2023年7月24日月曜日

新刊見本来ました。『かわらばん屋の娘』(くもん出版)です。

 新刊見本来ました。『かわらばん屋の娘』(くもん出版)です。



 両国広場でかわらばんを売る娘「吟」。実は足のある人魚を、つくってもらわなくてはならなくて、そのうえ小さい弟は言うことを聞かずいたずらばっかりして、そしてだれかに追いかけられて逃げた先である人物に会い……という幕末のお話です。
 伊野孝行さんが、足のあるなまめかしい人魚をまあすばらしくすてきに描いてくださいました。  ブックデザインは『はなの街オペラ』のときと同じ坂川朱音さんです。同じしかけではぜったいこない方、今度も表紙をかわらばんにしてしまうというものすごいアイデアを出してくださいました。かわらばんに添えた記事はちゃんと読めます。吟のことも記事になっています。

 
 江戸時代というのは、のどかな面もありますが、実はとても不自由な時代でした。どこで何が起きたかもわからずに、何か不満があっても言ってはいけない。おかみのやりかたにケチをつけてはならないからです。かわらばんも実は、禁止されていたのでしたが、ひとびとはそれを売り、そして買っていました。

 


 いま、世界中をさわがせている国々では、報道が制限されています。江戸時代と同じように、おかみのやりかたが気にくわない人たちがいることを書くことは許されていないところに住んでいる人たちがいるということです。

 一方、私たちは、あったことをそのまま知らせることにはまあまあ不自由はしていませんし、むしろその弊害というか、情報過多、フェイクニュースなどに接して、むしろ制限すべきという論に傾きがちです。報道の自由などは、報道機関が営利のためにわがままを言っているのだととらえているむきも、ひょっとしてあるかもしれません。

 しかし、世界の不幸な国々を見るにつけ、報道の自由という原則は、私たちがまっとうな生活を送るためにとても大事で守るべきものだと改めて思いますし、それを獲得してきた先人たちの努力を忘れてはならない、この自由を手放してはならない、と思うのです。

 どうかこの本が子どもたちに届きますように。お力添えお願いします。