2012年7月19日木曜日

ホッキョクグマの赤ちゃんを育てる! 円山動物園のねがい

書名:ホッキョクグマの赤ちゃんを育てる! 円山動物園のねがい
著者名:高橋うらら
出版社:ポプラ社
好きな場所:海を泳ぐとき、とちゅうで休む氷がなく、「東京と大阪より長い六八七キロメートルもの距離を、十日間かけて泳いだ」というホッキョクグマの追跡調査の結果もでています。
ホッキョクグマは何十キロも泳げるのだから、だいじょうぶだと思うかもしれませんが、ホッキョクグマはロボットではありません。エサがなく、おなかがペコペコで弱っており、しかも、休める氷まで長い距離を泳がなければならなくなったら、やがて、つかれきってしまいます。北極海の近辺では、こうしておぼれ死んだホッキョクグマの死体がいくつも発見されています。
所在ページ: p106
ひとこと:ノンフィクションに定評のある児童文学作家、高橋うららさんの新刊です。

高橋うららさんは、今までもご著作『犬たちがくれた音』では盲導犬ならぬ聴導犬を、また『ありがとうチョビ』では捨て犬とペット売買の問題を、『野鳥もネコもすくいたい!』では捨て猫と小笠原の自然保護の問題を扱っておられますが、いずれも、犬や猫、海鳥といった個別の動物の物語に加えて、必ずその問題の社会的背景をわかりやすく描いておられるのが特徴ではないかと、私は思っています。
今回も、この本の主な話題は、札幌の円山動物園で行われてきたホッキョクグマ(いわゆるシロクマ)の繁殖の取り組みと、その軸となった母グマ、ララの話ですが、高橋うららさんのノンフィクションは決してそれだけに終わりません。
引用も、なぜ地球温暖化がホッキョクグマの種の保存にとって致命的なのか、それを説明されている部分です。ここを書かれるために、高橋うららさんは、北極圏まで取材に行かれたぐらいですから、事例も詳しく、非常に説得力があります。
こういうことをふまえると、動物園で動物に赤ん坊を生ませて育てることが、どのように大事か、また環境を保護するためには人の努力がどれぐらい大事かが、よくわかってきます。たかが動物のあかんぼう一匹のために人間が一喜一憂しなくても……と知らなければ言えるかもしれませんが、やはりこれは社会として大事なこと、動物園はそのような大切な役割をになっているということ、そういうことが子どもにも理解できる所以だろうと思います。
とはいえ、赤ちゃんは無条件にかわいい。動物の赤ちゃんも同じです。やっぱり見にいっておもしろいし。

ところで、こんな高橋うららさんですから、自然保護の講演会などにも講師としてお呼びがかかっているとか。当然だよなーと思います。

高橋うららさんのホームページはこちらです。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/urapyon/

追加:高橋うららさんの講演会情報

2012年10月20日(土)静岡県職員会館「もくせい会館」富士ホール
くわしくは
http://www.shizujyu.com/p_55.html#24kousyuueiseikennminnkoukaikouza