2015年8月10日月曜日

「空にさく戦争の花火」高橋秀雄

書名:空にさく戦争の花火
著者名:高橋秀雄
出版社:今人舎
好きな場所:「弾がなあ、横に長く見えたら助かる。丸く見えたら、念仏唱えるしかねえなんて、オレらいってたんだよな」
所在ページ:p15
ひとこと:今人舎の「戦争を語り継ぐための絵本」シリーズの第三弾です。
 文は「父ちゃん」シリーズで、戦後間もない時代に、戦争の影響をひきずりながら、貧乏を生きてゆく家族をみごとに描かれた、リアリズムの雄、高橋秀雄さん。
 絵は私どもが子どものころ男子に大人気だった「丸出だめ夫」シリーズの漫画家、森田拳次さんです。
 この絵本は、今人舎の「8・15朗読収録プロジェクト」のパネル展示会場で、「教科書的に教えるのではなく、おと・においやひかりのように五感で戦争の悲惨さを実感し、二度と戦争を起こしてはならないと子どもが自分の力で思えるような、そんな作品」を作ろうという高橋秀雄さんの言葉で始まったものだそうです。

 この絵本の主人公、シンゴはひいじいちゃん春造さんの葬式で、ふてくされた顔が春造さんに似ていると親族に言われます。そうかなと思いますが、是認できることもあります。春造さんは、シンゴ同様、こわがりで、花火がきらいだったのでした。
 でも、嫌いだったわけはこわがりだったからではないということが、弔問に来た春造さんの戦友、コウシロウさんの話でわかります。コウシロウさんも花火が嫌いなのです。
 なぜ嫌いなのかといえば、戦争に行って、戦うどころか艦砲射撃から逃げ回るだけだった時のことを思いだすからなのでした。

 引用は、コウシロウさんの言葉です。
 こういう言葉は、体験者でなければわからない。何よりリアルに状況を伝えているし、印象深くて忘れられない。
 帯には「戦争を知らない児童文学作家と戦争をよく知る漫画家とが戦争を語り継ぐために合作しました」とありますが、戦争を体験した人から聞いた言葉を知る人すら、だんだん少なくなってゆく昨今、こういう言葉を語り継ぐのは、大事なことだと思います。