2011年4月24日日曜日

「チョコレートと青い空」堀米薫

書名:「チョコレートと青い空」
著者名:堀米薫
出版社:そうえん社
好きな場所:家族は優秀なエリックさんをほこりに、土にしがみついてはたらきつづけた。その姿をみて、自分は農業の指導者として家族や国のためにはたらこうと決めたそうだ。
所在ページ:141
ひとこと:作者の堀米薫さんは、宮城県角田市の現役専業農家のおかみさんで、牛の世話に、ビニールハウスに、たんぼに、直売所にと、毎日獅子奮迅で働き、といってもなーんと農学の修士号をもっておられるとっても知的できれいな方で、日本の農業の現状について発信するという強い意志をもって、いつも子どもにわかりやすい「農」を描いておられます。
 最初のご本は日本児童文芸家協会の創作コンクール(今は「つばさ賞」という名前ですが)で優秀賞をとられた「牛太郎、ぼくもやったるぜ!」(佼成出版社)で、あちこちで課題図書にもなっておられます。
 この牛太郎は、肉牛肥育をしておられる堀米家と同じく、牛農家に育った子どもが、生まれてきた牛に教えられて成長し、友だちとのトラブルにも立ち向かうようになるお話でしたが、今度のこの「チョコレートと青い空」も、やっぱり牛農家の男の子が主人公です。
 ですが、キーとなるのは今度は牛ではなく、ガーナからやってきた農業研修生のエリックさん。エリックさんは引用のような志をもって、ぼくの家に来たのです。そしてぼくはチョコレートというもののひみつ(?)を知るのでした。
 エリックさんが運んできた広い世界の空気、ぼくのうちにおきたちょっとした変化、ぼくとぼくがこっそり「かげネコ」と呼んでいるおにいちゃんとの確執が深みを添えます。
  ほんと、堀米さんのご本には、事実の重みがあります。これを読んだ子どもさんがたは、知識としてではなく、ハートで、たくさんのことを知ることになるでしょう。多くの人に読んでいただきたいご本です。
 堀米さんには、雑誌ちゃぐりんに連載された「もーもー村のおくりもの」や、乳牛のお話、林業のお話などなど、まだまだ、たくさんのお話があって、きっと次々と出版されることでしょうが、それも、もうから、楽しみです。