2015年7月13日月曜日

「ちょっと不思議な絵本の時間おとなが読みあい語りあう」

書名: ちょっと不思議な絵本の時間おとなが読みあい語りあう
著者名:NPO法人 Re~らぶ
出版社:かもがわ出版
好きな場所:小学校のころ、キン肉マン消しゴムを、メンコで勝負してビニール袋にいっぱい貯めていたのを、引っ越しのときに親が勝手に処分した。心に穴があいた感じだった。
父 転勤で札幌にもどるときに、じゃまだと思って捨ててしまった。覚えている。すまなかった。
所在ページ:p21
ひとこと:
本書は、「Re~らぶ」という札幌のNPO法人が、毎週水曜日におこなった絵本の読みあいの10年間の記録です。

この法人は、高次脳機能障害をもつ成人が集まって、石けんやおせんべいを作って販売する作業所です。作業の他に、ピアサポートといって、一方的にだれかに助けてもらったり教えてもらったりする形ではなく、当事者が互いに語ることで、仲間を作れるようにしたり、社会性の養成や自己形成をうながすことをしています。絵本の読みあいもその一環です。

この本は、そのときどきのメンバーの発言を、記録したものです。最初はぎこちなかったメンバーが、絵本を介して毎週話し合ううちに、自分の幼い頃のことや、考え、感じ方をしゃべることができるようになる様子がよくわかります。引用のように、昔のことを思いだしての息子の発言に、そこに居合わせた父が呼応してあやまるなどということも。この時の本は、後藤竜二さんの『おかあさん、げんきですか』(ポプラ社)で、ちょうど後藤さんが同席しておられたということで、そのときのことをこの引用の他に後藤さんが作家さんの表現力で鮮明に書いておられた文章も、当時の雑誌からこの本に転載されていますが、それも短いけれどよみごたえがあります。

淡々としているようなライブ記録に、後藤竜二さんや、土山優さん、かさいまりさん、小林豊さんのようにこの読みあいに参加された方のコラムを織り交ぜながら、また巻末には村中李衣さんなど作家さんや学者さんの文章も付されて、この読みあいのようすが、ドキュメンタリー番組のようにわかる構成になっています。

私ども同人誌でも、互いの子ども時代のことを読むと、ああ、私もああいうことあったわ、といろいろ思いだして話がはずむものですが、それと同じなのですね。相手の子ども時代のことを聞くと、その人のことがよくわかるような気がするものです。大人にも絵本の読みあいっていいかもと思えてきます。

出版社さんのサイトはこちらです。

http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ta/0775.html