2025年5月15日木曜日

『アリゲーターガーは、月を見る』山本悦子(理論社)

書名:アリゲーターガーは、月を見る
著者名:山本悦子
出版社:理論社


好きな場所:「おばあさまのお葬式には、そんなにたくさん人が来てくれそうなんですか?」
「わからないけど……元教師だし、教え子とか」
所在ページ:p68
ひとこと:名古屋城のお堀に住むアリゲーターガー。ワニのような長い鼻先に鋭い歯だが、正真正銘の魚だ。外来種で、二匹いたという。しかし、一匹が罠にかかり、残りは一匹だ。これを外来魚バスターという駆除隊が狙っている。
 そんなアリゲーターガーのところに夜、集まった三人。二人は同級生ではあるものの、一人は不登校で、もう一人は心に傷がある。もう一人は大学に入りそこなった天涯孤独のアルバイター。それぞれが一匹になった孤独なアリゲーターガーに感情移入している。もう一人、引用のようなことを言う、葬儀屋に勤めるおじさん。この人しっかりしてるような、していないような、頼りになるような、ならないような。いったいこの三人とおじさんとアリゲーターガーはどうなる?

 山本悦子さんの新刊です。
 三人のそれぞれのこれからが、とっても気になりながら、読み進めました。
 山本さんのお作品だから、当然、学校、先生、親、は根底にしっかりふまえられているのですが、場所はお堀端というのがとっても興味ぶかかったです。元教師だったおばあちゃんの人生も、他人ながら介入してくるおじさんの人生も、世間的に見れば決してハッピーな路線ではないけれど、味わい深く、そうか、こういうこともあるよなと心を惹かれます。