2011年8月15日月曜日

虹の糸でんわ

書名:虹の糸でんわ
著者名:日本児童ペンクラブ編
出版社:銀の鈴社
好きな場所:いま、わたしは、孫が幸せになりますようにと祈りながら、元気がないようだけど元気出せよと願いながら、孫の名前をほりました。これは消しゴムですが、まあ、こんなふうに、パソコンで活字を打ち出すようになる前は、人が鉛の面を彫刻刀でけずって活字を作ったわけです。
所在ページ:115
ひとこと:日本児童ペンクラブは、大宅壮一、川端康成を顧問として発足し、今年で創立四十周年を迎える会だそうです。その会員の童話、詩、エッセイを集めたのがこの『虹の糸でんわ』という本です。

引用は、あだちわかなさんの『じいちゃんの消しゴム活字』という短編です。四年生結衣のじいちゃんは、印刷屋さん。おとうさんたちに経営を譲って、活版印刷の注文があるときだけ店に出てきます。活版印刷の職人さんです。じいちゃんは、活版印刷の体験学習にきた大学生に、そのうしろで結衣が聞いていること、結衣が元気がないことを十分に意識して、活版印刷とは何かについて、こんな説明を大学生にするのです。
 児童劇の脚本を書き、演出もし、また自らも出演するするあだちさんだけに、非常に演劇的な設定、また演劇的な魅力のあるセリフだと思います。いつも思うのだけど、セリフはセンスですねー。ピンと空気が締まるかどうか、それは演劇好きでないとどうしてもわからないのかもしれません。

 あだちわかなさんは、前回の日本児童文芸家協会のつばさ賞のノンフィクション部門で、『印刷屋の少女コト』を書いて佳作をとられた方です。印刷屋の家に生まれ、家業を手伝い、家事をしながら育つ少女コトが魅力的に描かれているお作品です。
 今回のこの短編はノンフィクションではなく、物語ですが、やはり印刷屋の家の子が主人公です。
 どちらも古くなってすたれてしまいそうな技術「活版印刷」と、それをになってきた人々を描いています。
 あだちさんの活版に対する傾倒が、半端じゃないことがわかると思います。でも、やっぱりきっちりと描かれているのは、結衣であり、コトであり、じいちゃん。そこがすばらしいなと思います。
 これからも、きっときっと、古いけれど洗練されていた活版文化に関する物語を生み出してくださることでしょう。楽しみです。

 あとせんだって「たまごになっちゃった?!」を出版された平松詩子さんも「あかいはな」を、また佐賀のたかもりゆめさんも「いじわるタケルくん」を書いておられます。