2016年3月4日金曜日

『坊っちゃん』夏目漱石 集英社みらい文庫

以前お仕事をさせていただきました集英社みらい文庫の『坊っちゃん』が増刷したので見本をいただきました。4刷です。漱石没後100年だそうで、今こそ坊っちゃんを読もう! と帯が新しくなっています。

私は構成というお仕事をさせていただきましたが、どういうことをしたの?と言われます。
今、自分で書いたあとがきを読み直して、ああ、これが一番説明にいいかなと思います。こんなぐあいでした。

「わたしたちが坊っちゃんに会うには、二つの方法があります。ひとつは、坊っちゃんに来てもらうことです。今回、わたしはそのおてつだいをしました。といってもわたしは、文章を書くひとですから、じっさいにやったのは、やっぱり文章を書くことでした。けれども、それはたとえていえば、古くなってすすけてしまった絵に、うすいせんざいをぬり、なるべく傷をつけないように、そっとそっとやわらかい筆でこすって、ゆっくりと水をかけて洗うような感じの作業でした。そしてできたのがこの本です。」

「その結果どうだったでしょう、みなさんに、はっきり見えたでしょうか? 坊っちゃんの顔のりんかくが、いきづかいが、着物の生地のざらざらが、手のひらの汗が、怒りで赤くなったほっぺたが。(中略)見えたとしたら、とってもうれしいと思います。」

最初のお仕事でしたので、原稿を読んでくださった編集者さんが「坊ちゃんといっしょに泣き笑いできました」とメールをくださったのが、とってもうれしくてこのあとがきを書いたんだと思います。

ぜひ百年の節目に、坊っちゃんを読んでいただければうれしいです。