2014年2月14日金曜日

「さよなら、ぼくのひみつ」漆原智良編著

書名:さよなら、ぼくのひみつ
著者名: 漆原智良編著
出版社: 国土社
好きな場所: こんな内容、だれだってわかっている。ぼく、本棚から落ちればあぶないってことぐらい、骨折する前からわかっていた。問題は、気をつければ落ちるはずないって思ったことと、おりようとしたとき、あぶないことを忘れて、気をつけていなかったってことだよな
所在ページ: p108
ひとこと:「心といのちを守る5つの童話」シリーズの第二巻です。このシリーズは、現在の学校でありそうな問題をとりあげ、子どもたちを主人公にその解決をさぐってゆくという大変に実践的なものです。それぞれの物語ごとに、その問題の解決に向かうためのヒントと解説がついています。

 
 第一巻『ぼくたちの勇気』では、いのち、体格差、いじめ、花粉症、不審者がとりあげられていました。

 今回のこの第二巻『さよなら、ぼくのひみつ』では、交通安全、虐待、アトピー、学習しょうがい、校内安全がとりあげられています。

 引用はあだちわかなさんの「作ろう! 安全マップ」です。主人公のユウトは、図書室のそうじ当番で本棚を拭こうとして、その行きがかり上、棚の一番上にのぼりました。ですが、降りるときに失敗して落ち、骨折をしてしまいます。みんなに迷惑をかけたと反省し、そして体育を見学しながら反省文を書いて、思うのです。わかっていたのに、なぜこんなことになったのか。そしてユウトはあることを思いつきます。あとは、お読みください。

 あだちわかなさんは、学校図書室にお勤めです。日々、やんちゃな小学生を相手に、本を大好きになってもらおうと奮闘中です。ですが元々は看護師さんです。諸事情から天職とも思えたようなそのお仕事から遠ざかっておられますが、いつもきっとあぶない、あぶない、ああしたらこうなってしまうのに、と病院の救急外来を思い出しながら、はらはらして図書室の子どもたちを見守っておられるのでしょう。そんなあだちさんの安全への願いのこもったお作品、あだちさんでなければ書けないお話だと思います。ご上梓おめでとうございました。

 ほかのお話もそれぞれ、その方でなければ書けないものばかりです。

 長年先生として子どもの学習に取り組んでこられた漆原智良先生は、この本の編者として学校のニーズを掬い取られ、ご自身も学習しょうがいにかんする物語『幸福をよぶ鳥の絵』をお書きです。実際にしょうがいを持つお子さんを取材してまとめられたとのこと。
 

 高森優芽さんも同じく学校や子どもたちの事情をよくご存じで、自転車の安全について『やくそくの自転車』を書かれています。きっとけがしないでね、といつも祈るようなお気持ちなのだと思います。子どもの自転車、ほんとあぶないですものね。はらはらします。でも場所によっては移動手段として大事なので、乗るなとは言えませんもの、安全に乗ってほしいです。

 
 
 
 秋田で現役の小児科医をされていて、またご自身もアレルギーをお持ちの井嶋敦子さんは、アトピーっ子の気持ちを『いちご肌のふたり』でお書きにになりました。「アトピーはね、イチゴなの。オレンジじゃないの」の言葉は、きっとアトピーの子どもさんにお医者さんとしてかけられているものなのではないでしょうか。いちご肌だと思えば、気持ち悪くもないし、自分でもやさしく扱おうという気持ちになりますものね。いちご肌、はやってほしい言葉です。
 井嶋さんにはやはりアレルギーをわかりやすく子どもたちや保育関係者に説明する『たべられないよ、アレルギー』(童心社)という紙芝居もあります。

 平松詩子さんは、DV被害者の事情に詳しく、佐賀県のDV総合対策センターから発行されている絵本『たまごになっちゃった?!』の著者でもあります。その平松さんはこの本では表題作『さよなら、ぼくのひみつ』を書かれています。家のことを子どもが全部ひきうけることはない、だれかに打ち明けて話すことで解決へ向かう、周りの人も困っていることはないかと聞いてあげて、と訴えています。

 そんなみなさんの願いのこもった一冊、たくさんの子どもさんがたが読んでくださいますように。