庫に預けていたのです。お父さんの死後、それをみつけた輝行さんは、本にして周囲に配ります。本は評判をよび、書店にならぶようになりました……

 絵のあちこちに挿入されている原画、真一さんが書かれた絵が圧巻です。どうして銀行の貸金庫に預けようと思われたのか、なくしたくなかったのか、死後子どもたちに見てもらいたかったのか、それとも見るたびに思い出すのはつらかったのか、どうなのでしょうか。
 それにしても、何かを書くということは、癒しになるというのは私たちも仲間でよくいいあうことです。収容所でいつ帰れるかわからず不安な日々、トラウマになるだろう戦争中のジャングルの過酷な毎日を思い出して、書きつづるということが、ご本人の助けになったことはまちがいありません。そして記憶の新しいうちに書かれた絵の正確さすばらしさ。
 こういうものは失われてほしくないなあと思います。その意味でも、このシリーズは大事な役割を果たすことでしょう。

 著者のささきありさんは、『おんなのこのめいさくえほん』『おとこのこのめいさくえほん』『はじめてのめいさくえほん』(西東社)、語りつぎおはなし絵本『せんそうってなんだったの? ほんとうにあった4つのおはなし』共著(学研教育出版)などのご著作のあるほか、毎日小学生新聞に「きょうのなぜ!」や「仕事発見」などの連載をされています。