2011年8月28日日曜日

「幽霊屋敷」の文化史

書名: 幽霊屋敷の文化史
著者名: 加藤耕一
出版社: 講談社 講談社現代新書
好きな場所:ホーンテッド・マンション最大のハイライトである豪華な大ホールでは、無数の幽霊たちがあちらこちらでユーモラスな姿を見せている。これらの幽霊こそ、ペッパーズ・ゴーストの原理によって、出現したものであった。しかもホーンテッド・マンションにおいては、ペッパーズ・ゴーストの最大の難点ともいうべき、反射の角度の問題がきわめてエレガントに解決されていたのである。
所在ページ: p210
ひとこと:2009年の刊ですが、児童文学者加藤純子先生のブログで知って、読んでみようと求めた本です。
(加藤先生のブログはこちら http://blog.goo.ne.jp/junko_blog/e/ecc3fae6c7af3756f55415e3f6cd1c13

東大の准教授の方が書かれた本なので、しかも建築は難しいから読んでもわかるかなと思っていたのですが、さにあらず。ずっと前に「ティズニーランドの経済学」という本があり、とてもおもしろかったのですが、これは「ホーンテッドマンションの建築文化史」みたいです。ディズニーランドのホーンテッドマンションの構造、幽霊のトリック、外観、それから幽霊そのものの文化的背景を、起源にさかのぼって学術的に説かれている。引用は、あの幽霊のトリックが1862年に行われた興業に起源をもつという話の一部です。

ディズニーのホーンテッドマンションはキャラクターなどはいないので、子どもたちはまあ怖いお化け屋敷というぐらいの感じでいましたが、私は実は好きで、外に並んでいる間も書かれている墓標など読むと物語がちゃんとできていて、あきません。フロリダのにも行きましたが、東京のより大きくて怖いと思った記憶があります。内部の幽霊やしかけにもそれぞれ何か所以があるにちがいないと思っていましたが、この本を読んで、フロリダとの違いをはじめとして、なるほどと思ったことがたくさんあり、図表も豊富で、建築素人にもとてもおもしろかったです。

ディズニーとは関係ありませんが、私はジェイン・オースティンが好きなので『ノーサンガー・アベイ』も読みましたが(もちろん翻訳で)、あの中で主人公が夢中になっている小説は、ああそんな小説が当時流行ってたんだな
オースティンはそれをからかっているのだな、ぐらいに思っていましたが、ゴシックというのは当時イギリスでそういう位置だったのかとはじめてわかりました。

とても密度のある連続講義を聞かせていただいたような本でした。