2013年12月3日火曜日

「ぼくたちの勇気」漆原智良編著

書名:ぼくたちの勇気
著者名: 漆原智良編著
出版社: 国土社
好きな場所: 「いま、学校や、子どもたちが悩んでいること」を、各地の先生方にたずねてみました。すると、たくさんの悩みや、不安、具体的には、いじめ、虐待、登下校の危険……などさまざまな問題がよせられました。
所在ページ:p122
ひとこと:引用のように、いま学校で現実に子どもたちが直面している問題に、ストレートに取り組んだ作品集です。そして、作品ごとに末尾に数項目の解説がついています。

たとえば「あいさつおじさん」高森優芽・作では、「★知らない人には、近づきすぎないようにしましょう」などです。子どもたちはどの人も差別をしないようにと教えられ、知らない人でもちゃんとあいさつをしましょうと教えられ、なのに知らない人には用心しましょうと言われています。いったいどうしていいか混乱することでしょう。この「あいさつおじさん」の作品は、非常に具体的に、いつも声をかけてくるうっとうしいおじさんと、公園のトイレにいる知らない男を対比させて、実際の事件はどのように起きるかをイメージさせ、そのときどうしたらいいか、なぜちゃんとふだんからあいさつをすることが大事なのか納得させてくれます。

他のお作品もみな、具体的で臨場感にあふれています。

「はじめての握手」井嶋敦子・作
 井嶋さんは現役の小児科のお医者さん。日常的に未熟児や救急車と接して暮らしてこられました。その井嶋さんが描く、友だちをけがさせてしまった子、病気をもつ未熟児の生まれた家庭、そして「いのち」。これはフィクションでありながら、事実の持つ重みとしか言いようがありません。

「ウドちゃんとチョロくん」季巳明代・作
 ウドちゃんは女の子で大きく、チョロちゃんは男の子でちいさい。双方ともにいろいろ学級で言われます。でも気にしないで前向きなウドちゃんは、季巳さんの新刊『ひげなしねこ』(フレーベル館)を思わせるさわやかさで、さすがです。

「ぼくたちの勇気」漆原智良・作
 表題作は、編者でもある漆原先生。本当にあったできごとだそうで、ずっと長いこと実際に教鞭をとっておられた先生であればこそ、きっちりと書ける目をつぶってはならないことがらの数々です。

「みんなそろってキックオフ」かとうけいこ・作
 かとうけいこさんも、長いこと先生をされておられた方。大人でもつらい花粉症の日々を、主人公の身になって綴っておられます。出てくる先生もかとうさんそのもののようにさっぱりと魅力的。

 たくさんのかたが読んでくださいますよう。
 みなさまご上梓おめでとうございました!!