2016年11月26日土曜日

「夜やってくる動物のお医者さん」高橋うらら

書名:夜やってくる動物のお医者さん
著者名:高橋うらら
出版社:フレーベル館
好きな場所:ウェンディももう十四才よ。たとえ手術しても、はたしてよくなるかどうかわからないわ。かえって具合が悪くなってしまうかも
所在ページ:p80
ひとこと:動物をテーマにしたフィクション、ノンフィクションをたくさん書いておられる高橋うららさんのノンフィクション新作です。
 海原英輝さんは獣医さんですが、ふつうの動物病院の獣医さんではなく、夜間診療専門、それも往診専門の獣医さんです。動物には救急車はありませんし、自宅に車がない場合などタクシーで移動するにしても乗せられないこともあり、また弱っている動物には移動の負担がかかります。一方、夜間の容態の急変ということは動物にはよくあることで、夜間の往診というのは、必要な場合が多いのです。
 この本では梅原さんが獣医さんになったわけや、夜間往診を始めたわけ、その日常の仕事のようすを追っています。
   しかし何より驚くのは、中に「動物のみとり」という大きなテーマが入っていることです。
 引用のウェンディは動物病院から手術を提案されますが、飼い主はそれを断り、梅原さんに夜間往診を頼みます。ウェンディは残された日々を飼い主の世話と梅原さんの助けによって過ごすのですが……。

 人間より寿命の短いものを飼う以上、別れというものは必ず経験するものですが、飼い主によるその方法の選択は、人間と違って法律などの縛りのないだけに、飼い主の人生観に大きくかかわってくるものではと思います。ぜひ、動物を飼っている子どもたちだけでなく、飼っていない子どもたちにも読んでいただきたいなと思います。