2016年3月19日土曜日

「弓を引く少年」大塚菜生

書名:弓を引く少年
著者名:大塚菜生
出版社:国土社
好きな場所:おれはな、もし逆の立場だったら、どうしていたかなあとよく思う。弟のために自分の将来を考えるなんて、しなかっただろうな。おまえもだんだんわかってくると思うが、うまくいっている者のかげで、貧乏くじを引いている者もいる。
所在ページ:p122
ひとこと:せんだって『東京駅をつくった男―近代建築を切り開いた辰野金吾』というノンフィクションを出されたばかりの大塚菜生さんの今度はYA向けのフィクションです。

題材は馬と弓。そうです、流鏑馬です。でも昔のお話ではなくて、現代のお話です。

弦は二年前に母を亡くしてから、馬に乗ることをやめていました。でもおじさんがやってきて、乗れといいます。おじさんのことは小さい時は尊敬し、慕っていたのですが、最近はどうもすなおにはいと従う気にはなれません。というのも、おじさんは……。

どの家にも何等かの形で、一代、二代と続く家族の確執はありますが、YAを読む世代の人たちにとっては、きっと自分の家だけ変、というように感じられるかもしれないなと思います。引用は弦のおとうさんの言葉です。おじさんとおとうさんの関係を理解して、弦は、一歩を踏みだすようになるのです。若い時はほんとうに自分もそうですが生きにくかったです。でもそれぞれの大人に事情があると思えるようになったときは、本人もかなり生きやすくなっているのではないかなあと思います。